座敷わらしのクリスマス
最初にカズにこの公園で話しかけらて
二ヶ月くらいが経っていた。
あれからも、ちょくちょく来てはいたのだが
あれ以来、カズには会えていない。
12月になっていた。
もうすぐクリスマスだ。
いつものようにベンチに座ると
少し雪がちらついて来た。
マサキはフと祖母の家に
ばあちゃんに預けられていた幼い時の事を思い出した。
世の中にクリスマスと言う
それはそれは
ウェ~イ!!なお祭りがあるのは
なんとなく知ってた。
サンタさんの存在も
薄々とは知っていた。
だが、しかし
大正生まれのばあちゃんに
クリスマスなんざぁ、関係ねぇ!!
あ、そんなの関係ねぇ!!
あ、そんなの関係ねぇ!!
はい!!オッパピー!!
平成に変わるちょっと前の
12月の24日
クリスマス・イヴ
筑豊の田舎、田んぼばかりの所とは言え
さすがに商店街くらいはあった。
ばあちゃんに一緒に預けられた
白い雑種の犬のミルさんが、マサキの唯一の友達。
夕暮れまで、ボタ山でミルさんと遊んで
帰り際に商店街の中を通った。
その日は
ケーキ屋さんからは
甘い香りがしていた。
誕生日ケーキも食べた事ない
プレゼントなど貰った事もない
マサキには、目に映る全てが
眩しく見えた。
クリスマス・ツリー
どこかしこから聴こえる
クリスマス・ソング。
「凄いなぁ・・・」
そう呟き
商店街に飾られた、色とりどりの装飾に
目を奪われていた。
商店街を抜けると
やっぱり、まだ
遊び足りない、マサキはお供のミルさんを連れて近所の神社の境内で遊んだ。
日はまだ暮れてはなかったが
犬と遊ぶ少年を見て
怪しく思ったのか
はたまた座敷わらしと思われたのか
ご利益を貰おうと思ったのか
神主さんが声をかけて来た。
「もうすぐ暗くなるよ
早く帰らんとお母さんが心配するよ」
「うん」と返事はしたが
まだ帰る様子のない少年を見て
「今日はクリスマス・イヴやけん
良い子にして早く帰らんとサンタさん来てくれんばい?」
「うちには母ちゃん居らんし、サンタさんやら居らんち
ばあちゃんが言いよった。」
「おばあちゃんがご馳走作っとるんやないと?」
「クリスマスやら、うちは関係ないち
ばあちゃんが言いよった。
あれは、お金持ちがするお祝いやけん
うちは何もせんでいいとっち言いよった」
「そうね・・・
あっ!!そうだ!!クリスマスのやないばってん、寒かろ?
ぜんざい食べるね?」
「うん!!」と元気よく応えると
神主さんが温かいぜんざいとお茶を持って来てくれた。
雪がちらつく中で食べたぜんざい。
すごく温まって、甘くて美味しかった。
プレゼントこそ貰えなかったが
マサキにとっては、初めてのクリスマスだった。
その時は、神主さんがサンタさんに思えた。
そんな事を思い出し、少し涙ぐんでいると
「よっ!!」 と聞き覚えのある声がした。
カズだった。