10.ストーカー
「あ・・・あ、」
あぁ、駄目だ。声が出ない。
どうしよう・・・早く早く着いて!
「そら。驚いているんだね。
待たせてごめんよ。
あぁーほら涙が。
ふふっ嬉しくて泣いてくれるなんて
君は本当にどこまでも可愛いんだから」
男が私の頬に触れ涙を拭う。
「でもだから不安だよ。
君は可愛いから色んな人が君を狙っている。
だからもう仕事は辞めて僕の為だけに家で僕の世話をしてくれ」
男を私の頬を人撫でし
顔にかかった私の髪を耳にかけ自分勝手なことを口にする。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
触らないで。
触らないで。
触らないで。
私の誓いを勝手に変えないで!
<ガラっ>
17階に着きエレベータのドアが開く
<ドンっ>
私は男を両手で押し少しできた隙間から
エレベーターを走って出る。
ドアがちょうど閉まる感覚がある。
逃げれる。
大丈夫。
足がまだガタガタしている。
もう少し、もう少し頑張れ。
コンサート終わりで疲れたきった体。
足も限界ってくらい使った。
それにプラスして恐怖で足に感覚がない。
玄関ドア前に着いた。
<ピッピッピッ>
急いでロック解除するため暗証番号を打ち込み。
<ガチャ>
ドアを急いで開ける。
<ドンっ>
「ひどいよ。そら」