破談
一週間後。会談は再び行われた。
場所も人も前回とおなじだった。
最初に口を開いたのは、対策本部委員長のギルモアだった。
「再びお集まりいただきありがとうございます」
「ご機嫌伺のあいさつなんて要らねえよ。早く結論を言え」
「……では結論を言わせていただきます。今回のお三方の要求は……」
一同は一部を除いて息を飲んだ。ギルモアは続けた。
「お三方のの要求は聞き入れられないという事でした。」
「交渉決裂だなあ」
室温が上がった。
フレッグは笑いながら立ち上がった。
しかしこの部屋で一番速く動いたのは彼では無かった。
トウゴ=ジュサンだった。
トウゴはフレッグの首を掴み床に叩き付けた。
火蓋は切って落とされた。
ギルモア、ジェスカ、リッキーの三人は専属の星越者に連れられて、部屋を後にした。
トウゴがフレッグの頭を砕くよりも速く赤銅色の大男の体が、青白く輝いた。
それは太陽をはるかにに超える温度の白い炎だった。
余波で部屋に居た星越者が三人即死した。
炎に一番近くに居たトウゴは、炎をものともせずにフレッグの頭を砕いた。
フレッグは絶命した。
彼の死に、今まで冷静だったラングースの表情が崩れた。
ラングースは氷の鎧を纏ってドーグスを抱え跳躍し壁を破壊して部屋から離脱した。
同時に氷塊を一瞬で形成し、会場を破壊した。
その攻撃で星越者二人死んだ。
氷塊を砕いて、マスターグレイが飛び出して来た。
マスターグレイは巨大な球形状のレンキ形成し、ラングースたちへ放った。
放たれたレンキは巨大な手によって防がれた。
それはドーグスが作り出した惑星よりも大きな人形の手の甲だった。
マスターグレイは眼前の巨大な手を蹴りあげた。
既にそこには二人の姿は無かった。
マスターグレイは舌打ちをした。
後からキジヌ達が駆け付けた。
「ちぃ!取り逃がしたわい!」
「流石ですマスターグレイ。我々は自分の身を守るので精一杯でした」
「若いころだったら仕留めることも出来たがのう!年には勝てんわい!皆まだ油断するなよ!奴らの射程は銀河クラスだ!恐らくこのまま逃げるだろうが、警戒を怠るでないぞ!」
その言葉は真実だった。彼らは実際に銀河に影響を及ぼしていたのだ。皆戦闘状態だった。
「仕留められたのは一人だけだったか」
返り血を浴びたままの体で、トウゴは屋外に出てきた。
「しかしこのまま逃げられては不味いぞ。奴らの火力は恐ろしいものがある。今回はうまくいったが次に同じように出来る保障は無いぞ」
布で返り血を拭いながらトウゴは言った。キジヌが苦い顔で答えた。
「こちらにも被害者が出た。結果は上々とは言えないな」
「で、これからどうするんだぁ、お偉いさんは逃げちまったぜぇ」
ギリアンの言葉にマスターグレイは言った。
「また後程連絡が来るだろう!それまでは各々待機だな!」
「奴の死体はどうするんだ?」
「恐らく上の連中が回収するだろう。そのままで放置していても問題はないだろう」
「それでは各人警戒をしながら解散!」
そういうことで、それぞれ帰って行った。
命からがら逃げた二人は、宇宙を駆けていた。ラングースに抱えられたドーグスが口を開いた。
「フレッグ……やられちゃった……」
「無傷で済むとは思ってもいませんでしたが、トウゴ=ジュサンがここまでやるとは……想定外です」
ラングースの顔は苦渋に満ちていた。
「これから……どうするの?」
「いずれにせよ『彼』の所在は分かっています。今回の会談はあくまでもこちらからの礼儀としての会談でした。もともと彼らに是が否をゆだねたのは建前です。我々で『彼』封印を解く方法を探すとしましょう。それにはまず船が必要ですね」
そう言うとラングースは更に早く宇宙を駆けた。
「随分大変だったらしいな」
グレートジェントルマン号のミーティングルームでスリーはキジヌに言った。キジヌは苦い顔で答えた。
「あぁ、私は何も出来なかったよ。ほとんどがトウゴとマスターグレイが片を付けてしまったよ」
「けどもしかしたらまた連絡が来るんだろ?そしたらどうするんだい?」
グランマの問いにキジヌはうなった。正直これ以上この件に関わるかどうかは決めかねていた。
「まぁとりあえず、暫くは休んでた方が良いんじゃないか?仕事は俺達でまわしとくぜ?」
「うむ……」
キジヌにしては珍しく、すっきりしない返事だった。
相当悩んでいるという事が見て取れた。スリーは臆せずバッサリと聞いた。
「何か悩んでいるのか?」
「うむ……彼らは一体どうしたら良いのだろうか」
「どういうことだ?」
「彼らに対してどう接すればいいのかが分からないのだ」
「……つまりどういうことだ?」
正直のところキジヌ自身も今の自分の胸中が判らないでいた。
どれだけ考えても答えが出なかった。




