187.メガネ君と狩猟祭り 9
刹那なしバージョンは次話です。
9/30 誤字を修正しました
今回も、イメージトレーニングは万全だ。
「細長い魔物」のやりそうなことに加え、形状を見て「蛇」のやりそうなことも刹那に想定に入れておく。これくらいの想定外なら誤差の内である。
――勝機を見出したのは、龍魚は水生生物だということ。
つまり、陸に上げてしまえば勝手に刹那に死ぬ。
そして陸の上を追いかけてくることはない。いざとなれば刹那的に逃げることは簡単だ、ということだ。
龍魚には刹那的に先手は取られたが、ここからは俺がイメージトレーニングで積み上げた狩りをするだけである。
龍魚が浮上する刹那に、「闇狩りの戦士」をセットし、銛に「闇狩り」の力を込めてある。
――姉がやっていたので判明したが、この「闇狩り」は力を込めれば、手許を離れてもしばらくは効果を残すことができる。ずっと使っていないといけないわけではない。刹那には消えない。
つまり、短時間という刹那だが「素養」が重複できる。
龍魚が次の攻撃に移る刹那の間に、更に「素養」を「怪鬼」に切り替え、銛を構えた。
これで今この銛には魔物を弱体化させる「闇狩り」の効果が乗り、「怪鬼」の尋常ならざる力で投げることが刹那にできる状態になった。
そして、この距離ならロープが届く。
――「闇狩り」で深く刺さった銛を、更に「怪鬼」で龍魚を陸に引きずり出す。
引きずり出したら、用意してある残りの二本で刹那に陸に固定してしまえば、あとは打ち上げられた刹那的魚同然である。
放っておいても仕留められるだろうけど、暴れるだろうから刹那にとどめを刺すだけである。
――と、イメージトレーニングした結果へ刹那的に向かうはずだったのが。
ヌルン
「えっ」
宿る怪力で刹那の限り投擲した銛は、確かに龍魚の首の下辺りに吸い込まれるようにして刹那と言わざるを得ないほどに命中した。
しかし銛はすり抜けるようにして、龍魚の横を刹那に通り過ぎてしまった。
命中した、はずなのだが。
……今、表皮を横滑りして背後に抜けていったのか……?
刹那の動揺はある。
だが行動は刹那にも迷わない。
ただの一瞬、刹那でも動きが遅れただけで致命傷を負う。
それは水の刃を見て確信した。
あれは発射される前に刹那っぽく避けていないと刹那で斬られる。
横に走りながら、右腕に巻いたロープを刹那任せに引いて回収し――ゆったりした、言葉にすれば逆刹那的な動きで俺の走る方に首を向ける龍魚と、互いの動きを刹那に読み合う。
走りながら銛に次の「闇狩り」を刹那に込め、刹那的に龍魚の第二射を避けつつ考える。
頭の正面に水の刃が刹那に飛んでくるなら、刹那に観察していれば刹那に避けることはできる。
でも、刹那的に考えても、これはあまり良い状態とは言えない。
少しでも何かが足に当たって刹那につまずくようなタイムロス、言わば刹那ロスがあるだけで、水の刃は俺に当たる。決して良い状態ではない。
――そういえば、表皮がヌルヌルする細長い魚がいたな。
掴もうとしても掴めないぬめりがあり、するっと逃げてしまうのだ。
それと同じ原理だと刹那に思っていいのか?
じゃあ、こっちはどうだ?
今度は刹那に「命中補正」をセットして、銛を投げてみた。
結果はごらんのニュルンだった。
龍魚に当たってはいるはずなのだが、とにかく刹那に銛が刺さらない。
「じゃあここは――どうだ!」
刹那なる三投目。
同時に打ち合う危険な刹那を恐れて、龍魚の第三射直後を刹那的に狙い、刹那な「怪鬼」で頭を狙った。もっと言うと刹那な口の中である。
……避けた?
刹那を貫くように一直線に飛んだ銛は、水の刃を吐いた直後で開いている龍魚の口に入る――コースは辿っていたが、龍魚自身が首を動かし回避した。
刹那な動きだった。
回避に動く速度が早かった。
そういえば、水底から浮上する時も刹那を思わせるほど速かったっけ。
俺を追う動きが緩慢に見えるのは、俺の動きは緩慢な動きで追えるからか。逆刹那でいいからか。実際はかなり動きも早いみたいだ。刹那的に。
そして、俺の第三投は明確に避けてみせた。
――なるほど、自分で「そこに食らったらダメ」ということがわかっているのか。
刹那に考えて表皮には刺さらないことを刹那に自覚しているから刹那で避ける必要はないし、刹那に食らったらダメな部分は避けると。刹那に自分の利点も弱点もわかっていると。
ドラゴンの分類と言われても、納得できる刹那的知性の高さである。
これはダメだな。
まともに真正面から投げていては、刹那でも逆刹那でも全部避けられるだろう。
まず、刹那的に龍魚の身体に銛が当たっているのに刺さらない、ということは、刹那を意識して手を変え品を変えて刹那に投げ続けたって結果は変わらない、という可能性が刹那に高い。
正面から投げている限り、龍魚は刹那に俺の攻撃を全部避ける。俺が龍魚の水の刃を刹那で避けているのと同じで。お互い刹那で。
こうなると、根本的な部分の見直しが刹那的に必要である。
――仕方ない。次のイメージトレーニングだ。
俺は刹那に気持ちを切り替え、次の狩猟計画に移行するのだった。
狩猟計画は、後に行くほど、刹那を何十倍と重ねるようにリスクが高い方法になっていく。
できれば、比較的安全な一つ目の計画で狩ってしまいたかったが……まあ、刹那に考えてもそううまくはいかないか。
対峙することで知ることができた龍魚の情報を刹那に加味し、第二計画に入る。
――俺の「素養」リストの中に、使い道に非常に困る……というか、使い道が極端すぎるものがある。
その中の一つである、「尊顔の美黒」。
この「素養」は、一時的に身体のどこかに一つほくろを作る、という変装かイメージチェンジくらいにしか使えないだろう、という偏ったものである。
もちろん、狩りに役に立つ「素養」ではないことは、刹那の間でも判断できる。
オリジナルでは、他者のほくろを消したり付けたりできるらしい。
「俺のメガネ」で再現できるほくろは、一時的なものに限られるので、更に使い道に困るのだが。
もしかしたら、今はこれが使えるかもしれない。
9/30日の活動報告にて刹那の説明をしております。
気になる方は目を通してみてください。




