決着
キジヌは病院の奥へとたどり着いた。
そこには巨大な空間が広がっており、壁際には人の入った無数のカプセルが無数に立ち並んでいた。
中には拉致されたと思われる人たちが、紫色の液体に浸されていた。
カプセルの上部には透明の管が付いており、それらは中心部に鎮座した巨大な椅子に繋がっていた。
椅子には全身に白い甲冑を纏ったゴルドーが座っていた。
「キジヌ……ようやく来たか」
「ゴルドー……これは一体何だ!?」
「見ていればすぐにわかるさ」
ゴルドーの言葉に呼応するように、全てのカプセルが紫色に輝いた。
その輝きは管へと流れ、ゴルドーの座る椅子に流れて行った。ゴルドーの体がびくりと跳ねた。
「まさか……レンキ使いからレンキを吸収しているのか!?」
「その通りだ。これで俺はまた強くなった」
「こんなの物がお前の望んだ強さなのか!?」
「黙れ!今からお前を殺してやる!」
光を吸い尽くしたゴルドーは立ち上がり両手にレンキの刃を形成した。
前に見た時よりも禍々しいものだった。キジヌはレンキを全身に纏い構えた。
「行くぞ!」
ゴルドーはその場でレンキの刃を伸ばし、振り回した。
キジヌは伸びてきた刃を躱し、距離を詰めた。
ゴルドーの左手の刃が分裂し、キジヌへ四方八方から襲い掛かった。
キジヌはそれらを払いのけながら、更に距離を詰めた。
キジヌの拳の間合いだった。
キジヌは左肘でゴルドーの胸を打ち、右手でゴルドーの左腕を掴み、地面に叩きつけるように投げた。
そしてそのまま左拳を兜に叩き込んだ。
ゴルドーの兜は割れ鼻を折った。
鼻腔から零れ出てきた血を舐め、ゴルドーはニヤリと笑った。
全身のレンキを刃に形成し打ち出した。
キジヌは両手を交差して跳躍し回避したが、何本かがキジヌの全身を掠め裂いた。
ゴルドーは立ち上がり、キジヌはまた構えた。
「あぁいいぞ、この血の昂ぶり、これが力か」
「それは間違った力だゴルドー!本当は理解しているはずだ!」
「お前はコレを受けてないから分らんのさ!この高揚を!この幸福感を!俺はようやく本当の俺になれたのさ!」
「違う本当のお前はそんなものじゃないはずだ!」
「お前に俺の何が分かるってんだ!?常に俺の前を走ってたお前に!ロングゥもそうさ!本当の俺を知らずにすまし顔でご高説を掲げやがる!だからあいつを殺してやったんだ!だからお前も!殺さなきゃいけないんだ!」
そう叫ぶとゴルドーはレンキの刃を分裂させてキジヌに放った。
幾千に分かれた刃がキジヌを襲った。キジヌは防戦一方になった。
刃の幾つかはキジヌの体を切り裂いた。
「見た事か!この力には手も足も出まい!」
刃を振り回しながらゴルドーは言った。
「そのまま死ね!キジヌ=サルモモール!」
その言葉と共に右手を振り上げ巨大な刃を掲げた。
その一瞬をキジヌは見逃さなかった。
ゴルドーの右手側に跳躍し距離を詰めた。
「無駄なんだよ!」
ゴルドーは掲げた刃を振り下ろした。
キジヌはそれを両手で挟むように受け止めた。そして受け止めた刃をへし折った。
ゴルドーの眼は驚愕で見開かれた。キジヌは一気に距離を詰めた。
ゴルドーが左手の刃を振るよりも早く、右拳をゴルドーの顔面に叩き込んだ。
ゴルドーは回転しながら吹き飛び、巨大な椅子にぶつかった。
椅子は砕けゴルドーは砕けた床に倒れた。
ゴルドーは立ち上がろうとしたが、出来なかった。ゴルドーの体からレンキが霧散していった。
「……何故だ、何故俺は勝てない……?膨大な力を手に入れたのに何故?」
「力が大きすぎたんだ。いくら膨大な力でも使いこなせなければ意味が無い。現に最後の君の刃は酷くもろかった。だから簡単に折ることが出来た」
「そうか……それで俺は負けたのか。俺は強くなりたかったのにいつの間にか弱くなってしまったのか」
「……違う、力に溺れなければ君は私を倒していたはずだ」
「俺は……俺の心に負けたのか……」
ごぶりとゴルドーは血を吐いた。膨大な量のレンキに体が耐えられなかったのだ。
「どうやら俺の体がレンキに耐えられなかったらしい。俺はもう死ぬのだろう」
「ゴルドー……」
「あぁ……寒い……俺はもっと……強くなりたかった……こんな所で死にたくない……畜生……畜生……」
そう言うとゴルドーは動かなくなった。キジヌはただ立ち尽くしていた。
「ゴルドーは駄目だったか。残念残念」
キジヌは声のする方へ向いた。そこにはレンジュウロウが立っていた。
「師匠あなたは……!」
「おうおう、こうなる事は分かっとったよ。だが可愛い弟子が求めるもんでよう、答えてやらねばなるまい?」
「だからといって――!」
「いずれにせよゴルドーは似たような末路を向かえ取ったわい。何せ生き急いでいたからの。何より頑固者じゃ。例えわしが止めようが止まる男ではあるまい」
「しかし……」
「それよりもじゃ。どうだキジヌわしと一緒にこんか?」
「……お断りします」
「そうかい残念じゃのう。だがいずれまた会う事にはなろうぞ。近々世界は大きく揺れ動くからの」
「それは一体……」
「おっと、時間切れじゃ。グレイの奴がこっちに来てしまうからの。奴は人の話を聞かんから困るわい」
そう言うと老人は霧の様に消えてしまった。
入れ替わりでマスターグレイが来た。
「奴は何処に消えおった!?急に逃げ追って相変わらず身勝手な奴だわい!キジヌ!ゴルドーとは決着をつけたのか!?」
「はい……彼は私が、私が止めました……」
「……そうか、それは辛いの。だが立ち止まっている訳にはいかん!被害者たちを救出せねば!」
そう言うとマスターグレイはカプセルに近寄り救出作業を始めた。
キジヌも少し遅れて動き始めた。




