黒猫と反撃の狼煙
「さて……行ったみたいだね」
グレートジェントルマン号は古い駆逐艦を改造した艦だった。
改造した際、少人数でも運用出来るようにと、システムの殆どをアビゲイルに組み込みブラックボックス化したのだ。
その際に単独飛行できるようにスリーは改造を施していた。
緊急用の脱出装置として運用する為である。
今グランマとキジヌとアビゲイルはブラックボックスの中に居た。
緊急医療キットで治療されたキジヌが目を覚ました。
「ん……どうやらブラックボックスの中らしいな」
「目を覚ましたかい。まだゆっくりしてな。どうせ今は何も出来やしないんだからね」
「そうデスヨ。まだゆっくりしていてクダサイ」
そう促されてもキジヌは体を起こした。
「済まなかった。私が敗北しなければこんな事には……」
「生意気言ってんじゃないよ。相手は最強の賞金稼ぎさね。殺されなかった分、上々さ」
「二人の居場所は分かるかい」
「キャットが付いてるからね」
「そのとーり!キャットさんに任せなさい」
三人の前に黒い猫が突然現れた。情報屋キャットは賞金稼ぎに必ず付いて回る不可視の猫である。名前を呼んだ際に姿を現す。
つまり発信機代わりに使えるのである。
「あっちの手筈は整っているかい?」
「そろそろ来るはずなんだがね。何してんだか」
『おーい聞こえているかぁ?こっぴどくやられたらしいなぁ!』
ギリアンの声だった。キジヌ達はこうなることを予見して『チームライトニングス』に依頼を送っていたのだ。
『チームライトニングス』の艦、サンダーボルト号がブラックボックスに接舷した。
「さて、反撃開始と行こうか」
キジヌの言葉に、マリガンとアビゲイルは頷いた。
「報酬はたんまりもらうにゃ~」
キャットはしっぽを立てながら言った。
「どうしてこんな事するの!?」
スリーの入ったカプセルの前でルーチェが叫んだ。マリガンは答えた。
「ただのコールドスリープよ。万が一発信機が入ってた場合の処置が必要でしょう?」
「だからってこんな……!」
「この子はわざわざ自分から捕まりに来たのよ。何か策が在ってもおかしくないわ」
「だったら少し話をさせて!」
「それもダメ。基地に着いたら話しをさせてあげるわ」
そう言うとマリガンは部屋を出て行った。ルーチェはカプセルの傍に座り込むしかなかった。
暫くするとまた扉が開いた。トウゴだった。トレイを持っていた。
「まだ時間がかかる。今のうちに食べるといい」
「いらない……」
「そうか。ここに置いとくぞ」
「……あなたもダークマターなの?」
「いいや、違う」
「だったら全部終わったらあなたも消されちゃうんじゃない?ダークマターなんてそういう組織でしょ」
「それならばそれで僥倖」
「あなたは一体何をしたいの?」
トウゴは笑って答えた。
「強者と戦えればそれで良い」
そう言うとトウゴは部屋から出て行った。
それからは誰も来なかった。
ルーチェはカプセルから離れることは無かった。




