マスターグレイ
「随分派手にやられマシタネ」
スリーの取り外した腕を見ながらアビゲイルは心配そうに言った。
あの後キジヌとスリーはグレートジェントルマン号のブリッジに帰ってきていた。
スリーは新しい腕に付け替えていた。
「命あっての物種さね」
グランマが言った。スリーがふてくされながら答えた。
「全くだ。とんだ災難だったぜ」
「済まない。私と居た為に君も巻き込んでしまった」
「そんなことじゃないさ。こんな仕事やってりゃこのくらい屁でもないぜ」
珍しくしおらしくなったキジヌに思わずスリーは慌てた。
「そんな事よりこれからどうするかだな。奴はこの街に留まるだろうかもわかりゃしねえ」
「これから私だけを狙ってくれればよいがね。その確証も今はないと来ている。もしかしたらまた別の被害者が出るかもしれない」
「今回件で彼を退けたのは君だけだからね。ここからどう動くか」
言いながらデイビットがブリッジに現れた。キジヌは喜んで歓迎した。
「デイビット、来てくれたのかい。忙しいところ申し訳ない」
「構わないさ。今回は君たちが被害者だからね。スリーは腕の方は大丈夫かい?」
「この通りへっちゃらさ。お気遣いどうも」
「それでデイビット。我々はこれからどうしたら良いかね?」
「それに関してはある御方から提案があった。そろそろ連絡が来ると思うけど……」
「通信来まシタ。メインモニターに繋ぎマスネ」
一同はメインモニターに目を向けた。
画面一杯に灰色の肌に大きな黒目の、灰色の道着を纏い鉢巻きを付けた男が映った。
キジヌは驚愕の声を上げた。
「マスターグレイ!お久しぶりです!」
『うむ、今回の件はデイビットから聞いたぞ。随分厄介な事に巻き込まれたらしいな!』
マスターグレイはワンダーグレインズ領域出身のレンキ使いである。
宇宙に数多くいるレンキ使いの中でも百人程度しかいない『マスター』の称号を持つ、いわばレンキのスペシャリストである。
賞金稼ぎとしてはインフィニティの所に所属しているがそちらは副業であり、本業は様々な地域の展開されたレンキ道場の創設者であり師範である。
そんな大物が出てきたのだ。同じレンキ使いのキジヌが驚愕するのも当然だった。
『今、わしも弟子と共にそちらに向かっている最中である。安心せい』
『押忍!よろしくお願いします!』
マスターグレイと共に可愛らしい声が聞こえてきた。彼女が弟子なのだろう。
「まさかマスターグレイに来て頂けるとは光栄です」
『なに、わしの道場の生徒も被害にあっているのでな!わしとしてもこんな事件はさっさと終わらせたいのである。それにレンキ使いが揃えば良いおとりにもなるだろう!』
マスターグレイの言葉は怒りに満ちていた。自身の身内にも被害が出ているのだ。
当然の憤慨である。デイビットが声を上げた。
「ではまず情報を整理しましょうか。まず今まで被害にあっているのはレンキ使い。それも無差別に狙われています。」
「そういえばその中に賞金稼ぎは居ないのかね?賞金稼ぎならばキャットから情報を引き出せるであろう?」
「残念ながらキャットでも感知出来なかったらしい。つまり白い騎士の背後には何か組織が関与している可能性もあると考えた方が良いね」
「まさか『ダークマター』か?」
「可能性は無いとは言えないがその線は薄いね。彼らはこんな派手なやり方はしない。もっと上手く隠すだろう。」
「確かに奴らの手口としては派手さね」
『いずれかの軍の仕業ではなかろうか!』
「確かにキャットを無効化出来る者としてはその線が妥当デスネ」
「だが軍が何故今更レンキ使い興味を示す?そもそもどこの軍にも大抵はレンキ使いが居るんじゃねえのか」
「結局は白い騎士を捕まえるしかないか……」
「そういえば奴が現れた時に霧が出てきて、奴が消えたら霧も同じように消えていたな」
「もしかしたら意図的に霧を出しているのかもしれない。各人霧が出たら気を付けてみよう」
『奴の戦闘スタイルはどんなものだったのかね!』
「奴は剣を使ってましたが相当な手練れでしたね。鎧を着こんでいましたが打撃は通る様でした。そして奴自身レンキ使いでありました」
『レンキ使いなのにレンキ使いを狙うのか!なんというやつだ!』
マスターグレイは一段と憤慨した。
結局のところ核心に迫る情報はそこまで無かった。キジヌ達はマスターグレイ達が合流するまで待つことにした。




