対話
星越者達は再び招集された。
前回よりも数は減っていた。
前回の会談では犠牲者が出た上に『宇宙人』達の力を思い知らされたのだ。
当然の結果といえる。
結局のところ集まったのはいつもの見知った連中だった。
リーガスが言った。
「人数、大分減ったっすね」
「しょうがなかろう!この間の会談ではあのような結果になったのだ!怖気づく者が出ても仕方あるまい!」
「そもそも動けたのはトウゴと、マスターグレイだけでしたからね。これ以上犠牲が出るのも良くはないでしょう」
「自信のある者の言葉だな、キジヌよ!そろそろ対策本部委員長の話が始まるみたいだぞ!」
マスターグレイの言葉で一同は正面に向いた。壇上にはギルモアが立っていた。
「再びお集まりいただきありがとうございます。前回は我々の至らぬところがあったせいで犠牲者を出してしまった事をお詫び申し上げます。」
「随分しおらしいじゃねえかぁ」
ギリアンが小声で茶化した。ギルモアの言葉は続いた。
「さて今回お集まり頂いたのは『宇宙人』達の探索の件にございます。前回の件を踏まえて現在宇宙人たちの捜索を行っております。
彼らは恐らく船を奪って逃走していると考えられます。万が一彼らを発見した際は我々対策本部にへとご連絡ください。以上で今回の会議を終了させていただきます」
ギルモアは頭を下げて後段した。ギリアンが口を開いた。
「何だよそれだけかよぉ。これじゃぁ何のために来たのか分からねえぜぇ」
「ごもっともっすね。まるでもう関わるなって感じでしたっすね」
「あちらも対応に困っとるんだろう!いつ銀河範囲での攻撃をされるか判らないしな!」
「とにかく今回は解散みたいですし、帰りましょうか」
なんの進展も無く一同は解散した。
「それでどうするんだ?」
グレートジェントルマン号のブリッジでいつもの様にスリーが言った。
「うむ……しばらくは普通に仕事をこなそうと思う」
「どうせあちらから要請が来るかは怪しいんだろう?それが賢明さね」
「それじゃいつものとこに行きまショウカ」
グレートジェントルマン号はいつもの場所つまり中央ギルド領域四十九番港へと進路を向けた。
「それでいい仕事は無いかい?」
『マックスボビー』のカウンター席でキジヌとスリーが飲みながらボビーに聞いた。
ボビーは体を震わせながら答えた。
「護衛の仕事でいいのがあるよ。報酬は百万ダール」
「本当かい?随分羽振りの良い仕事だな。けどその仕事受けようかな」
「大丈夫かよ?そういう仕事って大抵ろくなことにならねぇだろ」
「だからと言って退屈な仕事を受けたくはあるまい?」
「……やっぱあんた最近おかしいぜ。この間の会談から変な感じだ」
「……そんな事はないさ。さあ早速仕事に赴こうか」
そう言うとキジヌは立ち上がり歩き始めた。
スリーは釈然としない顔でそれに続いた。
キジヌ達は中央ギルド領域内デルドラ銀河内惑星シジマの中のテルトという村で、依頼主と待ち合わせる算段だった。
予定時間の十分前にキジヌ達は目的地についていた。
依頼主は二人組という事だった。
暫く待っていると不意に声を掛けられた。
「貴方がキジヌ=サルモモールさんですか」
「あ、はい私が……」
男の声に振り向くとキジヌは驚愕した。
そこに居たのはラング-スとドーグス、二人の『宇宙人』だった。
「……私がキジヌ=サルモモールです」
キジヌは対応に困ったがとりあえず知らない体で答えた。
ラングース達はキジヌに気が付いていないようだった。
「私はラング-ス。こちらがドーグスです。今回はよろしくお願いします」
「あ、はいこちらこそよろしくお願いします」
挨拶もそこそこに一同はグレートジェントルマン号に搭乗した。
「部屋はこちらをご利用くだサイ」
アビゲイルに案内されラング-スとドーグスは艦を歩き回っていた。
その間もキジヌは真実を打ち明けるかどうか悩んでいた。
そんなキジヌにスリーは心配そうに聞いた。
「さっきから様子がおかしいが大丈夫か?仕事の方は俺たちで何とかするからボスは休んでたらどう
だ?」
「……いや、気持ちだけ頂くよ」
悩めば悩むほど答えは出てこない。
思えば会談の時から自分は悩んでいたように思う。
果たしてこのままで良いのだろうか。
……いくら考えても答えは出なかった。
考え続けているとあっという間に就寝時間になったが、やはり眠れ無かった。
どうせ眠れないならと、キジヌは艦内を散歩することにした。
歩いていると窓のある廊下にたどり着いた。
そしてそこにはラング-スが立っていた。
キジヌはラング-スに声を掛けた。
「……眠れないのですか?」
「ええ、船旅には慣れていなくて。キジヌさんもですか?」
「似たようなものです。この手の仕事をしていると悩みが多くて」
「良かったら私に打ち明けてください。愚痴を聞くくらいなら私にもできますから」
ラング-スのその言葉にキジヌは悩んだが、とうとう真実を打ち明けることにした。
「……私はあの会談に居た星越者の一人です」
ラングースは一瞬目を見開くと廊下の気温が少し下がった。
窓には霜が降りていた。
しかし直ぐに能力を解除したらしい。
あっという間に霜が消えた。
「何故このタイミングで打ち明けたのですか?」
ラングースは疑問をぶつけた。
少し間を開けてキジヌは答えた。
「……何故だかは私にも分からないのです。そもそもあなたたちに対してどう対応すればいいかもわからない。」
それは包み隠さずの真実の言葉だった。
「それは私も答えようがありませんね。対策本部とやらに連絡をすれば良いのでは?」
「……それは正直したくありません。私は知りたいのです。何故今『彼』の封印を解きたいのですか?今の世界は『宇宙人』に対して親身なはずです。『彼』の封印を解けばそれすらも怪しくなり、最悪戦争を引き起こす可能性だってある。あなたたちだってそれは分かっているはずだ。」
「時が近づいているからです。間もなくこの宇宙は恐ろしい災禍に見舞われる。その時に彼の力が必要なのです」
ラングースの言葉でキジヌは師匠であるレンジュウロウの言葉を思いだしていた。
「一体この宇宙に何が起きるんですか」
「それは私にも詳しくは分かりません。ただ使命として『彼』の復活を成さねばならないのです」
そう言うとラングースは背を向けて言った。
「ところで依頼は継続で良いのですか?あなたが望むなら引き下げますが」
「……依頼はどんなものであれ受けましょう。安心してください」
「そうですか。ありがとうございます」
そう言うとラングースは歩き始めた。
それを止めるようにキジヌは言った。
「それともう一つ。フリッグ氏の件は本当に残念でした」
「……私もそう思ってますよ」
それからはラングースは歩みを止めることは無かった。
強化ガラス越しの星を眺めながらキジヌは溜息を一つついた。




