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魔樫

 午前中は美穂と共に過ごしていた。普段、俺は一人暮らしをしており、美穂も実家から近い所で一人暮らしをしている。美穂は俺の一つ下になるが彼氏は居ないらしい。そろそろ彼氏を作ればいいのにと言うといつも返ってくる返事は『おにぃ以外に良い男なんて居ないから無理』との事。勘弁してくれよ……


 兎山さんと合流するのは午後二時からの予定なのでそれまでは美穂の機嫌取りに時間を費やす。そうしないと俺の貞操が奪われそうなんやもん……


 昼飯も二人で食べた後に美穂はブリブリ言いながら帰って行った為、着替えをして出かける準備をしてギルドに向かう。

 もちろんマジックバック持っていく。そうしないと魔樫を出せないしな。


 二時前にギルドに行くと既にギルドの入り口で兎山さんが待っていた。

 女性にしては高身長の170cmあり、細身の身体付きをしているしている。黒髪ロングに眼鏡をしているため周りから言われているのは《委員長》とか影で呼ばれている。スーツ姿だから秘書とかでもいいと思うけどな。

 今日は普段のスーツ姿では無く、空色のワンピースを着て髪型も何時もの髪型とは違ってハーフアップにしていて少しドキッとしたのはここだけの秘密だ。


 これを本人に言うと間違いなくこう言われる。

『惚れました?ねぇ惚れました?私の魅力に気付きましたか?惚れたら最後ですよ?噛み付いて逃がしませんからね?』

 とか言われるのは間違いない。


「お待たせしました。時間通りに来たけど待たせてしまったかな?」


「二十八分前からワクワクして待ってましたよ!だって高峰さんとデートですからね!服にも髪型にも気合い入れましたよ!どうですか?惚れますか?てか惚れて当たり前ですよね!!」


 うん、何も言わなくても暴走しやがったよこの委員長は。

 スルースキルを発動して会話を進める。


「待たせてしまったみたいで申し訳ない。楽しみにしてたから兎山さんオススメの武器屋に行こうか。さっさとね」


「お任せ下さい!高峰さんの要望に応えられると思う場所ですからね!さぁ恋人繋ぎをしてイチャイチャしながらいきましょうか!さぁ!!」


 もうやだぁ……この人……残念美人ってこの人の事だよ……


 手を握ってこようとした兎山さんの手を払いながら教えられた武器屋に到着した。


 武具店ドラゴンフィスト


 物凄い名前の武器屋やな、おい。

 店の中には様々は武器や防具が陳列していた。

 広さ的にはコンビニより少し広いぐらいかな?でも奥にも部屋がありそうな感じがするし、二階に上がる階段がレジの後ろにあるから二階は住居なのか?

 俺が周りを見回していると兎山さんがレジに座っていた女性に声を掛けていた。


「昨日お電話した兎山ですが、雲渓さんはいらっしゃいますか?」


「お師匠ですね、直ぐに呼んできますので少し待ってて下さい!」


 女性が師匠ぉぉぉぉぉ!!お客さんですぅぅぅぅぅ!!!!って叫びながら店の奥に走っていったぞ。いい声量だ。それに加えて足が速い。


 暫く店に陳列していた武器……主にハンマーやウォーハンマー何かの鈍器を見ていた。普段金属製のハンマーを使う事が殆ど無いから珍しいよね。使うとしてもセットハンマーやから大ぶりのハンマーやウォーハンマーとか珍しくて珍しく……そんな俺を横で兎山さんがニヤニヤしながらスマフォで写真撮りまくってやがる。


「何を盗撮してんすか……」


「目を輝かせて鈍器を観てる高峰さんに胸がときめいてつい写真に収めないとと思って爆写してます!やっぱり剣とかよりハンマー系の武器の方が好きなんですか?」


 そう言われるとぶっちゃけ悩むんだよな。剣とか刀とか確かに使ってみたい気もするけど俺に合ってるのはやっぱり鈍器なんよ。だってスキルも槌術があるし。


 勿論、剣術とかのスキルが手に入ってたら使ってたかもやけど俺にはやっぱり掛矢なんよ。


 そんな話をしていると奥から一人のおいちゃんが出てきた。俺と目が合うと


「お前さんが血濡れ姫の言ってた冒険者か」


 え?血濡れ姫?誰それ?

 横に居る兎山さんを見てみると思いきり顔をそらされた。

 この委員長が血濡れ姫?どゆこと?


「なんじゃ?お前さん知らんのか?この子は闘いが始まると性格が変わって魔物を笑いながら切りつけ、返り血なんか気にすること無く殲滅する所から血濡れ姫って呼ばれてるのを知らんのか」


 おいおい、アンタはあぶねーやつやったんかい。


「マサさん!そんな事は今言わなくていいんです!今回はこの高峰さんが魔樫を加工して欲しくてきたんですから余計な事は言わなくていいんです!これ以上言ったら……切り落としますよ?あれを」


「よし!高峰とか言ったな!魔樫で何を作って欲しいんだ?ワシがなーんでも造ってやるぞ!さぁ早く要望を言うんじゃ!切り落とされる前に!」


 兎山さん……俺の中でアンタは要注意人物に指定されたわ……今この瞬間にな。


「あー、とりあえず掛矢を作って欲しい。掛矢ってわかります?」


「木製のハンマーだろ?魔樫なら確かに鈍器が一番だからな。魔力伝達もいいから杖なんかにも使えるがお前さんの見た目からしたら魔法使いとかじゃ無いと思うしな」


 マジックバックから長さ三mの4寸角ある魔樫を取り出し、希望の柄の長さに頭の太さもしっかりとリクエストした。


「魔樫を使えば確かにお前さんの希望の大きさと変わらんハンマーよりいい物が作れるが、ウォーハンマーの方がダンジョンでは役に立つと思うが良いのか?」


「今は掛矢でいいんすよ。大工の冒険者なんやからそこはやっぱり掛矢じゃないと俺のプライドが譲らんのっすよ。あ、後動きやすい防具も見繕って欲しいんですよね。作業服に見える感じのやつを」


「防具まで作業服で統一したいのかよ…変なこだわり持ってんなお前さんは。本来なら革鎧とか勧めるんだが…少し俺の知り合いに声を掛けてみるから待っててくれ」


 一先ず俺の連絡先を教えて後日防具兼作業服とリクエストした掛矢の納品日を連絡してもらう事にした。


 ひとまずの武器は昨日攻略したダンジョンの時と同じ掛矢とバールで、防具に関してはせめて革鎧を付けておけとマサさんに言われたから三万程で買える革鎧セットを購入した。


 マサさんの店を後にした俺と兎山さんは道具屋何かも回ってソロに必要な物を購入していった。

 まぁあと一つFランクダンジョン制覇すりゃEランクになるからそこまで必要なくね?とか思いながら買い物してたけどEランクダンジョンからはソロだと危険も付き物だと言われたので毒消しなんかセットになってる救急キットに日帰りだとキツイダンジョンも有るからと言われ、簡易テント何かも買わされた。


 なかなかのお値段したんよ…これが……


 魔樫の掛矢は素材持ち込みやったから加工費だけで済んだけど……それでも道具とか買った金額を合わせたら約十万…


 明日から稼がないとやべーな、こりゃ。







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