Part9 無策
帝都 一番街 Arbiter操縦席
am.8:20
くそっ 俺は歯噛みする。ここ、一番街上空にはシールドが展開されていた。一番街を道なりに進むと大門に出れるのだが空を飛べない。
地上を走るより、空を飛んだ方が被弾は避けられる。
シールドの発生源は一番街の端、次の街の境にあると思う。
1個1個破壊するか?それだと発生源を的確に見つけなければミサイルをあてれない。ましてや地中に隠されていたなら時間がかかる。
空はダメだ…機体のアシストを持ってしても回避運動は俺の勘にかけるしかない。
俺はうだうだ考えながら直進している。
「ウル!?外壁が光った!」
何事かと思い外壁を見る。そこには無数の砲台が並んでおりこちらを狙いすます。50m弱の機体など動く的だ。
大門まではまだ遠い。
「賭けに出るぞ!レイヴン、ブースター展開!」
【はい…ブースター展開】
「シールド出して走ってもいいんじゃない?」
エイラが提案する
「城の砲台がいつ発射されるか分からない以上、シールドエネルギーは温存したい」
「そういう事ね。私の逆行を使えばいいじゃん?」
「そんな簡単に発動できるものなのか?」
「連発は出来ないけど、小さな範囲ならそこまで消耗しないから大丈夫。」
エイラが顎に親指を当て考える
「それにね?レイヴンの魔力供給量をバカにしちゃいかんよ」
自慢げに言う
【ええ、現在のエネルギー消耗率は3%程。十分補えます。】
「時速200km程度で走ってるんだぞ?この巨体で」
俺は驚きのあまり声を荒らげる
「そのジソクってのが理解出来ないけど、早いのは確かね」
エイラがモニターを見つつ言った
「それよりブースターは?」
【展開完了…何時でもどうぞ】
「よし、エイラ。きちんと口は閉じとけよ?」
「え?、えぇ…わかった」
エイラの表情がハムスターの顔みたいにキョトンとした
「エンジン点火!!」
同時に座席に押し付けられるような圧力が全身にかかる
スピードメーターの数字がどんどん増えていく、数秒後にはエラー表示に変わった。
後部座席のエイラは体を丸くして縮こまる。体は震えていた。
外壁の砲撃が始まったようだが初撃は完全に外れた。
外れたというより、あてれないのが妥当な表現である。
機体が少し宙に浮き低空飛行になり、地面を滑るように移動する。大通り周辺の家屋が風圧で崩壊した。大門との距離がどんどん近くなる。
「行くぞぉ!衝撃に備えろ!」
俺の声は轟音でかき消されエイラ達に聞こえたかわからない
「貫け!」
機体をシールドで包む。それはまるで1発の弾丸だ。
そして大門に衝突した。
帝都 一番街 大門
am.8:35
俺たちは衝突した衝撃で気を失ってしたらしい。
レイヴンの警告が鳴り止まない。操縦席の赤色のライトが俺たちを照らす。
「くそ、どうなってんだ……」
耳鳴りが止まらず、頭を抱えて起きる
「ウル…ウル……痛い」
後部座席でエイラが呟く、どうやら衝撃の勢いでベルトが壊れて俺が吹き飛ばされたようだ。
エイラが俺の体をしっかりと捕まえてくれたおかげで死なずに済んだ。エイラの体は細く、掴んでいた部分から血が滲み出していた。
「すまないっ!!」
慌てて、体を退けてエイラの無事を確認する。
腕はだらんと垂れて、首がすわらず座席にもたれている。
包帯がはだけ素肌があらわになる。火傷の傷が跡になって残り、褐色の体に焦げが着いたように見える。翡翠の瞳だけがこちらを向いていた。
俺が息を飲んで見ていると、彼女の耳が動いた。
