第98話「誰もが勇者」
「三年は、課題がないのは、ありがたいんやけど」
「夏期講習やら、補習やらで」
「やらなあかんことは、ぎょうさんあるんよね」
「僕たち四人は、補習は免れたけど、講習は半強制だもんね」
「自由参加やけど、参加しない自由は無いからなぁ。数学を取ってるのんが、俺と冬彦で」
「国語を取ってるのんは、あたしと秋ちゃん」
「社会は、うちしか取ってなくて」
「理科を取ってるのは、僕だけなんだね」
「ほんで、英語だけは、全員、取ってるんやな」
「別に、バブル姫の機嫌を取るわけやないんやけど」
「どのみち、試験で使うことになるし」
「配点が、他の教科より高いもんねぇ」
「何で、日本の大学の試験やのに、英語を重視されなあかんのやろうな」
「ほんまに、それに尽きるわ。何でなんやろうなぁ」
「仕方ないわ。ヨーロッパ人が、世界中のあちこちに植民地を作ってる最中に、日本は鎖国してたんやもの」
「不公平だけど、今さら変えようが無いよねぇ」
「早い者勝ち、言うた者勝ちか」
「そうやね」
「あとは、気付いた者勝ちってところも、あるやろうね」
「知ってることが多いほうが、より賢い選択肢に進めるわけだね」
「それは、受験にも言えることやな。敵を知り、己を知れば」
「百戦、殆うからず。よぅ、色んな先生が口にしてる標語やね」
「彼を知りて己を知らば、百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一たび勝ち一たび負く」
「彼を知らず己を知らざれば、戦ふ毎ごとに必ず敗る。孫子の兵法の一つだね」
「現役生にとって、夏は試験の出来が決まる天王山らしいから」
「あとで悔しい思いをせんように、頑張らんと」
「あら。頑張らなくても、ええんやない?」
「傾向と対策による、一種のゲームだと思えば、楽しんだ者勝ちだよね」
「攻略本や、導師も居る訳やしな」