エピローグ
結局のところ今回の事件の二十人近い被害者達の中で、怪我を負ったり疲弊した者は居たものの、死亡者は出なかった。
この事件で死んだのは実行犯の一人であるゴルドー=ロウだけだった。
レンジュウロウ=ヨモギダは指名手配され多額の賞金が掛けられたが、未だに捕まっては居なかった。
しかしレンキ使い誘拐事件は終息した。
事件から二週間たったがキジヌは何処かぼんやりとしていた。
何を話しかけても心ここに在らずという調子だった。
しかしそうなるのも無理は無いとスリー達は思った。
今回の事件で兄弟弟子が二人死に、師匠が指名手配犯になったのだ。
どうにかならない方がおかしかった。
そんなキジヌの元に二人の来客があった。マスターグレイとその弟子リモンであった。
「事件以来だなキジヌよ!元気だったかね!」」
マスターグレイは相変わらずだった。その相変わらずがキジヌにとって救いにもなっていた。
「えぇ相変わらずです。リモンちゃんは良くなったのかい?」
「押忍!おかげ様すっかり元気になりました。」
「リモンが今日退院だったのでな!ついでにあいさつに来たのだ!」
「あの事件では本当にご迷惑をおかけしました!本当にありがとうございました!」
「元気になって何よりだよ。」
キジヌは笑って答えた。思えば自然と笑ったのは久しぶりだった。
「レンジュウロウはわしに任せてくれ!必ずお縄に付かせてやるからな!」
「私も弟子としてけじめを付けなければなりません」
「そうか!ならば情報が入れば貴公にも共有することとしよう!うかうかしては居られんな!行くぞリモン!」
「押忍!キジヌさん、お騒がせしました!」
嵐のような師弟だった。キジヌが言葉を返すより早く出て行ってしまった。
「すげぇ師弟だな」
「全くだよ。本当にすごい師弟だった。挨拶を返しそびれてしまった。」
「これからどうしマスカ?」
「そうだないつも通り仕事を受けに行こう」
今回の事件で師匠と兄弟弟子の時間は止まってしまった。
それでもキジヌは前に進まないといけなかった。
レンジュウロウの最後の言葉も引っかかっていた。止まっている暇は無い。
「グレートジェントルマン号、発信!」
号令と共に、キジヌ達はいつもの様に歩みを進めた。
「強くなったらどうするんだよ」
夕暮れ時、キジヌ少年はゴルドー少年に聞いた
「知らねーよ。だってまだ強くなってないんだからな」
「確かにその通りだね」
ロングゥ少年は笑って答えた。そんなロングゥを見てゴルドーは言った。
「ロングゥは相変わらず何考えてるか判んねーな」
「そうかい?」
「確かにそうだな」
キジヌが珍しくゴルドーの同意した。ロングゥはますます困ってしまった。
「例えばほら、今日のご飯何かなとか、今日はいい天気だなとか考えているよ」
「本当かよ」
「ホントだよ。今だって夕日が奇麗だなって思ってたよ。」
「確かに奇麗だな」
「……確かに」
本当に奇麗な夕日だった。
少年たちは日が沈むまで、ずっと眺め続けていた。