「そんな、まじまじと見るなよ……大丈夫。生きてる。」
「ごめんね…逆行、間に合わなかった…君を助けるので精一杯でさ。」
口を動かす度に血が垂れる
「あぁ、本当に申し訳ない…あとは任せてくれ。」
俺は正面モニターに向き直る
「レイヴン!損害は?」
【ブースターエンジンが破壊されたもよう…大門の破壊と同時に巨砲のエネルギー増大を確認した。砲撃は大門到着を見計らって攻撃されました。その衝撃で一時的に一番街周囲のシールドが解除、フライトユニットはまだ生きています。】
まだ、まだ反撃の手立ては残ってる…逆行はできるだけ使いたくない。背中の可変翼に少々ダメージがあるみたいだがそこはパイロットの腕しだいでなんとか補正できる。
その時、大門付近の外壁から声が聞こえた。
「ごきげんよう、逃亡者諸君。滅龍砲の味は堪能して頂けたかな?こちらからはよく見えなくてね。とても残念だ。そして諸君には悪い知らせがある。今回の攻撃に使用した滅龍砲は1門だ。あとは理解出来るね?…アハッアハッアハハッハハハハハ!!!」
「くそ野郎がァァァ!!」
操縦根を傾け、Arbiterを旋回させる。攻撃可能な砲は後、4門ある。幸い外壁からの攻撃は死角なためあたってない。
このまま、大門を越え帝都を脱出できる。しかしあの滅龍砲の射程がどのくらいか分からない以上、むやみに飛んで逃げてもただの的。
今はブースターも使えない。
くそっ、どうしたらいい…ミサイルもレーザーも城まで届かない。
また放送が鳴る
「撃ちマース!はいドーン!」
その声が聞こえる途中に城の砲門が光る
【熱源上昇中…脅威度80 危険値です】
「わかってる!」
俺は機体を飛翔させ大門を抜ける。そのまま外壁をつたい上昇。
【来ます!】
砲門内部に稲妻が走り紫色に赤が混ざった閃光が走る。
砲が光ったと同時に外壁に着弾する。外壁が一瞬にして崩壊し壁に巨大な穴ができる。あとから轟音が響き、操縦席が揺れる。
外壁を登りきった機体には直撃しなかったが外壁の瓦礫が可変翼に当たる。そして左翼が破壊される。
そのまま機体は制御を失い落ちる。
「衝撃吸収!いくぞ!…………スラスター点火!今!」
落下しながら地面との距離を目測で確認し、腰と足にあるスラスターを点火させた。
その後地面と機体が衝突
「ぐぁぁ!いってぇ……」
「ひぃっ…嫌っ!」
2人は恐怖で体が固まり受け身が取れなかった
地面との衝撃は多少軽減したものの、機体の両足はひしゃげて折れた。
俺は衝撃で操縦席の天井にぶつかりモニターの一部が割れる。
痛みに構わず、エイラの無事を確認する。
首に手を当て脈を測る。
脈拍は弱いがまだ息がある、しかし呼びかけても返事がない。
うなだれた顔を持ち上げる。
「やめてくれ、もう、誰も失いたくない……」
エイラを抱きしめ嘆く。
「ハハッ ゲホゴホ………苦しい。」
彼女は薄く笑う。
「ねぇ、何年…逆行すればいい…?あと何年?さぁ、はやく」
彼女の瞳が緑に光る
外壁は崩れ、大門はもう跡形もない。
落ちる瓦礫が遅く感じる、遠くには光る3つの砲が見える。
彼女の瞳が更に輝く。
「1年と3ヶ月……戻してくれ……」
俺はエイラの肩を掴み願った。
「そんな、悲しい顔をするな。まだ死ぬわけじゃない。ここからが反撃だ、奴隷は王に勝つのだろう?」
彼女は勝ち誇ったような顔をする。
「君のチョイスが間違ってないことを祈る……逆行。」
。を所々つけるようにしました
読みにくい解りづらいなどありましたら意見などくださると助かります。