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194.メガネ君、もう直接聞く。そして衝撃の真相が語られる セリエ編





「――もう手っ取り早くいかねえか? 直接聞こうぜ」


 ついにサッシュが言った。核心に触れることを言ってしまった。


「その方が早いかもね」


 考えることは多いけど、結局取れる手段は二つなのだ。


 ブラインの塔の話を振って様子を見るか、このまま静観して様子を見るか、だ。


 とりあえず、ブラインの塔のことを教えるのは、話を振ってからである。

 相手の反応次第でこっちの言動を変えればいい。


 できれば、「微妙に導いたりヒントを出したりはするけど具体的には教えない」というのが、俺たちの共通した意向だと思う。

 俺もサッシュと同じく、教えるのは反対だから。


 こっちがそれとなく導こうが、ヒントを出そうが、彼女らには自力で辿り着いてほしい。


 ――特にフロランタンは、大変そうだから、できれば全員総出で導きたい。


「まずセリエに確かめよう。フロランタンは最後がいい」


「だな。あいつはマジでダメだ」


 サッシュは真顔で言った。


「あいつは今俺たち側にいねえ。ガキどもの側にいる」


 うん……なんだってあんなことになってるんだかね。

 外見も振る舞いも子供っぽいところはあったけど、俺たちの中では誰よりも本質は大人だったのに。


 ……あれが本来の姿だった、と言われればそれまでだけど。


 俺たちがフロランタンを知らなすぎた、彼女のことをまったく理解できていなかった、というだけのことなのかもしれないし。……もしそうならさすがにちょっと悲しいけどね。


 まあ、その辺はいいとして。


 セリエをこっち側に付けられたら、あとはもうこそこそしなくて大丈夫だ。

 何せ関係者全員がグルになるのだから。


 セリエさえこっちに付けてしまえば、右も左もわからないフロランタンに、あの手この手で手取り足取りはじめてのお使いに行く小さな子供さながらさりげなく全員で誘導し涙のゴールを見守ればいい。


 「誰かにバレてはならない」という条件が付くと面倒だが、そうじゃないなら簡単だろう。


 …………


 これで大丈夫かな?


