日常に戻ってきた
一先ずは特にお咎め無しという事で落ち着き、ダンジョンで手に入れた道具類は売らずに俺がそのまま使うことにした。
エコバックは普段使う分には申し訳ないが、ダンジョン内で使うとすれば結構使いにくいと俺は思っている。だって肩に下げたとしても掛矢を装備してると邪魔になるし、振り回したりしたら一緒にエコバックもグルングルンなる訳で…
そんなことを思っていると兎山さんが俺に提案を出してくれた。
「同じ容量入るマジックバックと交換なんてのはどう?」
俺のエコバック型のマジックバックは容量としては平均的な家庭のお風呂場に物を満載できる程の容量らしい。時間停止や時間遅延等のオマケは一切ついてない。買おうとすると最低でも百~二百万はするとの事。
これを同じ容量入るウエストポーチ形かリュクサック型のマジックバックと交換してくれるみたいだからお願いするか。
「流石にこのエコバックを使って現場に行くのは恥ずかしいんで…ウエストポーチ形でお願いします」
交換してもらった後は今後についての話だった。
「まず高峰さんがお仕事されていた現場は大元であるハウスメーカーさんにあのダンジョンをどうするか話し合いして行きます。高峰さんには休業ダンジョン補償を申告してください」
そこなんよなぁ、結局はあの現場は施主がついてるとしても完成まではハウスメーカーの持ち物。ダンジョンのコアを破壊して普段通りの建物に戻して工事を再開するか、もしくはそのままダンジョンとして残しダンジョン課とギルドの協力の元、ダンジョン運営をして行くかの二択になる。
ダンジョンを無くして工事再開するにしても施主にしっかりと説明した後、書類などの提出をしなくちゃいけないから短くても二ヶ月は工事再開が出来ない。
ダンジョン運営をするとしたら施主に説明からまた始まり全額返済か新しく土地を探して建て直す事になる。その後、冒険者達にダンジョンを解放して少しの利益を分けて貰うという事になる。Fランクダンジョンなら年間百万程度。しかし今回のダンジョンは生まれたてなのでもしかしたら成長してランクが上がる可能性もある。
どちらにせよ俺達関係業者はあの現場で仕事が出来なくなる。
俺と隼人は次の現場をまだ貰っていない。だってあの現場は手をつけてまだ1週間程度やからそりゃ次の現場なんか直ぐにくれるはずないよな。
次の現場を貰えるまでに早くて一ヶ月近くかかるだろう。その為の休業ダンジョン補償だ。一ヶ月休めば普段貰っている給料を補償してもらえる。でも俺は隼人を抱えているため俺の分しか補償は入ってこない。だからそこから隼人の給料を払ったらそんなに残らない。なら俺はどうすれば?ダンジョンで稼ぐしかないよな。
調査を行っていた冒険者の水戸部さんが帰って来たらしく佐々木さんの横いたもう1人のダンジョン課の人が聞きに行き直ぐに戻ってきた。
やはりFランクで間違いないが成長の可能性大との事だった。
この後にハウスメーカーと話し合いをしてくるといい今回の事情聴取は終わりとなった。
佐々木さん達が帰った後に兎山さんが話しかけてきた。
「暫く本業がお休みになるけどどうするの?」
「そりゃ稼ぐ為にダンジョンに行くしかないよね。とりあえず今日は帰って明日か明後日にまた顔出しに来るわ。その時にあの木材を武器に出来るような店があったら教えて欲しいやけど」
「任せて!私、兎山美久里がしっかりと調べておきますね!ご褒美としてデートを要求しますから覚悟しておいて下さいね?」
事情聴取は2時間程で終わった為隼人と飯に行ける時間はあるな。直ぐに電話してみる。
「お疲れっす。もう拉致監禁から解放されたんすか?」
「おぅ、もう終わったから飯行くか?」
「もっちろんすよ!店は良く行く居酒屋のうーちゃんでいいすか?予約しておきますよ?」
「時間は19時半で予約しといてくれや、軽くシャワー浴びて着替えていくから」
「OKっす!それと家に美穂さん居たんで軽く事情を話したら先輩からしっかりと聞かないと行けないって言ってたんで覚悟しといた方がいいっすよ〜でも予約する時間までにちゃんときてくださいね」
めんどくさいことにならんかったらええな…って思いながらタクシーを使ってアパートに帰り、玄関を開けると美穂の靴がある。やはり居たか…
「おにぃお帰り。そして報告はよ」
「報告したいのは山々やけどこの後隼人と飯食いに行く約束してるから後日じゃダメか?約束を破る男は嫌いってお前は言ってたから隼人との約束を破ったらダメだよな、な?」
「なら明日また来るからその時にしっかりとじっくりと聞いて説教させて貰うからね?」
えぇ……説教確定なのかよ……
とりあえずは隼人との飯を楽しむとしよう。
居酒屋うーちゃんにこれまたタクシーで行き、隼人と合流する。5分前に到着すると隼人が店の前で待っていた。
「先輩お疲れ様っす。はよ飲みましょう!」
店に入って席に付いたと同時に直ぐさま生と刺身盛りと焼き鳥盛り合わせを頼む。
早速、生とお通しが来て俺と隼人は、
「「かんぱーい!」」
仕事後のビールはやっぱり美味い。一気に呑んでしまった為に二杯目を頼む。刺身盛りも来たから食べながら話すか。あっ、追加で唐揚げと山芋鉄板とシーザーサラダとだし巻き玉子お願いしやーす。
「先輩先輩、ダンジョンの話を早く聞かせて下さいよ!楽しみにしてたんっすから!」
俺は刺身盛りも食べながら今日のダンジョンでの出来事から拉致監禁されてた時の話をした。
「あの道具達が魔道具になるなんて凄いっすね〜。仕事が楽になるやないっすか!しかもマジックバックを手に入れるとか先輩運が良すぎっしょ。でもあの現場はどーなるんすかね?」
「多分、宮間社長はダンジョン運営するって言うやろな。ダンジョン好き社長やし。まぁ一ヶ月分のお前の給料は補償のやつを全部回すから」
「え?全部っすか?先輩はどーするんすか?給料無しになりますよ?」
「俺は冒険者やぞ?ダンジョンで稼いだらええんよ。三日あればEランクに上がるやろし、下手したらDランクまで上がるかもな〜とか夢を言ってみる」
でも実際に今日思ったけど、Eランクに上がるにはFランクダンジョンを二つ制覇すれば上がる。今日一つ制覇したからあと一つ、だから楽に上げられる。DランクになるにはEランク五つ制覇とCランク冒険者同行の上でDランクを一つ制覇すれば上がる。やろうと思えば直ぐに出来そうだろ?
「俺も冒険者登録しようかな〜」
「今は講習の予約が一杯らしいぞ?学生は夏休みやから学生達で予約埋まってるみたいやから残念やな」
「まじっすか〜俺も先輩と一緒にダンジョン行きたかったのに〜でももしかしたらワンチャンあるかも知れないけんサイトをガン見して待機しときますよ」
何時かは隼人とダンジョンに行ける日が来るかもやな。
楽しい飲みが終わる頃に
「そう言えば先輩、美穂さんに会いました?」
やめろ、楽しい気分が一気に憂鬱になる一言は辞めてくれ……