第一章 011 ゲームスタート
起きて食べて話して寝る。起きて食べて話して寝る。というような生活が6日間続いた。
そのなかでわかったことがある。この奴隷牢には特殊な魔操紋がかけられており、なかにいる人が魔操を使おうとしてもそれは使えなくなる。だが、ステータスパネルは使えるらしく、自分のステータスは見ることができた。
一連の騒動によってもわかったことがいくつかあった。
まず、牢の外では魔操を使うことができる。これはボルドーがパネルを操作し権限がボルドーに移った際、スキャボドレインという技を放ったことから推測できる。
そして、この部屋には上物しかいないと言うこと。これに関しては、前々からそう感じていた通りだった。思った以上に飯はうまかったし、対応も悪くはなかった。逆によくもなかったが。
そしてこれはセリアの指摘で気づいたことだが、この廊下には魔力があるのはあるが、制限されている可能性があると言うこと。
ボルドーは瞬間移動的なのりで牢の前にいきなり現れた。ポータブルモビエントとかいうので発動するらしいが、これは自分の体内にある魔力に加えて、空気中の魔力も使う魔操らしい。それには色々理由があるみたいだが、詳しくはわからないそうだ。
だけど帰りはわざわざ歩いて行った。ボルドー自体の魔力が低いとは考えづらい。そうなれば、この牢の外の空気中の魔力の量が少ないのではないかという仮定にいたった。
そうすればスキャボドレインを使ったのも頷ける。スキャボドレインにはなんでも魔操をくらった対象者の生命力でもある魔力も奪うそうだ。ふざけた能力である。消耗した魔力をついでに補充でもしておこうとでも思ったのではないか、と勝手に予想しておく。
そしてそれらとは別に俺個人でわかったことはあのハサミは意外と有能だということくらいか。消えたと思っていたらどうやら自分の体内にあるらしい。
一回試しに出てこいと念じてみたらハサミの形状で現れ、俺の意思によって形を変えるようだ。
あどういう原理かはしらないが、作りはとてもすごいと思う。
さて、こんなところか。
とりあえずこの6日間の間にわかったことを確認する。
少し忘れていることがあるかと思っていたが、思い出そうと思えば思い出すことができる。これも能力かもしれない。
「よ、シルベ。朝が早いな。まぁ朝かどうかもわからないけどな」
「すまん起こしちまったか?」
「いや、体が早く起きちまったんだよ。今日だから、か。お前もそんなとこか?」
「そりゃな。今日俺らは出荷されるかもしれないんだからよ」
どうやらファズも今日は朝早くに目が覚めたらしい。
「シルベよ。悪かったな。無関係のお前まで巻き込んじまって…」
「俺に許せるほどの心の広さはない。だから許さん」
「とうぜんだよ、な」
「だからといってそれはしょうがないことだってことくらいはわかる。許しはしないけどファズのことは恨まん」
「そうか」
この物語ももとはと言えばこのファズが俺のことを襲って捕まったときから始まっている。この異世界で最初に知り合った人物はファズだし、事件に巻き込んでくれやがったのもこのファズである。
「シルベ。お前まだ諦めてないんだろ?」
「…当たり前だ。こんなところさっさとぶっ壊して自由になるさ」
「シルベやっぱりなにか…。いや、そんなことはどうでもいい。勝機はあるのか?はっきりいってただの力だけでねじ伏せるとかなら奴隷対象の魔操をされて終わりだと思うぞ?」
「魔操は俺が無力化する。ただし奴隷を対象とするものくらいしか無理かもしれないが。そこは…任せろ」
とは言うものの、一回も能力を使ったことがない。
ぶっつけ本番だ。
結果がどうなるかなんてわからない。
だが、やらなければならない。
早くここを壊したい。そう思うだけで俺は力が湧いてくる。その無尽蔵の力は体全体を支配していく感覚がある。
…これも破壊者の能力か。正気が保てなくなったらとんでもないことになりそうだ。
「ああ。俺は…自分の妻と娘が生きていると信じている。だが、ここにはいないみたいだ。それならもうあいつらに付き合う必要はない。だから俺もシルベの計画に乗っからせてもらうぜ?」
「最初からそのつもりだよ」
「シルベ、ファズもう起きてたのね」
「おはようセリア。君にもあとで話そうと思ってることがあるんだ」
セリアの顔がなにかを察したような顔になる。
こいつも気づいてたのか。
「わかってる。ここから逃げ出すんでしょ?相当難しいことだと思うけど…ただで死ぬつもりはない。どうせなら抗って死にたいわ。私もこの計画に乗った」
なんというか…セリアが一番たくましいような気がしてきた。
嫌がるかと思ったら案外簡単にオーケーしてくれたし、どうせなら抗って死にたいとかカッコよすぎるだろ。
「それで計画はどういうのなんだ?」
「正直この計画は博打だ。全員に結構な責任がある。だがこれ以外は思い付かなかったからこれで許せ」
「完璧にこなせばいいだけの話です」
「やってやろうじゃねぇか」
「俺のたてた計画は…………………………………………………………………………」
そして時は過ぎた。
目の前に再度突如としてボルドーが現れる。
そして鍵が開けられる。
「ゲームスタートだ」
その掛け声と同時に俺たちの作戦は実行にうつされた。




