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かりそめ皇太子とフワフワの恋  作者: 遥か彼方
1/1

決別

くるくる。ふわふわ。サラサラ。


いつの時代も、どんな世界も。


女子が悩むことといったら、けっきょく似たり寄ったりのことなのだろう。



☩☩☩☩☩☩




ちょっとだけ人よりコンプレックスが大きくて、そのためにちょっとだけ人よりも美容に興味があるOLだった私は、クリスマス限定コフレの予約のためにデパートへ向かう途中、あっけなく車に轢かれて死んだ。


このためにコツコツお金を貯めてたのにな…。


死化粧は、上手な人がやってくれますように。



それが、前世の最後の記憶。




☩☩☩☩☩☩☩




「ラズ、準備はできて?全く愚図なんだから」

「間も無く迎えの馬車が到着する。万が一にも先方をお待たせすることなどあってはならないぞ」


おおよそ今日嫁ぐ娘にかけるとは思えない言葉を吐く両親を無感動にスルーしながら、ラズ・ラングレーは最後の私物を小さな鞄に押し込んだ。もともと、持っても待たなくてもいいような物しか持っていない。さっさとこの家を去りたいのはラズの方だった。


「お姉さま、どうかお元気で。わたくしが伯爵夫人となった暁には、またお会いすることも叶うでしょう」


両親から一歩引いた場所に立ち、儚げな風情で横に立つ男性にしなだれかかる少女。フワフワの金髪にサファイアの瞳、赤子のように薄いくちびる。いまのラズとは似ても似つかぬ姿ながら実の妹であるエリザベスは、声音だけは弱々しく、周囲に見えない角度から勝ち誇った表情を覗かせた。


「おおエリザベス、私の可愛いリズ。このような女にまで温かい言葉をかけて、その清らかさはまるで天使のようだ」

「まあ、クリスさまったら…」


そのような女は、ついこの間まであなたの婚約者だったのですが。


家同士が決めたこととは言え、短くはない期間許嫁として過ごした公爵家の長男クリス・ラインハルトは、まるで仇を見るような目でラズを見据える。周囲の誰もが見惚れるほど美しく成長した妹に乗り換えるチャンスを、クラスは今か今かと狙っていたのだろう。ラズの婚姻話を機に円満にくっついた2人の茶番はもう見飽きていて、これまたスルーしてラズはひとり玄関へと向かった。


「今まで育ててやった礼も言えんのか」

「我が家の恥だわ。まもなく王城を追放される『かりそめ皇太子』のお相手には丁度良いでしょうけど」

「お父様、お母様。そんなふうに仰らないで。お姉さまは『仮にも』王族の花嫁として望まれて行かれるのですから」

「リズ、君は本当に優しい心の持ち主だな。我が伯爵家の花嫁として相応しい。公爵家の長子だという理由だけで、こんな女とも呼べぬ輩と婚約していた自分が恥ずかしいよ」




ええ、ええ。感謝はしておりますよ。


ありがとう。


私を解放してくれて。





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