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42話 魔動馬の蹄音

 ボクも街道から外れて荒地に出ました。


 それまで流れる様に直線的に走っていた場動馬が、飛び跳ねながら走る様になりました。


 手綱をしっかり握っていないと振り落とされそうです。

 それに油断してると頭が振り回されて目が回ってしまいます。


 これはちょっと速度を落とさないと無理かもしれないです。



 そんな中、前を行く二人は次第に速度を上げています。

 こんな激しい揺れの中、どうして速度を上げているのでしょう?


 二人の様子を見たところ、何やら言い合いをしているみたいなので、どうやら勝負でも始めたみたいです。


 これは・・・ボクもペースを上げないと置いていかれてしまうという事でしょうか?


 二人の方を見ると、どうも『早く来い』といった感じのジェスチャーをしています。




 ・・・あきらめるしか無いみたいです。




 既に加速している二人に追いつくために、ボクは魔動馬の速度を上げます。


 すると揺れが更に激しくなりました。



 手綱だけでは心もとなくなってしまって、魔動馬の首にしがみつきたい気分です。


 二人はこの速度で大丈夫なのでしょうか?


 離れていく二人を見ると、魔動馬に振り回されている様子は全然ありません。

 むしろ魔動馬より先に、体を進行方向に傾けて魔動馬を操っているように見えます。



 あっ! そういう事ですね。


 自分が地面の状態を把握して、魔動馬の足場を決め、そこに魔動馬を誘導しているのです。


 魔動馬にまかせっきりにしていたからいけなかったのです。


 自分がこの荒れ地を走り抜けるつもりで、ルートを決めて、魔動馬にその指示を出せば、自分の体が魔動馬に振りまわされる事が無くなるのです。


 ボクは地形を見定めて、自分の足で走るつもりでイメージします。


 そのイメージを魔動馬に伝えると、まるで自分の体の様に動き始めました。


 不整地を、スムーズに駆け抜けるためには、あの岩を足場にして、次はこっちの地面に足をついて、次は穴があるから飛び越えて、倒れている丸太の上を蹴って・・・



 すごいです!本当に自分が馬になったみたいに、思い通りに動いてくれます!


 確かにこれは、コツをつかむと楽しいかもしれません。

 だんだんと、要領がわかってきたボクは、少しずつ二人に追いついてきました。



「やっと来たわね!ルル!」


「ルルも慣れたみてえだし、そろそろ本気を出してみるか!」


 えっ?どういう事でしょう?


「ここまでくれば人目もないし、限界まで速度が出せるわね!」


 あっ!そうでした。人目が無くなれば普通の馬の速度を守らなくてもいいのです。


「じゃあ行くぞ!遅れるなよルル!」




 二人は一気に加速して、あっという間に遥か彼方まで行ってしまいました。




 ・・・あの二人、本当に息がぴったりです。


 ちょっと嫉妬してしまいそうです。



 仕方ないのでボクもペースを上げる事にしました。



 魔動馬の足場の間隔を今までよりも大きくとります。


 一蹴り一蹴りの跳躍距離を次第に大きく、蹴り上げる力も強くします。


 ボクの魔動馬も、次第に速度が上がっていき、普通の馬の速度を超えて行きます。



 ・・・すごい風圧です。


 これまで体験した事の無い速さです。


 魔動馬のコース取りも難しくなり、わずかなミスも許されません。


 この速度で転倒したら大怪我です。


 


 初めは地形を読み取るだけで精いっぱいで必死でしたが、次第にコツがわかって慣れてきました。


 魔動馬の歩幅が大きいので、地形を全部見なくても、次の一歩の着地場所だけを見据えてそれを繋げて行けばいいのです。


 ボクは出来るだけ、直線的に走る事が出来るコース取りを見極める事に集中しました。

 そうしているうちに、この速度域に最適なコース取りが有るという事が見えてきました。


 適切な足場がない時は、いっその事一歩の跳躍距離を長くとって、直線で繋がる足場のみを使っていけばいいのです。

 そう、速度が上がった事により、不整地をかえって直線的に突っ切る事が出来るのです。


 走り方を切り替えたボクの魔動馬は、更に速度を上げて行きました。

 風圧はさらに強くなりますが、上下左右の変動が少なくなり、乗り心地は悪くありません。

 魔動馬はさらに加速します。



 そしてついに、前を走っていたソラ君とレィナちゃんに追いつきました。



 二人の魔動馬は力任せに速度を出していたみたいで、地形に合わせて上下左右に激しく揺れ動いています。



 そんな二人の魔動馬をボクの魔動馬は一直線に抜き去りました。



 さすがにこの速度で後を気にしている余裕はありません。


 ボクは振り返らずに真っ直ぐ走り続けました。


 後ろから聞こえてくる二人の魔動馬の蹄の音が更に激しくなった事から、二人が必死に追い上げてきている事だけはわかりました。




 やがて前方に町の城壁が見えてきました。


 ボクは魔動馬の速度を少しづつ下げて行きました。


 このまま城壁に激突したらただではすみません。

 それに、この速度では急に止まる事も出来ません。


 城壁に激突しない様に程よく減速し、城壁の少し手前で止まる事が出来ました。




 この町は今日の目的地の町です。


 一日かけて移動する予定でしたが、だいぶ早い時間に到着してしまいました。



 少し遅れてソラ君とレィナちゃんも到着しました。


 二人ともぎりぎりまで減速しなかったので、最後は土煙を上げながらの急停止です。



「ルル!あんたどうしてあんなにスピード出せたのよ!」


「おまえ、あの速さで気持ち悪くならなかったのか?」


 二人とも息を切らせてかなり気持ち悪そうです。

 ここまで魔動馬の激しい挙動に耐えて来たみたいです。


「はい、ボクは大丈夫です」


「すげえな、ルル」


「今回はあんたの勝ちよ!」




 勝負したつもりは無かったのですが、ボクは魔動馬勝負に勝ってしまったのでした。


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