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59話 魔女の手掛かり

 リュアさんの家に泊めてもらった翌日、朝食を食べたあと、ソラ君とレィナちゃんは早速テオさんに手合わせを挑んでいました。


 昨晩聞いた話では、テオさんは、町の広場の銅像になっていた英雄の男性の子孫だそうです。


 銅像の人魚と英雄は力を合わせて町を守ったそうで、その二人の間に生まれた子がテオさんの先祖なのだそうです。


 という事はテオさんは人魚の血も引いているという事になります。




「人魚って本当にいたんですね?」


「ええ、そうよ。人魚は本当にいるわよ」


 ボクとリュアさんは、テオさんとソラ君たちの打ち合いを見学しながら話をしています。


「人魚ってお話の中だけの存在だと思っていました。世の中ってまだまだ不思議な事がたくさんあるんですね?」


「ふふふっ、『勇者』と『魔女』の間に生まれたあなたがそれを言うなんて、面白いわね?」


「えっ!リュアさん、知ってたんですか?」


 お母さんが『魔女』っていう事を知っているのはごく一部の人だけです。


「ええ、もちろん知ってるわ!それにあたしにはララ以外にも魔女の友達がいるのよ」


「えっ!お母さん以外にも魔女がいるんですか?」


「当然でしょ?魔女ってけっこうたくさんいるのよ」


「そうなんですね。お母さん以外の魔女って、会った事ないです」


「まあ、普通は人間から距離を置いてるからね。ララみたいに人間社会どっぷり溶け込んで生活している魔女の方が珍しいんじゃないかしら?」


「お母さんは人付き合いが大好きですから・・・」


 でも・・・お母さん以外の魔女にも会う事ができたら・・・ボクが魔女として覚醒するヒントが掴めるかもしれません。


「リュアさん、魔女に会わせてもらう事は出来ませんか?」


「えっ、魔女に会いたいの?ララにはいつでも会えるじゃない?」


「他の魔女にも会ってみたいんです」


「そうねえ?あたしのよく知ってる魔女は世界中を旅していて、たまにこの町に寄る事があるんだけど、いつ来るのかわからないのよねぇ・・・次に来るのは何年後になるか・・・」


 ・・・そんなには待てません。


「あっ、そうだ!この町の北にあるこの国の王都の近くの森に魔女が住んてるって、ずいぶん前に聞いた事があったわ。あたしは会った事は無いけど、もしかしたら会えるかもしれないわね」


 この国の王都は、丁度これから向かうところです。


「ありがとうございます!探してみます」


「でも、ずいぶん前の話だから、今も住んでるとは限らないし、魔女って普段、人間から隠れる様に暮らしてるから、見つけるのは難しいかもよ?」


「今は可能性があるだけでも十分です」


 もし会って話が出来て、その魔女の覚醒条件の事が聞けたら、何か一つ前進できそうな気がします。


「ありがとうございました。リュアさん」


「少しでもお役に立てたらよかったわ」




 そうしている間にも、ソラ君とレィナちゃんは、テオさんとの打ち合いを続けていました。


「強ええ、全然勝てねえ!」


「どうする?もう終わりにするかい?」


「いや、まだだ!もう一回行くぞ!」


「ちょっと!次はあたしの番よ!」




 ・・・二人でテオさんの取り合いをしていました。





 二人が満足いくまでテオさんに稽古をつけてもらった後、ボクたちは、リュアさんとテオさんにお礼を言って海辺の町を後にしました。



 ここからは川沿いの街道を内陸に向かって進んで行きます。


 ソラ君の国へ行くためにはこの国を抜けて東側に進まなければならないのですが、海沿いは断崖絶壁でこれ以上進む事が出来ないので、一旦北上して、内陸にある王都まで行き、そこから山道を進み、峠の国境を越えなければ東に行く事が出来ないのです。



 それに・・・王都付近には『魔女』が住んでいるかもしれないのです。

 


 何とかして魔女に会いたいのですが、どうすればいいのか今のところ方法が見つかりません。




 海辺の町から王都までは、馬でも数日かかる距離だそうです。


 川沿いの街道は、曲がりくねっていて、街道の両側は崖だったり、木の生い茂った森だったりするので、魔動馬で一気に走り抜ける事が出来ません。


 ボクたちは他の旅人と同じくらいのペースで王都へ移動しました。




 途中、いくつかの小さな宿場町で宿をとりました。


 部屋は空いている時は三人別々の部屋にしています。


 ボクが一人でも『念技』の練習が出来る様になったからです。


 ソラ君と一緒でもいいのですが、二人で訓練しているとついつい夜更かしをしてしまうのと、口には出しませんが、レィナちゃんが一人だけ別部屋なのがちょっと寂しいみたいだったので、ソラ君とも別の部屋にする事にしたのです。



 寝る前に『念技』の練習をするのはボクの日課になりました。



 まず、自分の体の中に、『念』を意識してそれを集めます。


 最初の頃はこの感覚が・・・あそこの部分でしか感じ取れなくて、まずそこに『念』を集めて、そこからお腹の方に移動させる事しかできませんでした。


 ベッドの上で正座して、意識を集中するためにあそこに手をかざして力んでいる姿は、人に見られたら絶対勘違いされてしまいそうです。


 一人で練習を始めた最初の頃は、『念』の扱いが不安定で、時々失敗して『念』を急に動かしてしまったり、抑え込みが足りなくて膨張させてしまったりを繰り返していました。


 その都度あそこに刺激が加わり、大変な事になってしまうのです。


 そうならない様に、細心の注意を払って『念』を慎重に操る訓練を毎晩続けたおかげで、ついに別の場所でも『念』が集中できる様になったのです。


 今では、下腹部の奥の方、腰骨のあたりなどで『念』が集められるようになりました。


 これでようやくあの部分に不用意な刺激を与えなくて済むようになりました。


 これ以上続けていたら、本来女の子には体験できなかったはずの感覚が、だんだん病みつきになってしまいそうで、ちょっと危なかったです。


 そうなってしまったら、女の子の体になりたいという気持ちが少し薄れてしまいそうな気がします。




 今日は、下腹部の奥に集めた念を、手や足に移動させる練習をしています。


 『念』を手足に集めて、それを筋肉の動きと連動して操る事で、身体能力を高めるのだそうです。


 つまり、『魔力』による身体強化と同じ事が、魔力を使わずに出来るのです。


 ソラ君は普段から無意識にそれを行なっているそうです。

 レィナちゃんに聞いたら『身体強化』も、やっている事は感覚的には一緒だそうです。

 意識する対象が『念』と『魔力』の違いだけみたいでした。


 『念』による身体強化は、全身の筋肉に均等に『念』を行き渡らせないと、自分で体を壊してしまうそうです。


 手足の一本ずつに『念」を送って、筋肉と一緒に動かしてみました。

 確かにちょっとでもタイミングがずれると、体に負担がかかるのがわかります。


 でも、繰り返しているとだんだん感覚がつかめてきました。




 この調子で行けば、近いうちに『念』を使った身体強化が習得できる気がしました。



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