後編
その噂とは、
ドラコンクエスト10に、おいて、バトル中には、パーティの誰かが死亡することがあるのだが、ラスボスとのバトルに勝つには、そのラスボスとのバトル中に最低2名の死亡が起きないと、ラスボスは決して倒せない設定に、なっている、
というものだった。
僕は、身に覚えがあった。
ラスボスとのバトルは、もちろん、今まで、やってきたドラコンクエスト10のプレイ中、全てのバトルにおいて、パーティの誰か一人が死んでしまったらセーブせずにリセットボタンを押して再プレイしていた。
つまり、僕の、冒険の書といわれるゲーム上の記録の中では、僕が冒険してきたパーティキャラクターは誰とて一度も今まで、死んだことのないように、なっている、のに違いなかった。
僕の記憶が、確かならば…。
その噂を聞いた日の晩、
帰宅した僕に、姉が駆け寄ってきて、
「ドラコンクエスト10、クリア出来そう?」と、目を爛々にして聞いてきたので、
僕は、無言で、そんな姉の横を足早に抜け、マイルームに行くと、ゲーム機本体に刺さっているトラコンクエスト10のカセットを抜き、それを手に持ったまま、姉のところに、また走り寄り、
「そんなに、このゲームのエンディングが見たいなら、自分で、やりなよ。」と言うと、姉の手に強引に僕の手にあった、そのカセットを握らせて、
僕は、また足早に自分の部屋へと向かうのだった。
【終わり】




