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12話 成長した勇者

 「上出来だ。ルル」




 聞きなれた声が耳元で聞こえました。




 ボクの肩にはお父さんの手が置かれていました。


「お前はここで待っていろ」



 言葉と同時に、お父さんの姿が消えました。



 その直後、レィナちゃんに噛みつく寸前だった魔物は、湖の方に大きく跳ばされていました。


 盛大な水飛沫を上げて湖に着水し、沈んでいきます。




「・・・ジ・・オ?・・・」


 レィナちゃんはかろうじて意識があった様です。


「レィナ、もう大丈夫だ」


 お父さんはレィナちゃんを抱きかかえるとボクのとこまで跳んできました。




「ルル、レィナを頼む」


 お父さんは僕の前にレィナちゃんを寝かせました。


 レィナちゃんは、服がボロボロになってほとんど裸に近い状態です。

 全身の皮膚が火傷みたいに焼け爛れています。


「レィナちゃん!しっかりして!」


「・・・ルル・・・あたし、もう、ダメ・・かも・・・」


 レィナちゃんはすごく苦しそうで、声を出すのもやっとです。

 目から涙が滲んでいます。


「・・・ジオ・・・あたし・・・」


「レィナ、少しだけ我慢してくれ」


 お父さんはそう言うと湖の方に向かっていきます。



 すると湖の中から、さっきの魔物が首を出しました。


 かなり怒っている様で、お父さんの方に向かってきます。


 蛇の様な体を水面から空高く跳ね上げ、上から口を開けてお父さんに迫ってきます。

 そして口から大量の液体をお父さんに向けて吐き出しました。


 液体が雨の様にお父さんに降り注ぎます。

 あの量はお父さんでも避けきれないのではないでしょうか。


 でも、お父さんが左手をかざすと、液体は一気に吹き飛ばされて行きました。


 何か風系の魔法の様でしたが、お父さんは魔法陣も描いていないし、呪文も唱えていません。


 続けて、無数の風の刃が発生し、魔物の硬い鱗を切り裂いていきました。

 魔物の表皮が見る見るうちに傷だらけになって行きます。


 そしてお父さんは魔物の首に向かって跳躍し、剣を抜いて魔物の首に切りつけました。


 お父さんがいつも持っていた短剣は、鞘から抜いた瞬間、光り輝くロングソードになっていました。


 お父さんの剣の一閃で、魔物の首は切断され、大きな水しぶきを上げて湖の中に落ちて行きました。


 残った体も水しぶきを上げて水面に倒れて行きます。




 お父さんは剣を鞘に納めるとすぐにボクたちの方に戻ってきました。


「レィナ、大丈夫か?」


 お父さんはレィナちゃんを覗き込み声をかけました。


「・・・ジオ・・・あたし・・・ジオが・・・」


 レィナちゃんは声を出すだけでも苦しそうです。

 目から涙がぽろぽろ流れ落ちています。


 ボクが見てもレィナちゃんは、もう助からないのではないかと思ってしまうほどの重症です。


「レィナちゃんを助けて!お父さん!」


「待ってろ、いま治す」


 お父さんがレィナちゃんの頬に手をかざすと、焼け爛れた肌が次第に元のきれいな肌に戻っていきました。


 ・・・魔法陣も呪文の詠唱もありませんが、治癒魔法の様です。


 お父さんはレィナちゃんの全身に、順番に手をかざして、治していきます。


 やがて、レィナちゃんの体は全身が元通りのきれいな肌に戻りました。




 お父さん、こんな能力があったんですね。


 ボクもお母さんにちょっとした擦り傷くらいなら直してもらった事がありましたが、お父さんにもここまでの重症を治せる治癒魔法が使えるなんて知りませんでした。


 これもきっと勇者の力なのでしょう。




「どうだ、もう痛い所はないか?」


 お父さんはレィナちゃんに尋ねました。


「ええと・・・あれ?・・・うん、どこも痛くない」


 レィナちゃんは全身を触って確かめました。


 レィナちゃんは自分の体を手でぺたぺた触って確かめていたのですが、そのためにボロボロになっていた服がみんなパラパラと落ちてしましました。


 お父さんは、さすがに服までは直せなかったようです。


「ああっ!やっ!」


 レィナちゃんが体を隠そうとすると同時に、お父さんは自分の上着を脱いでレィナちゃんに掛けてあげました。


「・・・ありがとう、ジオ・・・」




 レィナちゃんは、ちょっと赤くなった顔でジオに話し始めました。


「こんな事が出来るなんて・・・やっぱりほんとなんだ」


 レィナちゃんは、ぽつぽつと語り始めました。


「・・・ジオは・・・死んだはずの先代の勇者様なんだよね?」


 お父さんは、ゆっくりとうなずきました。


「そっか・・・ジオは本当にルルのお父さんなんだ。ルルは知ってたんだよね?」


 レィナちゃんは僕の方を見ました。


「・・・うん・・・前に聞かされてた・・・ごめんね、秘密にしなきゃいけなかったんだ」


「お父さんとお母さんがね、話してるの聞いちゃったんだ。そろそろあたしにも本当の事を話さなきゃいけないって。どうやって話を切り出そうか悩んでたんだ」


「・・・すまない、今まで騙していた」


「・・・仕方ないよ、こんな重大な秘密・・・でもできればジオから直接聞きたかったな」


 レィナちゃんはちょっと遠い目をしました。



「変だとは思ってたんだよね。ジオってば、あたしたちと同じ歳なのに妙に落ち着いているし、すごく強いし、それでもまだ本気を出していないみたいだったし・・・・・ それに・・・ララさんとの雰囲気が、親子っていうより、恋人同士に見える時があったしね」



 ・・・お父さんとお母さん、秘密が多いわりに、ちょっと演技が下手かもしれないです・・・



「そっか、これですっきりしたわ!でもジオはジオよ!これまでの関係を変えるつもりはないからね!」


 レィナちゃんはすくっと立ち上がって、お父さんびしっと指さしました。



 ・・・あまりにも勢いよく立ちあがたので、羽織っていた上着がはらりと落ちてしまいました。



 ・・・レイナちゃんはお父さんとボクの目の前で、全裸で仁王立ちになってしまいました。



「きゃああああああ!」


 レィナちゃんは慌てて自分の体を手で隠しました。


 お父さんはすぐに後ろを向いています。


 ボクはレィナちゃんのところに駆け寄って、急いで上着を拾ってレィナちゃんに掛けてあげました。


「ありがとう、ルル」


 レィナちゃん、思いっきりが良すぎてこういうハプニングを起こしやすいのです。




 ・・・それにしても、レィナちゃん、まだ10歳なのに結構胸が大きくなってました。


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