いもうと
「先輩の話をしたらめっちゃ心配してましたよ?戻ってきたらしっかりと説明してもらうとも言ってましたけど…」
「とりあえず明日しっかり話すようにしてるよ…かなり憂鬱やけどな、かなり怒られるやろな…アイツに説明するのとは別に用事もあるからなぁ」
「お?別の用事ってのはデートでやんすか?美穂さんとおデートなんすか?」
ニヤニヤしながらこっちを見るなや。それに美穂とはデートなんかしねーよ。義妹やけどさ。それに兎山さんとも都合合わせて魔樫を加工できる所を紹介してもらわんとあかんし。
そんなことを思っていると兎山さんからLIMEが来た。
『頑張って急いで探しました!明日の昼から魔樫を加工出来る武器屋を紹介出来ます!どうでしょうか?』
うむ、なら美穂には朝の内に説教をしてもらって昼からは武器屋に行くようにするか。美穂にも連絡しておかないとな。LIMEで美穂に連絡をする。
『明日の昼から予定入ったから説明するのは明日の朝でどうか?』
連絡を入れると直ぐに返事が来る。暇なんか?こやつは。
『朝から行かせてもらいますから覚悟しといてくださいねおにぃ』
隼人と飯を食い終わり解散して家に帰り、疲れているのと酒を飲んだ為に布団に入ると直ぐに爆睡した。
そして次の日の朝。
何故か体が揺れている。寝ているはずなのに。地震でも起きたのかと思い目を開けると真顔で俺を揺さぶる美穂が目に入った。
「おにぃ〜朝ですよ〜。説明する朝ですよ〜起きないと…耳を噛みつきますよぉ〜」
「起きるから耳を噛もうとするな。そして真顔はやめろ、怖いから」
「お早うございますおにぃ。こんな可愛い子に対して怖いなんてしつれいですよ?」
確かに美穂は小柄ながらもスタイルはいい。黒髪のポニーテールも似合っている。でも性格は怒らせると鬼も逃げ出す程のオーラを撒き散らすから手が付けられない。
ナンパなんかされた日には笑顔でめっちゃ毒を吐いて相手を泣かすぐらいだもんな。手を出そうものなら合気道を習っていたから男相手でも軽くなぎ払える実力を持っている。美穂の高校時代の隠れたあだ名は《氷の姫夜叉》とか物騒なあだ名が付いていた。
「起きたら顔を洗ってきてください。ご飯用意してますから」
姫夜叉なのに意外と家庭的な面もある。
「変なことを考えていたら……もぎますよ?」
「何をもぐつもりや」
「ナニをですよ」
微笑みながら潰す仕草をするのは辞めてくれ。ヒュンッてなるから。ヒュンッて。
作ってもらった朝食を食べながら昨日のことに付いて説明をした。
渋々納得はしてくれたがこれからは危険なことに突っ込んで行くのは辞めてくれと言われたけど今後暫くは冒険者として活動するからなぁ。
「知り合いの人の現場に応援行くのはダメなんですか?無理にダンジョンに行かなくても……」
美穂の実の父親は今は亡くなっている。それは何故か。
冒険者として活動していて、美穂がまだ小学生の頃にダンジョン内で亡くなっていた為に冒険者をよく思っていないのだ。
知り合いに頼んで仕事させて貰ったとしても楽しみが半減なんだよな。それに隼人も居るからアイツ優先で仕事の段取りをしないといけんのよ。隼人はもう既に知り合いにこき使ってくれって昨日の時点で連絡してるからええけど、俺の心は既にダンジョンにある。
「危ないと思ったら直ぐに引き返すし無理はしないと約束するよ。それにそんな直ぐにダンジョンに行かないしな。今日明日は装備なんかの諸々を用意するつもりやから」
「約束だからね?もう大事な人が居なくなるのは嫌なの」
美穂の頭を撫でながら俺は無理しないと約束して心にも刻んでおく。