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記憶の破壊者  作者: 天雨鳥
第一章 脱獄物語
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第一章 008 作戦会議

「なるほど、な。それで命令通り動くことしかできなかったファズがいかにも高そうな服を着た俺を見つけてあいつらのところに持っていったってところか?」


 導はファズから聞いた話からそう考える。なんともひどい話である。


「いや、正確に言えば多少違う。俺はあいつらに9年間使われてきている。その間もクベラとミフラが無事だと信じて悪事に手を染めてたんだ。だが今日、お前のことを報告したときにあのボルドーからこれが最後の仕事だって言われてな。かえって来るんならっと思ってやったんだけどな。これがこんな様だ。すまねぇよ」


「いや、もうそこはいいんだよ。それよりお前9年間って言ったか?」


「ああそうだ。9年だ」


「9年ってお前、、、よくお巡りさんに捕まらなかったな」


 そうなのだ。ファズは9年間憲兵の捜査を掻い潜り、犯罪組織に手を貸していたのだ。普通は捕まっていて当然のところを捕まらずにやってこれていたのだ。


「見つかった場合は捕らえるように言われててな。俺より強いようなやつなんてなかなかいないもんだから難なくこなせていたって訳だ。まあ結果的にはこんな形で捕まってしまったがな」


「おい…そんな強いファズを呆気なく倒したその長身の男…超やばくねぇか?」


 基本本気を出さずとも、勝てると言っているファズ。そんなファズが本気をだしたとしても敵うことができなかったという長身の男は、とてつもなく強いということになる。


「せめて、あのときの力が出ればいいんだがな…」


 ファズが6歳のとき、初めてクベラと出会った時に発動したまさに破壊力の権化といっても過言ではない力。あの力は対象の相手に力の限りを放つような狂暴な技。しかし、その力はファズが6歳のときに一回使って以降、一度も使えたことがないのだ。


「まぁ無い物ねだりしてもしゃあないよ。じゃあファズの情報はここら辺にしといてセリアちゃん。よろしく頼むよ」


「わかったわ」


 そう言ってこれまで黙っていたセリアが口を開く。


「私はファズさんみたいに素性をあかすつもりはないわ。私が…この組織について知っていることを話すわ。小太りの男に頭に深い傷を負った男。そして長身の男。この三人の特徴が一致する組織はたぶん一つしかない。蒼のクラネイル。人身売買を専門とした組織よ。でも本当時この組織が人身売買の専門かどうかはわからない。組織に関する情報がほとんどないのよ。不思議なことにね。わかっていることは三人の特徴。小太りの男は主に魔操を使うそうよ。それもかなりの腕だとか。次に頭に深い傷を負った男…そいつはよくわからないわ。そして三人目の長身の男。こいつははっきり言って桁違いの化け物だわ。今ファズさんがここでこうして息をしているのが信じられないくらいよ。こいつだけは別格…この組織を潰すのなら避けては通れない敵だわ。武器はさっきのファズさんの話にも出てきたように剣を使うそうよ。ただ、最後言ってた技に関しては全くわからないわ。どっちにしても謎が多い組織よ」


「結構いろんなこと知ってやがるな。さすがにそこまで詳しいとは思わなかったぜ。しっかしその長身の男。そこまで強いやつとファズが渡り合えていただけでもスゲーな」


 導はセリアの知っていた情報の多さに驚く。ファズの情報はなぜこんなことをしたのかの理由だった分、セリアがそこまで詳しいとは思わなかったからだ。


「まあ職業柄ね。それよりもどうするの?今の話を聞いた限りじゃあなたは、むの──なにも知らないようだから。そう簡単にここを抜け出せるとは思わないわよ?しかも私たちは全員今日ここに入ったばっかりでこの中での生活もまだろくにわかっていない」


「待ってセリアちゃん。今俺のこと無能って言いかけなかった?傷つくよ?」


「きっと気のせいよ。そんなことよりどうするのって聞いてるでしょ?」


 だいぶ傷ついた導に対し、セリアは苛立ったように答える。


「いやまあそうだな。俺の考えとしてはこうだ。セリアちゃんが言ってたことか考えると俺らは奴隷──いや商品だろ。商品を出荷するときってのはどんな状態がベストだと思う、ファズ」


「そりゃ最高な状態だろ──!?そういうことか!」


「そういうことだ。今俺らはナンバーを体に埋め込まれただけで体には傷も汚れもたくさんある。もちろん精神状態もだ。不安定な状態で送り出すような組織が謎深いとかいうのは考えづらい。出荷する日にちは決まっていたとしてもせいぜい早くて一週間くらいだ。その間は絶対にあいつらは俺らのことを出荷できない。その裏をかくんだ。その期間の間にここのことについて各自調べるんだ」


「そういうことね。たしかに考えてみればそうだわ」


「だとしたら必要な情報はこの牢獄の配置と俺らが使える武器だな。シルベ」


「そういうこった。俺は武器は扱えない。それならファズがその担当がいいな」


 そう言って導はファズを指差す。その判断に疑問をもちセリアが導に尋ねる。


「どうして私じゃダメなの?」


「女の子に危険な真似はさせたくないって言えたらカッコいいんだろうけどそうじゃないさ。セリアちゃん、さっき職業柄って言っただろ?情報に関する職業なら記憶力もいいかと思ってさ」


 導の考えではセリアは情報屋かそれに近い存在ということになっている。その考えを素直にセリアに伝える。


「あなた…なかなか侮れないわね。いいわ。私はシルベと一緒に情報捜査の協力をするよ」


 そう言ってセリアも了承する。


「じゃあそういうことだ。みんな頑張るぞ。ここから抜け出すためになぁ」


 ファズが最後にそう言って作戦会議は終了となった。

 そしてその数分後。


「よぉみんな元気かー?早速外に出てもらうぞぉ?」


 小太りの男ボルドーが盛大に元気よく導たちの前に姿を現した。その顔は悪意に満ちていながらも笑っていた。



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