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宇宙の紳士と宇宙人  作者: えいちふみふさ
宇宙の紳士と宇宙人
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死合と真実

トウゴ=ジュサン。彼が宇宙最強の賞金稼ぎと呼ばれる様になったのは二十年前のことある。

七宝帝帝国領域とN・B・P・C領域の平和会談が行われた。

そこにはそれぞれトップの人間が揃っていた。

当然警備は完璧。警備員の数も練度も最高峰だった。

そこに男は現れた。

男は一人でその場に居た者全てを殺した。

そして悠々と帰っていった。

男には最高額の賞金が掛けられたが、誰一人彼を捕まえるどころか、殺す事すら出来なかった。

誰が依頼を出したかは不明である。

未だに捕まってない上に彼自身も語らないからである。

そして今でも確実に仕事をこなす男と呼ばれ、賞金稼ぎとして活動している。

そんな男がキジヌの前に現れたのだ。


「久しぶりだなミスタージュサン、元気だったかい?」


「貴様こそどうだミスタービースト。スリーやグランマ達も元気か?」


「相変わらずさ。ところで何故貴方がここにいるのかね?」


「貴様らが護衛している娘を引き渡して貰いたい」


「……何?何故彼女が狙われているのかね?」


「貴様に語る理由は無い。渡すか渡さぬか。二つに一つだ」

 

そう言うとトウゴは身の丈程の八角棒を構えた。


 ……相手は最強の賞金稼ぎである。それでもキジヌに迷いは無かった。


「……彼女を渡す訳にはいかない」


キジヌはレンキを纏い構えた。一瞬でも気を抜けば殺される。

相手はもはや人ではない。魔人である。

距離は十メートル程。どちらにとっても必殺の距離である。

キジヌは帯状に形成したレンキを構え息を吐いた。

死合の始まりは一瞬だった。

トウゴは音よりも速く一気に距離を詰め八角棒を振り上げた。

振り下ろされた八角棒をキジヌは帯状のレンキで左手側に逸らし、左拳をトウゴの頬に叩き込んだ。

キジヌは驚愕した。まるで鋼鉄の塊を殴ったのかと感じた。

跳ねるように振り上げられた八角棒を跳躍で回避し、体を反転させて天井を蹴

り、距離をとった。

 しかしトウゴは再び距離を詰め神速の突きを放った。

これも帯で逸らしたが、脇腹を少し掠めた。

掠めただけなのに肋骨が砕けた。

次に放たれた突きを帯で正面から受けてしまった。

力を逸らすことが出来ず、キジヌは壁に叩きつけられて、失神した。





戦艦はグレートジェントルマン号に接舷した。

ブリッジに中に入って来たのはキジヌを担いだトウゴだった。

グランマは構えたが最早打つ手は無かった。トウゴはキジヌを下した。


「皆久しぶりだな。早速だが娘を渡して貰おうか」


「最悪の再会さね」


「全くだぜ。それでなんでルーチェが狙われてるんだ?」


「それは私がお答え致しますわ」


 声を上げたのはシスターマリガンだった。


「やっぱりあんたが黒幕かよ」


「どうにもならない状況でそのセリフは無駄ではなくて?」

 

ぐうの音も出なかった。そんな状況に満足したのか、マリガンは続けた


「改めましてごきげんよう。貴方方に分かりやすく説明すると、私は秘密結社ダークマターのエージェント・マリガンですわ」


「ダークマターだと?またとんでもないのが出て来やがったな」


秘密結社ダークマターとは宇宙で暗躍する武器商である。

誰もその実態を掴めぬ為に付けられた名前であり正式な名称すら知られてはいない

違法な人体実験を主に行っており各機関からブラックリストに登録されている。

そんな組織が何故ルーチェを必要としているのかが皆疑問だったのだ。


「さて彼女が何故必要なのか説明致しましょう。答えは単純、彼女が『宇宙人』だからですわ。」


 その言葉には皆が驚愕した。

『宇宙人』とは百年前に突如現れた者たちの総称だった。

百年前、後に『五十年戦争』と呼ばれる戦争が行われていた。

七宝帝帝国領域とN・B・P・C領域との宇宙を揺るがした大戦争である。

その戦争の最中、彼らは現れたのだ。

彼らは生まれつき宇宙に順応し銀河を滅ぼす程の力を有していた。

その強力な力を各軍部が見過ごす訳が無かった。

彼らは生物兵器として戦地に投入されたり、人体実験を受けたりしていたのである。

そしてある事件が起きた。

『宇宙人』達が一斉に蜂起したのである。後の『宇宙人の反乱』である。

 余りに強大な力の前に七宝帝帝国領域とN・B・P・C領域は一時的に休戦協定を結び、『宇宙人』達に対抗するために『星越者』達を生み出した。

そして蜂起した『宇宙人』達の頭目だったアインと呼ばれた『宇宙人』を銀河ごと圧縮封印することで

『宇宙人の反乱』を終結させてのである。

その後『宇宙人』の人権は保障されることとなった。

『宇宙人たちの反乱』によって疲弊した各陣営は、中央ギルド領域を制定し、賞金首制度を大きく体系化させ、治安維持に当て、今に至るのである。


「ルーチェは宇宙人として登録されて無いはずだ。なんでお前らが知ってるんだよ」


 当然の疑問である。スリーの質問を小ばかするようににマリガンは答えた。


「単純な話ですわ。最初から我々が関与していただけですの」


「最初から?つまりルーチェが修道院に引き取られるところからか?」


「ご明察。百点上げますわ」


「だが何故だ?なんでこんな回りくどいことをする?」


「彼女がなかなか能力を発現させなかったからですわ。で無ければこんな面倒くさいことしませんわ。」


 そう言うとマリガンは溜息をついてトウゴの方へ歩み寄った。


「さぁルーチェこちらにいらっしゃい」


「……あたしが行ったら皆の安全を保障してくれる?」


「ええいいですわ。キジヌ御一行の安全は保障致しましょう」


「分かった」

 

ルーチェはマリガンに近づき振り向いて言った。


「皆今までありがとう……ごめんね」


 ルーチェの瞳には涙が溜まっていた。


「待った、俺も連れていけ」


 口を開いたのはスリーだった。


「あなたを連れて行く理由はありませんよ?」


「俺も『宇宙人』だAE=MRナンバー・スリーって言えばわかるか?」


「……あなたまさか十年前の」


「それが俺だ。あんたらに脳みそだけにされたガキンチョだよ」


「素晴らしいですわ、いいでしょうあなたも連れて行きましょう」


「馬鹿な真似はやめなスリー!」


 グランマは叫んだ。スリーは悲しい笑みを浮かべて答えた。


「悪いな。あいつを一人にしたくねぇんだ」


「それでは決まりですわね」


 もはやどうにも出来なかった。ルーチェとスリーを連れてマリガンとトウゴはグレートジェントルマン号を出て行った。


「それではあの艦を沈めなさい」


 マリガンは戦艦のブリッジに着くなり言った。


「話が違う!」


 叫ぶルーチェにマリガンは笑って答えた。


「証拠隠滅ですわ」


トウゴがパネルを操作すると主砲とミサイルが放たれた。

グレートジェントルマン号は轟沈した。


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