心が折れたエンジェル
おっちゃんと出会って数ヶ月
すっかり心を開き
ほぼほぼ、毎日のように家に通っていた。
奥さんの恭子さんとも、すっかり仲良くなり
まるで、兄と姉のように慕っていた。
「平和でいいな」
気持ちの安らげる場所を見つけた。
そう思っていた矢先
マサキはまた、引っ越しする事になる。
もう、何度目の転校かもわからなくなっていた。
電車に乗れば一時間ほどなので
いつでもおっちゃんには、会いに行けるのだが
正直、ウンザリしていた。
いつも、大人の犠牲になるのは子供だ。
幼いマサキは、一度精神から来る奇行で
診療内科にも入院した。
10ヶ月ほどの入院だった。
周りのお兄さんや、お姉さんが可愛がってくれた
事もあり
容態も落ち着き、退院と言う頃に
何の相談もされないまま再婚され
この町に引っ越して来た。
マサキは中学生ながら、自分の環境に
諦めを覚えていた。
「またか・・・」
ため息で片付ける事しか出来なかった。
中学二年生の夏
マサキは引っ越した。
新しい学校でも、相変わらず馴染めずには居たが
おっちゃんから
「学校には、ちゃんと行け」と言われていて
男と男の約束もあり、学校には行っていた。
おかげで、何人かの話す相手は出来たが
あまりツルむ事はせず
自分とは育った環境も違う
普通の家庭の子たちだったので
気持ちの距離は置いていた。
自分の環境とのギャップに傷付きたくない。
一匹狼を気取るほど強くはないが
一人の方が楽だとも、感じていたし
せっかく友達になっても
また、いつ別れるかもわからない。
そんな気持ちもあった。
幼い心は傷だらけだった。
もし俺がヒーローだったら
悲しみを近づけやしないのに
なんて、言ってくれる人なんて居る訳もなく
翼も心も折られていた。