第一章 004 熱い熱い熱い熱い熱い
今回はいつもに比べて短いです。
ーーあっの性悪野郎め…。こうなることをわかっていやがったのか。しかもあのハサミもねぇ…。
心の中でエルナリオに対して悪態をつく。しかしそうなってしまったのは導が悪いところもある。話を最後まで聞かず途中で投げ出してしまったのだ。でも吐き気を促したのはエルナリオだ。エルナリオが悪いということにしておく。
こんなことを考えている導だが今彼には余裕がない。目の前にはファズの記憶に出てきた男のうちの一人、小太りの男がいるのだ。そして手足を縛られていて身動きもとれない状態だ。
「お前シルベっていうんだな。やっぱ聞きなれねぇ名前だ。そしてその生地のいい服と鞄の中に入っていた大量の紙。お前グダラスのボンボンか?それなら金もたくさんとれそうだ」
ぞっとする。グダラスは多分国の名前だろうが問題はそのあとの発言だ。ボンボン、つまり金持ちの息子かなにかと勘違いされている。口は自由だが、変な発言で怒らせてしまう可能性だって十分にある。ここは慎重にいかなければならない。
そんな導の心配をよそに小太りの男はナイフを取り出す。
「俺はボルドーだ。少しの間だがよろしくなシルベ」
「ボルドーさんナイフをしまってもらっても?」
「いいわけねえだろ。足枷は外す。黙って歩け」
そう言うなりボルドーは導の足枷を外した。これで足は自由で逃げようと思えば逃げれるようになった。しかし、ここは敵のアジト。何人いるかもわからないのに逃げるのはいい手ではない。そう判断し、素直に従うようにした。
ーーあのエルナリオの発言から考えると俺の能力は『記憶干渉』だけ。他の能力は獲得してなさそうだしな。
そんなことを悠長に考えていたらボルドーから「止まれ」と言われて止まる。そこはさっきの場所と比べて異様に暑く、冬から夏に一気に変わったように感じた。
「やれ」
いきなりボルドーが低い声でそう言う。
「何を!?」
その直後ボルドーの後ろから3人の男が出てくる。その男たちは導を乱暴につかむとその服を脱がせ始めた。
「こいつのぉ服もだいぶ上等なもんだ売れば高くつく。丁寧に扱えよ」
「やめろよ!」
そう言って抵抗しようとする。そんな導にボルドーはナイフを首筋につける。冷たい感触が首から伝わる。
「あんま調子に乗らない方がいいぜ?」
全身鳥肌がたつ。全神経が導に警告している。下手に動くと危険だということを。
結局身ぐるみはがされパンツ1枚にされた導。そんな導を男たちはまだ離そうとしない。見るとなにやら道具を持ってきているみたいだ。それは異常なほどの熱気を放っている。導の記憶が正しければそれは、
「烙、印?」
「おぉよく知ってんじゃねぇか。お前は今日からシルベじゃなくCode:0467だ。魔力を使うのはもったいないんで古典的な方法をとるぜ?」
「ぐぁっ!あちぃぃ!」
首に押された烙印はマグマのごとく全身を焦がすような勢いで導の体を襲う。
ーー熱い熱い熱い熱い熱い
「ぐぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁぁ!」
「フハハハハハハァ」
狭い空間に叫び声と低い笑い声がこだまする。
導のもと着ていた制服は回収され、ボロボロの服を着させられる。そして足には鉄球を。手には手錠をつけられると導はまたつれていかれた。
ーー何が輝かしい異世界生活だ…。こんな話聞ぃてねぇよ。
ものに溢れかえった家で暮らしていた導は今だかつて経験をしたことがないような痛みを前にして精神が崩壊しかけていた。