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招待状

 私が札幌競馬場で会う人間は限られている。職場か学生時代の友人、そして、競馬予想サークルで知り合った人など。


私を呼んだのは知らない男だった。“誰なんだ?”と思ったら、


「失礼ですが少し時間を頂けますか?貴方に受け取って欲しい物があるのですが・・・。」


何の用か?尋ねると男は“招待状”と書かれた封筒を出して私に見せて、

「これは、ある方法により選ばれた方にお渡ししています。この場では読まないで下さい。中身を読んだ後にお返事を下さい。この事は決して他言無用でお願いします。失格になりますので。」


男は“意味深な言葉”を残し去っていった。


“招待状”が気になりながらも競馬場の入場時間になり私はゴールが良く見える場所をしっかり確保し座った。


私は早く来ても第一レースから買うわけではない。この日のレース傾向などを考えている。基本的には私は重賞以外は買わない。経験上重賞レースはデータを分析する事で的中率が大幅に上がる。


二十代の頃は穴狙いが主で条件レースを少額買うことが多かった。特に狙い目の馬がいる時は的中率が高い。自信があるレースなら配当が低くても一点勝負する事もあった。しかし何度か強気に単勝や複勝に大金を賭けて大損した。暫く生活費を節約する事になり思った以上に精神的苦痛になった。その経験が結果的に好きな競馬を止める事を決心したのだが、冷静さを欠いた状態で大金を賭けるという精神不安定な状態が多分“ギャンブル依存症”なのだと後に思った。数年後に札幌に来てからは暫く仕事中心の生活をしていたが職場で仲良くなった友人に誘われG1レースだけ少し買うようになった。勿論生活に影響がない程度しか買わない。そのうち自分がしっかり心をコントロールできるようになったので当てる自信がある重賞をオッズ次第で買うかどうか?選択するようになった。


「なかさーん。やっぱり来ていましたか。」と声をかけてきたのは伊藤先生だった。どうやら一口馬主になっている馬が走っていたらしい。

「いやぁ、残念ながら我が愛馬は5着でしたよ。札幌競馬ももうすぐ終わるので残念だよ。勝つところ見たかったなぁー。」と苦笑いした。

「伊藤先生、先週は急な発熱で具合が悪い所を診察してもらって助かりましたよ。熱も長引かずに済みました。ただ予定していた競馬場に来れなかったのが残念でした。予想が当たっていたので。」私は笑みを浮かべながらお礼を言いこの後の事を聞いた。


「先生は最後まで見ていくのですか?」と尋ねると『今日は友人に会う約束があるので。』と言い帰っていった。


午後のレースが始まる頃に“明”率いる『競馬好きサークル』メンバーが到着した。“宏”は今日はいないようだ。私が札幌に来る前に情報を得るために昔の同級生数人と連絡を取っていた一人が“明”で東京にいた頃に道民会で知り合った“宏”が大学時代の“明”の友人で『競馬好きサークル』を作っていると後で知り、私も誘われたが・・・。


 実は私は昔、競馬サークルを一年余り運営・管理していたことがある。しかし、誹謗中傷をする”荒らし”の為サークルを解散した。メンバーの中には私の予想で万馬券が取れたことを感謝して残念がる人もいた。


 私は競馬を止めた事を伝え断っていた。しかし私が競馬を少しずつ始めた事を話した時に『初心者など競馬仲間にアドバイスをする事』を頼まれて“名誉オーナー”にされた。昔のサークル運営の実績を知っていたからだ。そして今年からブログ予想も書かされるようになった。私の書く予想は参考になると一部の人に好評を得ている。

 今日は少し人数が多いようだ。初心者を連れて競馬場に来たらしい。一応メンバー全員と軽く挨拶した。“明”がパドックを見にメンバーを引き連れて行った。どうやら今日は初心者講座は無しのようだ。気づいたらメインレースが近づき馬体重をチェック。パドックを見てきた。今回は天候が怪しく馬場状態が把握しにくいので当てる自信が無く少額だけ買った。結果はハズレ。“明”たちに軽く挨拶して私はすぐに競馬場を出た。


帰宅してから“招待状”を読んでみた。主催者は書いていないが競馬予想大会があるらしいが参加条件が・・・。この時はさほど興味がなく断ろうと思っていた。一応返事は九月十四日迄と書いてある。


 そして、運命の日が来てしまう。九月六日午前三時八分頃。私は物凄い揺れで慌てて起き上がると直ぐにNHKを見た。胆振地方で震度7の地震。札幌も私の地区は震度6弱と後に知ることになる。停電で真っ暗闇になった。


 

 私はこれから大勝負に出なくてはならない。競馬予想大会に参加したのだ。理由は・・・。

まずは、九月三十日に行われる最初の参加条件レースはG1スプリンターS。

私の運命を賭ける馬候補は人気の12番ナック 8番ファイン 5番アレス

果たしてどれを選ぶか?馬場状態が悪いので穴も注意しなければ・・・。



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