刃と盾
キジヌ一行はN・B・P・C領域内デュメイ銀河惑星カルカラのアヌトという小さな村に来ていた。
アヌトと呼ばれる神を信仰し、主に農作物を作り近くの町で売りながら生計を立てている村だった。
そんな村に目を付けたのが宇宙海賊ボルボールだった。
海賊たちは金と若い女と奴隷を要求し、抵抗した村人を殺していった。
村に残されたのは子供と老人だけだった。
そんな状態で五十万ダールを準備したのである。
相当な苦労があったことが想像できた。
キジヌ達が来るなり老人達は涙を流していた。
「我々が来たからにはもう大丈夫です。海賊達は何処に居るかご存知ですか」
「奴らは隣町のエルドアを縄張りとしています。エルドアも元は奇麗な町でしたしかし奴らが来てからは荒れた街になってしまいました」
「奴らの規模は分かるかい?」
「いえ……この街に来たのは三十人程度でしたがそれ以上は……」
「それで充分だねそれじゃあ行くとするかい」
「よろしくお願いします。娘たちを助け出してください」
「あの村、相当ひどい目にあったみたいですね」
一同は一旦、宇宙に待機させていたグレートジェントルマン号戻ってきていた。
艦内のブリッジで作戦を練っていた。
「あの手の村は珍しくないさ。今回は中央ギルドに依頼を出していたが、それすらも出来ない人達もいる。今回の依頼人はまだ運がいい方さ」
純一郎の言葉にキジヌが答えた。
純一郎の胸中はやるせない気持ちで一杯になった。
「それじゃあ早速作戦タイムと行こうか」
「作戦っつても俺とアビーが正面から戦闘装甲服で突撃かまして、グランマとボスで反対側から奇襲をか
ますいつもので良いんじゃねぇか?」
「今回は人質もいる。彼らの安全を確保するのが先決となるだろう」
「それじゃあ、あたしとキジヌで奇襲をかけて人質の安否を確認してから合図を出して、スリーとアビーが正面から突撃という事で良いんじゃないかい?」
「そちらの方が良さそうデスネ」
四人の作戦会議に純一郎が手と声をあげた。
「……あの、俺にも行かせてください」
キジヌが心配そうに返した。
「……今回は危険すぎる。艦で待機していた方が……」
「ずっと戦闘装甲服の訓練は練習機でしていました。俺にも手伝わせて下さい」
「……スリーはどう思う?君が一番訓練に付き合っていただろう」
「いいんじゃねえか?装甲服も三機あるし、そろそろ実戦に出てもいいころだろうよ」
「……スリーが言うなら大丈夫だろう。ただ危険な仕事には違いないし、実戦と訓練は別物だ。今回はスリーとアビーの後方支援に回ってもらう。それでよいかね?」
「……はい!頑張ります!よろしくお願いします!」
作戦会議は終わった。一同は再び惑星カルカラに降りて行った。
キジヌとグランマは海賊たちの住処であるエルドアに潜入していた。
エルドアには巨大な城があったが町に活気は無かった。
人はそれなりに居たが皆何かに怯えていた。
二人は酒場に行くことにした。
海賊達で賑わっていた。
キジヌとグランマは海賊たちの視線を無視して、カウンター席に座った。
怯えたマスターがキジヌ達に近づいてきて、言った。
「あんた等悪いことは言わねえ、早くこの街から出て行きな」
「そうしたいのは山々なんだけどねぇ、生憎仕事なのさ」
「一体どんな仕事何だいデカい婆さんよ」
テーブルから一人の男がグランマに近づいてきた。
男は大柄で顔は口髭で埋まっていた。
男がグランマの肩を掴むと男の体がくるりと回転し、頭から床に落ちた。
店に居た三十人程いた荒くれもの達全員がが直ぐに立ち上がりそれぞれ得物を取り出した。
「全く、貴方は穏便に済ませられないのかね」
キジヌのぼやきで戦いは始まった。
ナイフを一突きを躱し男の腹に肘を叩き込みながらグランマが答えた。
「これでも穏便なほうさね。それにどいつも今日中には伸しちまうんだ。だったら早い方が良いさね」
キジヌはレンキを拳に溜め五人程をまとめて吹き飛ばした。
グランマは一人の男の足を掴み振り回しながら海賊達を薙ぎ払っていった。
戦闘は五分もかからず終わった。一人を残して他の男たちは全て気絶していた。
「さて貴公を一人残したのは何故か分かるかね」
