明かされた検査結果
喧騒と雑踏。それが『マックスボビー』だった。
本日もご多分に漏れずだった。
店の奥のカウンターに行こうとした一行に、いつもの席に座っている酔っ払い『酔いどれアキュー』こと、アキュール=アルキュールが話かけてきた。
「あら~みんな一緒で珍しいですね~それどころか知らない人が増えている気がする~」
「するどころか増えてるぜ。あんたは相変わらずだな」
「あ~分かりました~その子が急に出てきた男のこですね~不思議ですね~大変ですね~私も良く色んな世界に飛ばされるから良く分かります~」
「あんたの場合飲みすぎて意識ぶっ飛んでるだけだろって袖引っ張んじゃねぇ、伸びるだろうが」
「スリーちゃん捕まえた~一緒にのみましょ~」
「おい誰か助けてくれ……」
「アキューに捕まったら終わりさね」
「僕にも助けられまセン」
「とにかくカウンターに急ごうか」
てめぇら覚えてろよ言う怒声を背に、一行は歩みを進めた。
カウンターには緑色の巨大なゲル状の店主ボビーがプルプル震えながらキジヌ達に気付いた。
「おおうキジヌかぁ。グランマとアビーは久しいな。そっちのは噂のガキンチョかあ随分貧相ななりだなぁ、ちゃんと食ってるのかぁそんで何飲むんだぁ」
「麦酒を」
「あたしも同じのを」
「僕はオイルで」
「オレンジジュースでお願いします」
飲み物は直ぐに出てきた。キジヌはボビーに純一郎の事を尋ねた。
「流石にその子の詳しい情報はないなぁ」
「そうか……しょうがないな。それでは何か仕事は無いかね?できれば一週間くらいで終わる簡単な仕事が良いんだが」
「中央ギルド領域内での輸送の仕事で簡単そうなのがあるぞぉ」
「輸送?どんなものだい?」
「アタッシュケースみたいだなぁ。詳細は依頼人と話を詰めてくれぇ」
「了解助かるよボビー」
「いいってこったぁ」
飲み物を飲み干して、カウンターに紙幣を置いてキジヌ達はカウンターから離れた。
相変わらずスリーはアキュールに絡まれていた。
「アキューそのくらいにしてくれたまえ」
「やですぅ。今日はスリーちゃんをつまみに飲むんですぅ~」
「……一杯奢ろうそれで勘弁してくれたまえ」
「わぁい、キジヌさん大好き~ はいスリーちゃんは返します~」
「疲れた……」
やつれたスリーが帰ってきた。スリーはキジヌ達を一瞥するとお前ら覚えてろよ、と呟いた。
依頼者はスーツを着たインテリ風の男だった。
ワンダーグレインズ領域境からN・B・P・C領域境界へと運ぶという内容だった。
依頼の品を受け取ってから三日目。事件は起きた。
グレートジェントルマン号が三隻の戦艦に囲まれていた。
宇宙海賊だった。
『俺様は宇宙海賊マルバラ海賊団団長マルバラ=フーリガン様だ。お前らの積み荷を大人しく渡せば身ぐるみ剥ぐ程度で済ましてやるぜ!』
元気な団長の宣戦布告にキジヌ達は答え無かった。
「私は『バレル』で行こう」
「俺とアビゲイルは戦闘装甲服に乗って敵艦に特攻」
「そんじゃあたしゃ白兵戦に備えてブリッジで坊やと待機」
戦う気満々だった。純一郎は大声を上げた。
「いやいや、不味いでしょ!相手デカいふねですよ!?三隻いるんですよ!?」
「安心しな。この艦はアビーが管制系統全部握ってるか、ら少し揺れるけどやる事は無いし、グランマが居れば半径五十メートルは安全地帯だ。安心してブリッジで待ってな」
そう言うとスリー達はブリッジから出て行った。
それからはあっという間だった。
一分で敵の艦が一隻爆発し炎に包まれ、その二分後に二隻目が轟沈した。
残った艦が転回し逃げ出そうとしたが、すぐに火を噴いた。
純一郎は口をあんぐりと開けて眺めていた。
「案外時間掛かったね」
「普段はもっと早いんですか!?」
グランマの一言に純一郎は驚愕の声をあげた。ブリッジに三人が戻ってきた。
「ただいまーっと。あぁめんどくさかった」
「そんなこと言っちゃ駄目デスヨ。彼らも必死に頑張ってたんですカラ」
「だからって人様の仕事の邪魔したら駄目だろ」
「確かにそうだね」
三人はあれだけの事をやってのけたのに飄々としていた。
付いてこなければ良かった。真剣にそう思った純一郎だった。
検査から一週間たった。検査結果を聞くために一行は病院に戻ってきていた。
歩みを進めているとデイビットが手を上げてこちらに近づいてきた。
「今日検査結果が出るんだろう?僕も気になって有休を取って来てしまったよ」
「そんな……そこまでしてもらわなくても」
「気にしないでくれ。有休が溜まりに溜まっていてね。それの消化ついでさ。そういえばキジヌ達の仕事を見に行ってどうだった?」
「大変でしたよ!海賊には絡まれるし変な生き物は襲ってくるし、生きた心地しませんでしたよ!」
純一郎の真剣な顔にデイビットは笑って答えた。
「中々刺激的だったろう?」
「笑いごとじゃ無いっすよ!ホントに死ぬかと思ったんですから!」
「まあまあ、さあ、検査の結果を聞きに行こうか!」
「あんた楽しんでんな……」
スリーの指摘にウインクで返しデイビットは笑った。
一行は診察室へと向かった。診察室はあまり広く無く、ぎゅうぎゅうになった。
「全く物見遊山で来おって……まあ良い、いずれにせよお前ら全員に聞いてもらう積もりだったからな手
間が省ける」
検査を担当したドクターミシシッピが顔のしわを深くして言った。
「何か珍しい結果が出たのですか?」
キジヌの問いに溜息を吐きながらドクターミシシッピは答えた。
「……結論からいうと、この少年は人間では無い」




