歯車
「久しぶりー」
そう言いながら、カズは隣に座って来た。
「うん、久しぶり」
マサキも笑顔で挨拶を返す。
「あれ?君って笑うんだ?はは」
この間の挨拶の時は、突然話しかけられ
戸惑いと緊張で、うまく返せていなかったようだ。
「あ、あの・・・まだ名前・・
俺、マサキ」
二人は他愛いもない話で盛り上がった。
あのバンドはカッコいい
あの映画の誰々はカッコいい
それから
自分は、今中学三年で
音楽に興味がある事
他所の町から、引っ越して来た事
等を話した。
「そっか、そっか。」
カズは優しい笑顔で聞いてくれた。
カズはどうやら、この公園の近くのアパートで
一人暮らしをしてるようだ。
写真家を目指しているらしい。
「あ!!この間、もう一回会ったら友達になろうって
言ったべ?今日から友達な!!」
カズはまた、この間のように右手を差し出して来た。
「うん」
握手をした後
「そう言えば、ライブハウスって行った事あるか?」
「ううん、ない」
マサキは首を振りながら答える。
「俺のさぁ、友達がバンドやっとるんよ
女の子やけどね。次の日曜日にライブあんだゎ。
一緒に行くか?」
「あ、でも・・・俺、お金・・・」
カズはマサキの肩を叩きながら
「心配すんな!!そんくらい俺が出してやるよ!!」
と、兄貴風を吹かせた。
「じゃ、次の日曜日に昼の一時にここで会おう!!
で、俺の部屋でメイクアップしてやるよ!!」
「う、うん!!」
カズは、出口の方へ向かって歩き出した。
「ねぇ、何で俺に話しかけてくれたん?」
マサキの問いに振り返り
「おめぇが、身体が細くて髪が長いから
女かと思ったからだよ」
すかさず
「ナンパかよ!!」
今度は、マサキの問いには振り返らず
背中を向けて腕だけ振りながら、去って行った。
楽しみが出来た事にマサキは嬉しくなった。
おっちゃんと恭子さんとの出会いもだが
このカズとの出会い
日曜日に誘われた、ライブハウスもまた
その後のマサキに、大きな影響を与える。
少しずつ歯車は動き出した。
※ここまでは、回想も交えて
淡々と話が進みましたが。
次回からは、少しスピーディーに展開して行きます。