「頼む、殺さないでくれ!なんでもしゃべるから!」
「話が早くて助かるね。因みにこちらは殺すつもりは無いから安心したまえ。」
「痛い目にはあってもらうけどね」
「さて、君たちは全部で何人いるのかね」
「俺たち含めて百八人だ!残りは皆城で酒を飲んでる!」
「ホントかい、嘘だったら……」
「ホントだ!俺たちは見張り役だったんだ!けどみなでさぼって酒を飲んでいたんだ!」
「見張りが残っている可能性があるな」
「本当の事だ!見張りは全員」
男が言葉を全て言う前に気絶した。
グランマが後ろ首を手刀で打っていた。
「さてでは城に向かうとしよう」
「そうだねあたしは三人に連絡を入れるよ」
いうなりグランマは体内通信機でスリーに連絡を入れた。
キジヌとグランマは城へと向かった。城のつり橋は下がっていた。
見張り台には何人か見張りが立っていた。
「まずは見張りを潰すか」
「そっち側は任せたよ。」
そう言うとグランマは垂直に立った城壁を駆け上がり素早く見張りを片づけた。
遅れてキジヌがレンキを使い城壁を登り、反対側を片づけた。
窓から城内を見ると海賊たちが宴を開いていた。
酒を飲み歌を歌う。こちらに気が付いてはいなかった。
キジヌは体内通信機でスリーに連絡を入れた。
『連絡が来た』
スリー達は町外れで戦闘装甲服に搭乗しながら待機していた。
装甲服の通信機越しに純一郎がスリーに聞いた。
『何だって』
『正面から来いとさ』
そういうとスリー達は縦一列に並び大通りを進んだ。
大通りには人がほとんど居なかった。スリー達は特にトラブルも無く、城の上げ橋へと辿り着いた。
『着いたけどどうする?』
スリーは体内通信機でキジヌに聞いた。
『城門を吹き飛ばしてくれそれに乗じて頭目を狙う』
『了解』
スリーは戦闘装甲服の右腕を城門に向けると、ロケット砲を放った。
城門は轟音を響かせながら吹き飛んだ。
海賊たちは一瞬呆気に取られながら吹き飛んだ城門を眺めていた。
敵襲だ、というよりも早く、三機の戦闘装甲服による、被弾した対象を感電させるショックガンが五月雨のごとく放たれた。
海賊たちの殆どは何もできず感電し失神した。
だが一人の男が立っていた。男は刀を抜きレンキを纏わせていた。
男が刀を振ると、レンキの斬撃が飛翔し、回避したスリーの機体の右腕を寸断した。
『マズイ、レンキ使いだ!』
スリーの機体を見て純一郎が聞いた。
『大丈夫かスリー!』
『俺は大丈夫だからお前は下がってろ!』
スリーの機体がと純一郎の機体が正面から左腕のショックガンを放ち、その隙を付いてアビーは左側から旋回し、右腕のロケット砲を放った。
放たれた弾頭は男には届くことなく両断された。
アビーは距離を詰めて両腕の電磁ナイフを展開し、接近戦を仕掛けた。
男は刀で受け止めた。男は跳躍し距離を更に詰めた。
そして刀を横に薙いだ。
斬撃受け止めた電磁ナイフごとアビゲイルの装甲服は上半身と下半身に切り離された。
レンキの斬撃の波動は止まることなく、スリーの装甲服へと迫っていった。
『スリー!』
純一郎が装甲服の手を伸ばし叫んだ。
レンキの斬撃は、スリーの装甲服を両断、しなかった。
スリーの装甲服の前に正方形の光の壁が現れ、レンキの斬撃を受け止め霧散させたのだ。
男は一瞬驚愕し再びレンキの斬撃を放った。
そのすべての斬撃を純一郎は光の障壁で防いだ。
そしてその障壁を男に向けて高速で押し出した。
男は障壁と壁に挟まれ気絶した。
純一郎は叫んだ。
『アビーは大丈夫なのか!?』
『アビーはあれでも大丈夫だ。本体はグレートジェントルマン号にあるからな。それよりもお前あの壁
は……』
『俺も分からない。気が付いたら出てきて』
「三人共大丈夫か!?」
キジヌがやってきた。奥の方も決着がついたらしい。エントランスホールの状況を見てキジヌは言った。
「アビーはやられてしまったか。相当の手練れが居たんだな」
『ああ、けどジュンイチロウのおかげで何とかなったぜ』
「もしかして何か能力に目覚めたのかい?」
『ああ、光の壁を出せるらしい。詳しくは村に戻ってからだな』
その後、グランマが連れ去られた女たちと一緒に降りてきた。依頼は無事に完了した。




