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46話 湿地帯の渡り方

 一つ目の町から先の街道は、湿地帯を大きく迂回しています。


 もし湿地帯を通り抜ける事が出来れば、一気にショートカットして更に二つ先の町まで行けるのです。


 普通の馬は湿地帯に踏み入ると泥に足をとられて一歩踏み出すだけでも大変な事になってしまいます。

 最悪の場合は底なし沼にはまって二度と這い上がれなくなってしまうのです。

 ですから、馬でも、徒歩でも、ましてや馬車で湿地帯に踏み入ろうなんて人はいません。


 でも『魔動馬』は、湿地帯のぬかるんだ地面を普通の硬い地面の様に走る事が出来るのです。




 ボクたち三人は湿地帯の端に来ています。


「本当に大丈夫なんだよな?」


「はい、お母さんが言うには水の上でも走れるそうなので問題ないみたいです」


「そうか、じゃあ、行ってみよう!」


 ソラ君はそういうと、躊躇せずに湿地帯に向かって走り始めました。

 こういうところはほんとに思い切りがいいです。


 ソラ君の魔動馬は問題なく、湿地帯の上を普通の地面と同じ様に駆けて行きました。


「大丈夫そうね!あたしも行くわ!」


 レィナちゃんも走り出します。


「待ってよ、二人とも」


 ボクも走り出しました。




 湿地帯に入るとむしろ魔動馬の振動が無くなりました。

 湿地帯の泥の水面が普通の地面よりも平らなのです。


 これって、結構快適かもしれないです。


 大発見です!

 魔動馬と湿地帯は相性抜群なのです。

 きっと魔動馬車でも同じ様に快適なのでしょう。



 ・・・でもボクがそう思ったって事は・・・・


 案の定、あの二人は限界まで速度を上げていました。

 既に豆粒の様に小さくなっています。


 仕方ありません。ボクも速度を上げていきます。


 速度はぐんぐん上がっていきますが、振動はありません。

 湿地をまさに滑る様に走って行くのです。


 既に荒れ地の時の最高速度を超えていますが、まだまだ加速できそうです。


 風圧がものすごい事になってきています。

 附加装備で腕力を増強していなかったら、とっくに風圧で魔動馬から振り落とされていたかもしれません。


 それでも二人には追いつけません。


 どこまでスピードを出しているのでしょうか?

 ボクよりもスピードが出てるという事は風圧がとんでもない事になっているはずです。

 ボクはこれ以上スピードを出すと苦しくなりそうなので、このスピードのままで行く事にしました。


 途中、何体かの魔物を見かけましたが、この速度ではどうしようもありません。

 そのまま一瞬で素通りしてしまいました。




 結局最後まで二人に追いつく事無く、湿地帯の反対側の岸にたどり着きました。



 湿地帯の終わった先の草原を進むと、二頭の魔動馬が止まっていました。


 近づくとソラ君とレィナちゃんの二人が大の字で寝ていました。


 ボクも魔動馬を止めて二人のところに行きました


 二人とも 白目をむいていて、髪がばさばさです。


「レィナちゃん、ソラ君、大丈夫ですか?」


「いっ、息が出来なかった!顔の筋肉がひきつる」


「目が乾燥して。あけてらんねえ」


 どうして二人とも限界に挑戦したがるのでしょうか?


「あんなにスピードを出したらそうなって当然ですよ」


 ボクはタオルを水で濡らして硬く絞り、二人の顔を拭いてあげました。


「ふう、気持ちい!少し楽になったわ」


「ありがとな、ルル」




 そしてばさばさになったレィナちゃんの髪をとかしてあげます。

 せっかくのきれいな髪が台無しですから。



「あのスピードを出す時は、髪はまとめておいた方がいいですね」


「ええ、今度からそうするわ」



「でも今回の速度は湿地帯でないと出せないですよね?」


「水の上でもいけるんじゃないのか?」


「川や海では水面が波立っていますので、湿地帯ほど真っ平では無いのです」


「なるほどな、ルルは物知りだな」


「そんな事ないですよ。本を読んだりいろいろ考えたりするのが好きなだけです」




 少し休んで二人が落ち着いたら、軽くお昼ご飯を食べてから出発しました。

 お昼ご飯はおなかにやさしく食べやすいものをボクが用意しました。



 ここからは再び街道に戻るので、あまりペースは上げられません。

 普通の馬と同じ速度です。


 街道を進むと、その日の夕方には次の町に到着しました。


 宿屋は部屋が三つとれたので、この日は三人別の部屋にしました。

 レィナちゃんは少し残念そうでしたが、ボクは昨日と違って静かにゆっくりと眠る事が出来ました。




 翌日、宿を出発して街道をしばらく進んで行くと今度は穀倉地帯に出ました。

 ここはこの国最大の穀倉地帯です。


 街道の両側が、見渡す限りどこまでも畑です。


 街道や周辺の畑には常に人がいるので、魔動馬はさらにゆっくり、普通の馬のはや足程度の速度に落としました。


「たまにはこんな風にのんびり旅するのも悪くないな」


「そうよね、景色を楽しむのも大事だわ」


「ボクはできればいつもこのくらいがいいです」


 二人とも連日の無理な走りで少し懲りたみたいでした。




 穀倉地帯をのんびりと進むと、強固な城壁に囲まれた大きな町に到着しました。


 ボクはこの町には何度か来た事があります。




 この町はお母さんのお友達が住んでいる町です。


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