エルダーワンズ領域へ
「それって……どういう意味ですか……?」
ドクターの言葉に言葉を詰まらせながら純一郎は聞いた。
ドクターミシシッピは再び溜息をつきながら答えた
「お前さんの細胞は俺等人間とは異なる細胞でできている。それどころかこの宇宙で同じ細胞を持つものすらおらん。お前さんが何なのかわしにはさっぱり解らんのだ」
「そんな……」
「確実に言えるのは生物ではあるという事だ」
「そんな事があり得るのかね?」
「俺に聞くな。だが現実にはあり得ている。だから……」
「そんな俺は一体……」
純一郎はは立ち上がり、亡霊にような顔で呟いた。
「ジュンイチロウ?」
「俺は……俺は……」
そう言うと純一郎は吐しゃ物を吐きながら頭から倒れた。
「不味い!ベットに乗せろ!」
薄くなっていく意識の中、ドクターの声が頭に響いた。
目を覚ますと天井が見えた。ぼんやりと眺めていると頭に痛みが走った。
「痛……」
「おう、目が覚めたか」
「わお、ドクター呼んでキマスネ」
声のする方に顔を向けるとそこにはスリーが椅子に座り雑誌を持っていた。
本の表紙には『持てる男の腕パーツ』とデカデカと書かれていた。
「俺……」
「検査結果を聞いた後お前頭からぶっ倒れたんだよ。頭いてぇのはそん時にぶつけたからコブが出来たんだよ。ドクターは恐らく冷やしとけば大丈夫、だってよ」
「そうか……俺……倒れて……」
「ホントにたまげたぜ。急に吐きながら倒れたんだからよ」
言われてみれば口が吐しゃ物臭かった。
「うがいしてもいいっすかね……?」
「いいんじゃねえか?多分。そこに洗面台があるぜ」
重い体を起こして純一郎はうがいをした。
口の中がスッキリすると少し気持ちが落ち着いた。
スリーに背を向けるように純一郎はベットに腰かけた。
「俺……これからどうしたらいいんでしょう……」
「知らん」
雑誌を読みながらスリーはぶっきらぼうに答えた。
「俺は……人ですらなかったんですよ……一体どうしたらいいんですか!」
「お前が人かどうかそんなに重要なのか?」
「え……?」
「お前の言う通りなら俺は九割人間じゃない。脳みそ以外は機械のサイボーグだからな。それどころかアビーは百パーセント機械だ。けどあいつも人間として扱われて元気に生きてる」
「…………」
「重要ななのはお前が何者かよりも何者になりたいかじゃねぇのか?」
「俺は……」
「……説教じみたこと言っちまったな、ガラじゃねぇ。ジュンイチロウ、お前はコレから何がしたい?」
「俺は……自分が何者か知りたいです。ぼんやりとした存在じゃなくて、自分が本当に何者か知りたいです……!」
「それなら俺たちに依頼しな。依頼料は負けてやるぜ」
「スリーさん…… ありがとうございます」
「おう目え覚ましたかって、何かあったのか?」
ドクターミシシッピが病室に入るなり言った。スリーがなんでもねぇと答えた。
「それなら良いけどよう。悪かったな、ジュンイチロウ君。俺ももうちょっと気を付けるべきだったぜ」
「いえ……検査してもらってありがとうございました」
「……やっぱお前らなんかあっただろ」
「だからなんもねぇって。で?何か検査するのか?」
「いや、うちではこれ以上の検査は出来ねぇ。というかどこの病院でもそうだろう。」
「そうですか……」
「だがお前さんが何者か知ってる可能性のある奴らなら分かるぜ」
「何だよ」
「エルダーワンズだ。奴らなら何か知ってるかもしれんぜ」
「よりによってあいつらかよ」
「エルダーワンズって誰ですか?」
純一郎の質問にスリーが答えた。
「宇宙が誕生する前から存在していたともいわれてる種族さ。『イスの偉大なる種族』とも『最古の人類』とも呼ばれているみょうちきりんな奴らさ。あいつらは俺たち人間に興味を持っちゃいねぇから、馬鹿正直に答えてくれるかも怪しいぜ」
「けどその人達ならもしかしたら……」
「知ってる可能性はあるな」
小さなものではあったが、希望は出てきた。純一郎は立ち上がった。
「エルダーワンズ領域か……」
グレートジェントルマン号のミーティングルームでキジヌは呟いた。
「難しいでしょうか……」
「うーん、あの領域は人間が滅多に立ち入らない領域でね、中央ギルド全域警察の僕でもあまり近づかない領域なんだよね」
「そもそもあの領域は未開地域が多すぎて訳が分からないのさね」
「というかエルダーワンズ自体が接し辛い人達ですカラネ」
「だがレンジュウロウ君の秘密が分かるかもしれない、行かない訳にはいくまい?」
「どちらにせよ、僕は行けないんだけどね……有休今日しかとってないから……」
デイビットは悲しげに言った。
「とにかく、エルダーワンズ領域に行くってことでいいんだな?」
「しょうがないさね」
「レンジュウロウさんの為デスカラ」
「皆さん……ありがとうございます」
そう言う純一郎の瞳は、少し潤んでいた。
「うむ、ではエルダーワンズ領域に向かうとしようか。デイビットは休みだったのにすまなかった」
「本当にすいませんでした、デイビットさん。」
「いいさ、半分はドクターの言ってたように物見遊山だったからね。これで君の秘密が分かる事を祈っているよ」
こうしてデイビットとは別れ、一行はエルダーワンズ領域に向かう事となった。




