1/13
1.前世での私
『前世の記憶がある』て言ったら信じてくれますか?
ありえない話だと思う人が多いと思う。
私も正直聞かれる立場だったら信じてない。
でも、今アイドルとして世界中で引っ張りだこの私、
常陸院そらは前世の記憶がある。
前世どころか前世の前世、その前の前世と記憶がある。
一番最初の私の人生は本当に悲惨だった。
俗に言う悪役令嬢だったから。
ブラウン公爵家に生まれた
〝ティアラ・ブラン"は
その家の力を存分に利用して我儘放題だった。
欲しいと思ったドレスや宝石は絶対に手に入れていたし、
私の機嫌を損ねたメイドは即クビ。
私の嫌いなキノコを知らずに食事に出した新人のシェフも即クビ。
「死刑と言わない私は女神様よ」てその時思っていたっけ。
欲しいものは全部私のもの。
私が世界の中心。
そう思って疑いもしなかった。
だから、初めて一目ぼれした時も
「私はこの人と結婚する」てお父様にお願いして
その方と結婚した。
―ノア・ウィリアム―
王族、次期皇帝の方だった。