「ハイドラ、どう思う?」


 いまだ手鏡に見入っている彼女の意見を聞いてみたくて、話を振ってみたが。


「――ごめんなさい。私はあくまでも中立だから、結果どころかそれに至る情報を左右することさえ禁止なの。


 あなたたちはすでにブラインの塔に辿り着いている。エイルも行こうと思えばいつでも行けるから同等と見なすわ。

 だから話せることも多い。


 でも、辿り着いていない者に関しては、私からは何も言えないわ」


 ……そうか。そうだね。


 これは本来個々人の問題で、俺たちは仲間だから頭を悩ませているのだ。……いや、まあ、俺は課題もあるけどね。


 本来なら、それぞれがバラバラで、それぞれがそれぞれの方法でブラインの塔に行き、後から来る者を待つ、というのが正しい姿なのだろう。


 むしろ俺たちが考えていることはいらぬお節介であり、余計な心配をしているだけなのかもしれないし。


 ――でも、やろうかな。


 俺は課題があるからこそ、彼女らを早くブラインの塔に行かせたい。

 これは俺の事情であり、動く理由でもある。


 あとハイドラの弁に納得してしまったが、合流禁止に関しては、「一緒にいる安心」は除外することにする。

 このままだと、俺がブラインの塔で修行する時間が削れてしまう。


 少しだけ刺激して様子を見て、必要ならヒントを出したり導いたりし、必要ないなら口出ししなければいい。


「サッシュ、セリエを呼んできてくれる?」


「え、今から話すのか?」


「早い方がいいよ。正直セリエより、フロランタンをどうするかの方が大変そうだから。こっちに時間を使いたい」


「おう……まあ、そうだな。せっかくこうして一緒にいるんだし、今から話してみるか」


「――それでは私は戻るわね。邪魔にしかならないから」


 と、ハイドラは手鏡を覗きながら立ち上がり、さっさと部屋を出ていった。……そんなに気に入ったんだ、化粧。





 ――そしてセリエとブラインの塔について話をするのだが。


 ――そこには驚きの真相が待っていた。





 孤児院にある風呂から上がったばかりのセリエを捕まえ、部屋までご足労願った。


 さっきまでハイドラが座っていたベッドに腰掛けるセリエに、単刀直入に「ブラインの塔は見つけたか?」と聞いたところ。


「――え? ここの地下では?」


 と、セリエはさらりとそんな言葉を言ってのけた。


「おい! 知ってたのかよ!」


「はい、いえ、まあ、知っていたというか……そうなんだろうなぁと」


 ああ、そうか。そういうことか。


 セリエにブラインの塔を探している様子が伺えなかったのは、すでに探し出していたから、か。

 もう見つけてあるものを探すなんて不可能だし、意味もないからね。


 ――詳しく聞いてみたところによると、そもそもセリエが孤児院(ここ)に来たのは偶然でもなんでもなく、ここがブラインの塔の入り口だと思ったからなんだそうだ。


「エイル君もサッシュ君も、ここだと確信を持ったからここに来たんでしょう?」


 まあ、その通りだが。いやサッシュは厳密には違うのかな。


 …………


 そうだね。セリエも俺と同じってことか。

 ここが目指す場所だとわかったから、ここに来たと。


 ということは、順当に行っていれば、ブラインの塔に到着したのはセリエが一番早かったってことになるのか。


 一番最初に孤児院にやってきたのはセリエだって話だからね。


「なんでわかったの?」


 情報源はなんなんだ? 誰かに聞いたのか?


 俺やリッセのように推測したのだろうか。

 いや、それにしては、確信を持ちすぎている気がする。


 だってセリエはまだブラインの塔には行っていない。

 ということは、ブラインの塔の現物をその目で確認しているわけではない。


 なのにセリエは「ここだ」と確信しているのだ。それも「地下」だと。


 それはおかしいだろう。

 少なくとも、現物を見るまでは、その可能性がある止まりである。


「あの……ちょっと卑怯なのかもしれませんが」


 ん?


「わたし、発動している魔法陣なら察知できるんです」


 ……魔法陣?


「ここの地下にものすごく巨大で大きな力が働いている魔法陣があります。恐らくは古代魔道具を使用した転送魔法陣があるはずです。


 街には塔らしいものはないし、巨大魔法陣の上にある孤児院をそれとなく見ていれば暗殺者らしき院長やシスターさんもいるし、だからここかなと。


 ここにお世話になり始めてからは、いないはずの人が来たり消えたりしているし、ここまで情報が揃えば間違いないだろう、と思っていましたが」


 …………


 セリエの「法陣ノ魔術師の素養」の力か。まさかそんな方法で見つけ出すなんて。


 そうか。そういうこともできるのか。

 得意分野だから察知できるとか、そういう考え方でいいのかな。


「なんで早く言わなかったんだよ」


「だってそっちが何も言わないから。まだ探しているのかと思って」


「おまえより早く行ってるよ! つーか俺は激しく来たり消えたりしてただろ! なんで一言『どこに消えてるの?』って言わないんだよ! 俺すげーブラインの塔のこと話したかったのに! 話したかったんだぞ!」


「うーん。でもサッシュ君だし、まだ探してる最中かもって思って」


「なんだとコラ」


 いや、サッシュだからね。俺もセリエと同じ意見だよ。

 絡まれると面倒だから言わないけど。


 それより、こうなってくると、一つわからないことがある。


「セリエはなんでブラインの塔に行かなかったの?」


 そこさえクリアしていれば話も早かったのに。

 セリエは孤児院に馴染みすぎだ、とか、無用なことも考えなかったのに。


 すると、セリエはどこか痛そうな悲痛な顔をする。


「……フロちゃんが心配すぎて、離れられなくて……」


 …………


「先にブラインの塔に行って、もしこっちに戻れなかったら? 行き来している人たちは特別な理由があって許されているだけなのでは?


 誰が行き来できようが、わたしが行き来できるかどうかはわかりませんから。

 行ってから確認するわけにもいきませんし。


 もし戻れなかったら、フロちゃんの面倒が見られないから……あの子が一人でブラインの塔に来れるか、もう心配で心配で……」


 …………


「「ああ……」」


 俺とサッシュは、溜息のような相槌を打った。






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