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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
95/164

第95話「交差」

「国立大付属って、詰襟やったよね、中之島くん?」

「そうやで、部長さん」

「今でも、制服は、取って置いてあるのん?」

「取ってあるよ。上着も、スラックスも」

「差し支えなかったらで、ええんやけど、しばらく貸してくれへんかな?」

「別に構わへんけど、何で?」

「白蘭会の時の同級生が、今度の白蘭祭で、男装喫茶をすることになってね。ほんで、ブレザーは何着か集まったらしいんやけど、詰襟が全然集まってへんらしいのんよ」

「なるほどな。それやったら、会長と、あと樟葉にも聞いてみるわ」

「助かるわ。おおきに」


「俺の中学時代の制服なんか、どないする気やねん、中之島?」

「これも、部長さんのためなんですよ」

「鳳の? ますます、意味がわからへん」

「いいから、詳しい理由を聞かずに、貸してくださいよぉ」

「えぇい、離れろ。暑苦しい奴やな」

「痛っ。下敷きで叩くことないやないですか」

「この蒸し暑い時期に、へばりつくからや。こら、引っ張るな。服が傷むから、離せ」

「先方が、貸してくれると、確約するまでは、当方は、断固として、斗う所存であります」

「わかった、わかった。変なアジ演説をするな。帰りに、取りに来い」

「よっしゃあ。会長、おおきに」


「樟葉、ちょっと」

「何っすか、セイさん。漫画なら、朝に渡した分だけっすよ?」

「中之島先輩や。あと、それとは違うことで、頼みがあるんや」

「誰も聞いてへんから、問題ないっすよ。それで、何の用っすか?」

「中学の学ランは、まだ持ってるか?」

「あるっすよ。この春まで着てたっすから」

「貸してくれ」

「何でっすか? セイさんも、サイズ違いで、自分のを持ってるっすよね?」

「ええから、黙って貸せ」

「ちゃんと返してくれるんっすか?」

「用が済んだら、とっとと返す」

「それなら、ええっすよ。明日、持って来るっす」


「持って来たよ、部長さん」

「おおきに。二人とも、貸してくれたんやね」

「そうやねん。チェック柄の紙袋に入れてあるのが、会長。薔薇のリース模様の紙袋に入れてあるのが、樟葉。ほんで、斜めのストライプ柄の紙袋に入れてあるのが」

「中之島くんのやね?」

「そう。内田さんのアイデアで、百貨店で仕分けたんや」

「分かりやすいわ。楠川中学は、黒地に金ボタンで、国立大付属は、紺地に銀ボタンなんやね」

「国立大付属は、高校と一緒なんや」

「白蘭会も、中学高校とも、同じ制服なんよ。あら、樟葉くんのは、胸ポケットに名札が入れっぱなしや」

「ほんまや。そういえば、こんな名札やったわ」

「クラスがイロハなんやね、国立大付属は」

「三年間、ハ組やってん。白蘭会は、たしか、雪月花の三クラス制やったよね?」

「一時、星組があったらしいんやけど、基本は、その三クラスよ」

「何組やったん?」

「一年は月組で、二、三年は雪組やったわ。クラス章も、それぞれのシンボルマークで、雪組は、六角形の雪の結晶を表したマークなんよ」

「へぇ」

「せやけど、不思議な感じやわ。お互い、そのまま内部進学してたら、こうして話す機会があらへんかったやろうと思うと」

「ほんまに、そうやな。平行線が、どこかで曲がったんやな」


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