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187.メガネ君と狩猟祭り 9 (刹那なし)

前話の刹那なしバージョンです。





 今回も、イメージトレーニングは万全だ。


 「細長い魔物」のやりそうなことに加え、形状を見て「蛇」のやりそうなことも想定に入れておく。これくらいの想定外なら誤差の内である。


 ――勝機を見出したのは、龍魚は水生生物だということ。


 つまり、陸に上げてしまえば勝手に死ぬ。 

 そして陸の上を追いかけてくることはない。いざとなれば逃げることは簡単だ、ということだ。


 龍魚には先手は取られたが、ここからは俺がイメージトレーニングで積み上げた狩りをするだけである。


 龍魚が浮上する間に、「闇狩りの戦士」をセットし、銛に「闇狩り」の力を込めてある。


 ――姉がやっていたので判明したが、この「闇狩り」は力を込めれば、手許を離れてもしばらくは効果を残すことができる。ずっと使っていないといけないわけではない。


 つまり、短時間だが「素養」が重複できる。


 龍魚が次の攻撃に移る間に、更に「素養」を「怪鬼」に切り替え、銛を構えた。


 これで今この銛には魔物を弱体化させる「闇狩り」の効果が乗り、「怪鬼」の尋常ならざる力で投げることができる状態になった。


 そして、この距離ならロープが届く。


 ――「闇狩り」で深く刺さった銛を、更に「怪鬼」で龍魚を陸に引きずり出す。


 引きずり出したら、用意してある残りの二本で陸に固定してしまえば、あとは打ち上げられた魚同然である。

 放っておいても仕留められるだろうけど、暴れるだろうからとどめを刺すだけである。


 ――と、イメージトレーニングした結果へ向かうはずだったのが。





  ヌルン


 「えっ」


 宿る怪力で力の限り投擲した銛は、確かに龍魚の首の下辺りに吸い込まれるようにして命中した。

 しかし銛はすり抜けるようにして、龍魚の横を通り過ぎてしまった。


 命中した、はずなのだが。


 ……今、表皮を横滑りして背後に抜けていったのか……?


 動揺はある。

 だが行動は迷わない。


 ただの一瞬動きが遅れただけで致命傷を負う。


 それは水の刃を見て確信した。

 あれは発射される前に避けていないと斬られる。


 横に走りながら、右腕に巻いたロープを力任せに引いて回収し――ゆったりした動きで俺の走る方に首を向ける龍魚と、互いの動きを読み合う。


 走りながら銛に次の「闇狩り」を込め、龍魚の第二射を避けつつ考える。


 頭の正面に水の刃が飛んでくるなら、観察していれば避けることはできる。


 でも、これはあまり良い状態とは言えない。

 少しでも何かが足に当たってつまずくようなタイムロスがあるだけで、水の刃は俺に当たる。決して良い状態ではない。


 ――そういえば、表皮がヌルヌルする細長い魚がいたな。


 掴もうとしても掴めないぬめりがあり、するっと逃げてしまうのだ。

 それと同じ原理だと思っていいのか?


 じゃあ、こっちはどうだ?


 今度は「命中補正」をセットして、銛を投げてみた。


 結果はごらんのニュルンだった。


 龍魚に当たってはいるはずなのだが、とにかく銛が刺さらない。


「じゃあここは――どうだ!」


 三投目。


 同時に打ち合う危険を恐れて、龍魚の第三射直後を狙い、「怪鬼」で頭を狙った。もっと言うと口の中である。


 ……避けた?


 一直線に飛んだ銛は、水の刃を吐いた直後で開いている龍魚の口に入る――コースは辿っていたが、龍魚自身が首を動かし回避した。


 素早い動きだった。

 回避に動く速度が早かった。

 そういえば、水底から浮上する時も速かったっけ。


 俺を追う動きが緩慢に見えるのは、俺の動きは緩慢な動きで追えるからか。実際はかなり動きも早いみたいだ。


 そして、俺の第三投は明確に避けてみせた。


 ――なるほど、自分で「そこに食らったらダメ」ということがわかっているのか。


 表皮には刺さらないことを自覚しているから避ける必要はないし、口の中等の食らったらダメな部分は避けると。自分の利点も弱点もわかっていると。


 ドラゴンの分類と言われても、納得できる知性の高さである。

 

 これはダメだな。

 まともに真正面から投げていては、全部避けられるだろう。


 まず、龍魚の身体に銛が当たっているのに刺さらない、ということは、手を変え品を変えて投げ続けたって結果は変わらない、という可能性が高い。


 正面から投げている限り、龍魚は俺の攻撃を全部避ける。俺が龍魚の水の刃を避けているのと同じで。


 こうなると、根本的な部分の見直しが必要である。

 

 ――仕方ない。次のイメージトレーニングだ。


 俺は気持ちを切り替え、次の狩猟計画に移行するのだった。





 狩猟計画は、後に行くほどリスクが高い方法になっていく。


 できれば、比較的安全な一つ目の計画で狩ってしまいたかったが……まあ、そううまくはいかないか。


 対峙することで知ることができた龍魚の情報を加味し、第二計画に入る。


 ――俺の「素養」リストの中に、使い道に非常に困る……というか、使い道が極端すぎるものがある。


 その中の一つである、「尊顔の美黒(ワンポイント)」。


 この「素養」は、一時的に身体のどこかに一つほくろを作る、という変装かイメージチェンジくらいにしか使えないだろう、という偏ったものである。

 もちろん、狩りに役に立つ「素養」ではないことはすぐに判断できる。


 オリジナルでは、他者のほくろを消したり付けたりできるらしい。

 「俺のメガネ」で再現できるほくろは、一時的なものに限られるので、更に使い道に困るのだが。


 今はこれが使えるかもしれない。





9/30日の活動報告にて刹那の説明をしております。


気になる方は目を通してみてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「刹那」を探し求めて話に集中出来なかった(笑)
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