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63話 魔女の弟子

 キラさんに・・・いきなりキスをされてしまいました!



 ボクは慌てて唇を離します。



「いきなり何をするのですか?」


 突然の出来事に心臓がばくばく言っています!


「・・・おかしいな?・・・間違いなく魔女だと思ったのですが・・・違ったみたいです」


 キラさんは首を傾げています。


「わたしは魔女の魔力を感じ取る事が出来るのです。さっき、ルルさんが『木馬』を倒した時に、魔女特有の魔力の気配を感じた気がしたのですが・・・勘違いだったようです」




「・・・ボクは・・・魔女ではありません」




 そう・・・まだ、魔女ではないのです。


 でも・・・さっき、『念』と一緒に放出されたのは・・・やはりボクの中に眠る魔女の魔力だったみたいです。




「申し訳ありません。女性に対して大変失礼な事をしてしまいました。この非礼はどんな事をしてでも償います」


 キラさんは本当に申し訳なさそうに頭を下げた。


「いえ、そこまでお気になさらずに」



 実は、ボクもほんの少しだけときめいてしまったのです。


 ・・・ごめんなさい、ソラ君・・・



「あの・・・でも、どうしてこんな事を?」


「どうしてもルルさんが魔女か確かめたかったのです。魔女は普段はその魔力が隠蔽されているのですが、わたしは唇をふれあう事によってそれを感じ取る事が出来るのです」


 そんな特殊な能力が存在するのでしょうか?


「なぜ、そこまでしてボクが魔女かどうか確かめたかったのですか?」


「師匠が、わたしの前からいなくなる時に予言したのです。いずれわたしの前に師匠とは別の魔女が現れると・・・そして、もし会えたのなら、その魔女に生涯を掛けて尽くしなさいと・・・そう言ったのです」


「生涯を掛けて・・・ですか?」


「はい、わたしが師匠から受けた恩を返すにはそれくらいの事をしないとつり合いませんから」


 ・・・それほどの恩って、いったい?




「・・・あの、キラさんと師匠さんの関係って?」


「わたしは幼い時、住んでいた町が魔物の大群に襲われて死にかけたのです。町は全滅し両親とはその時に死に別れました」


 子供の頃に、そんな過酷な経験をしていただなんて・・・


「わたしも瀕死の重傷を負って、もう助からないと思っていました。しかし、そこに師匠が現れて、わたしを助けてくれたのです」


「それから、師匠は身寄りの居なくなったわたしを弟子にして、この家で育ててくれたのです」


「それは大変な恩ですね」


「はい、わたしにとってはすでに実の親以上の存在なのです」


 それほどの恩を受けた相手から言われた事であれば、それに従うのも頷けます。




「ところで、ルルさんたちは、この町の冒険者ではない様子ですが、旅をされているのですか?」


「はい、ボクたちは隣の王国の出身です。わけあって、ソラ君の故郷である遥か東の国に向かっている所です」


「それは・・・結構な長旅になるでしょうね。失礼ですが子供三人だけで旅をされているのですか?」



「はい、三人で旅をしています」


「そうですか・・・見たところ三人とも剣士の様ですが?」


「はい、ソラ君もレィナちゃんも剣士です」


「旅のパーティに魔法使いはいないのですか?」


「レィナちゃんが少しだけ下級魔法を使えますが、ボクとソラ君は魔法が全く使えません」




 ・・・キラさんは少し考えこんでいました。




「ルルさんが木馬を倒した時の技は、剣に魔法を乗せていたように見えたのですが?」


「・・・あれは魔法ではなく別の技です・・・すみません、詳しい事は話す事が出来ないのです」


「・・・確かに普通の魔法ではありませんでしたね。わたしが魔女の魔法だと勘違いしたのもそのせいですね」



 ・・・・・ごめんなさい。本当は魔女の魔法も一緒に使っていたみたいです。



「もし、よろしかったら、私をあなた方の旅に同行させて頂けないでしょうか?」


「キラさんが、ですか?」


「はい、剣士だけのパーティーでは何かと不便ではないかと思います。それに大人がいた方が都合がいい場合もあるのではないかと思いますが?」


 確かに、これまでも魔法使いがいなくて不便に感じた事はありました。


 今回の『木馬』との戦いも魔法使いがいれば、もっと効率よく対処できたと思います。


 それに町で何かトラブルに巻き込まれた時も、成人した大人の人がいた方が信用されやすいというのも事実です。


 でも、旅の仲間に入れるには、全員の意見を確認する必要があります。


「有難いお申し出ですが、ボク一人では決められません。ソラ君やレィナちゃんが目覚めたら相談させて下さい」


「ええ、わかりました。もしよろしければ結論が出るまでこの家に滞在しても構わないですよ」


「今夜は町に宿をとっていますので、二人が目覚めたら宿に帰ります」


「そうですか、では良い返事を待つ事にしましょう」




 そして夕方頃になって、二人が目を覚ましました。




「誰だ、そいつは」


「ルル、いつの間にこんなイケメンをナンパしたのよ!」



「レィナちゃん、ソラ君、この人がボクたちを助けてくれたんです」


「魔法使いのキラと申します」



「そうか!ありがとな、助かった。オレの名はソラだ」


「助け頂いてありがとうございました。あたしはレィナっていいます。あなたの様なイケメンに助けてもらえるなんて光栄です!」



「それで、早速二人に相談なんだけど、キラさんがボクたちの旅に同行してくれるそうなんだけど、いいでしょうか?」


「おう!いいんじゃねえか。魔法使いがいた方が便利だし」


「こんなイケメンと一緒に旅ができるなんて!いいに決まってるでしょ!」




 ・・・二人とも即決でした。


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