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209.メガネ君、暗殺者コースかそれ以外コースを選択する





「それでは、各自の判断により教室を分けることとする。


 暗殺者の道を行くか、それ以外を行くか。


 ――希望するコースを選びなさい」


 本格的にブラインの塔での生活が始まった二日目。

 エヴァネスク教官の説明の後、俺たちは選択を迫られていた。





 ――選択を迫られる前に簡単に説明はあったが、概ねもう知っていることばかりだった。


 暗殺者コースは、暗殺者としての訓練をする。

 今は暗殺者関連の仕事がほぼない状態だが、それでも人の殺し方と隠密行動を主体としたものを教えてくれるそうだ。


 正直に言うと、人の殺し方は知らなくていいが、隠密行動に関してはすごく興味がある。

 自分なりの隠密行動はよくやっているが、プロの技でもっと磨きが掛けられるなら、と期待する部分は大きい。気になるよなぁ。


 それ以外のコース。

 こちらはもう、割り切って魔物と戦うための方法を伸ばしていくそうだ。

 長い年月を掛けて完成した暗殺者の技術を、割り切って魔物狩りに昇華する、という感じになる。

 

 やはり俺はこっちかな。

 暗殺者コースの隠密行動は非常に気になるが、人の殺し方は学ばなくていい。俺には不要だ。


 それで。


 暗殺者コースを選ぶなら隣の部屋に、それ以外のコースを選ぶならこのままここにいればいいそうだ。

 ヨルゴ教官とソリチカ教官がいないから、多分二人は隣の部屋で待っているのだろう。


「――質問、いいですか?」


 と、ハイドラが挙手する。

 エヴァネスク教官が頷くと、ハイドラは立ち上がった。


「まだ決心がつかない、この段階で迷ってしまった等の者はどうすればいいですか? 無理やり決めろとは言わないと思いますが」


 お、さすがハイドラ。


 エヴァネスク教官の説明を聞いて、確かにちょっとだけ暗殺者コースの隠密行動は気になり出した。


 もしかしたら、人の殺し方はパスして、隠密行動だけ磨くような形にもできるのではないか。


 そんな疑問は俺にも浮かんでいる。

 ハイドラの質問が終わったら俺も聞いてみようかな。


 これはさすがに大事な話である。目立つのが嫌だなんだ言ってられないし。


「昨日少し触れたが、課題が重ならない限りはどちらの課題を受けても構わない。

 つまり、あまり勧めることはしないが、コースの変更も受け付ける」


 え、途中で変更していいの?


「ただし、変更した先で、それまでに学び、積み上げてきたものを崩すような学習内容だったり課題だったりをするかもしれない。

 それにコースを変更した時点で、元からそこにいた候補生より遅れが生じるのは否めない。


 結果として育成が遅れる原因になりかねない。ゆえに勧める気はない。


 だが変更は認める。

 やる気のない者に居座られてもほかの候補生に迷惑だから」


 ……なるほど。


 途中で入ってきた者は、当然元からいた者に比べて遅れてしまう。

 だから変更は勧めない、が。


 だからと言って、もうそのコースでやる気がないなら、周囲に迷惑だからとっとと移れと。


 こんな感じだろうか。


「……どうやら迷っているのは貴方だけではないようね」


 エヴァネスク教官は俺たちを見回し、何人か迷っていることを察したようだ。質問した以上はハイドラ自身も少し迷っているのだろう。


「ではこうしましょう。


 まずは元から決めていたコースに入りなさい。

 そして、しばらくはコースの行き来を自由とする。どちらを受けても構わないわ。どちらにも対応するカリキュラムを組むから。


 どうせ何日かは合同訓練を行うつもりだったから、それらの様子を見て考えるといい。


 いずれ改めて聞くから、その時までに決めればいいわ」


 つまりしばらくは猶予期間とするから、少し体験して決めろと。


 そうだね。それがいいかもしれない。

 正直俺はちょっと迷ってるし。殺しに興味はないけど、暗殺者コースの様子も見たくなってしまった。


「それでは暫定で別れるように。


 暗殺者コースを希望する者は、隣の部屋に行きヨルゴ氏とソリチカ氏の説明を受けること。


 それ以外のコースを選ぶなら、このまま残りなさい」





 何人かが席を立ち、隣の部屋に行ってしまった。


 えっと、行ったのは、ハイドラとセリエとシュレン、カロなんとか、マリオン、エオラゼル、か。


 主席であり早くも候補生たちのリーダー格になっているハイドラ。

 元から強く暗殺者になることを志望していたセリエ。

 東洋人の少年シュレン。


 薬学に精通しているカロなんとか。

 中性的で男女の見分けがつかない少女マリオン。

 王子様エオラゼル。


 以上の六人である。


 十四人いる候補生の中から、六人が移動したことになる。あと一人動いていればちょうど半分だったな。


 ……この人数が移動したのは、妥当と言えるのか、意外と言えるのか。


 いや、暗殺者の仕事がないと公言している以上、やはり意外と言っていいのかもしれない。

 目指す先には仕事はないよ、と言われているにも拘わらず、だからね。


 人選的にはどうなんだろう。

 そもそもまだまだ知らない者ばかりなので、どっちと判断すればいいのかわからないが。


 …………


 ハイドラとマリオンは、やっぱりちょっと意外な気はするかな。






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