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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
92/164

第92話「原点より左から」

「アヒルのようで、アヒルでない。いたちのようで、いたちでない」

「それは何やと、訊ねたら?」

「カモノハシ、カモノハシ」

「豊竹屋やね、それ」

「中之島レポート、リベンジですよ、会長、書記さん」

「一体、俺らの何を取材する気なんや?」

「もう、いろいろと知ってるやないの」

「今回のテーマは、ファースト・インプレッションです。お二人の、初対面での第一印象を、お聞かせ願いたく存じまする」

「第一印象って言うてもなぁ」

「初めて会うたんは、保育所らしいんやけど、覚えてへんのよねぇ」

「それならば、お互いの、一番古い記憶で構いません」

「それやったら、幼稚園の時やろうか。根暗そうな、湿っぽい奴やと思うとったんや」

「うちも、幼稚園の時やね。乱暴そうな、怖い人やなぁって思うとったんよ」

「ほう、ほう。そんなお二人が、どうして仲良うなったんです?」

「きっかけは、宿泊保育やろうなぁ。覚えてるか、西園寺?」

「忘れる訳、あらへんやないの。川遊びで、足を滑らして、溺れかけたことがあったんやけどね」

「そこに会長が現れて、引っ張りあげたと?」

「幼稚園児に、そんなことが出来るかいな。数人が、西園寺を囲んで、何やら、おろおろしてるのんに気ぃついたから、ひとっ走りして、先生を呼びに行ったんや」

「ちょっと、離れたところまで行ってしもうてたから、危ないところやったんよ」

「知られざる、感動秘話があったんですね」

「でも、そのあとに、西園寺は」

「それは、言わせへんよ、春樹くん」

「書記さんと何があったんです、会長?」

「言うたら、その倍以上に、俺の恥ずかしいエピソードを暴露されそうやから、やめとくわ」

「気になるところですが、今回は、ここまで。以上、会長と書記さんのファースト・インプレッションでした。また、次回をお楽しみに」


「さて、さて、さてさて、さてさて。さては、文金高島田」

「嫁いで、どないするんよ、副長」

「ナイス突っ込みですよ、隊長。ところで、今週の土曜日って、何曜日でしたっけ?」

「さぁ。水曜日なんじゃないかなぁ」

「おっ。良いですよ、会計さん。ここで、中之島レポート、リターンズ」

「日曜の朝にやってる、戦隊ヒーローみたいなポーズやね、副長」

「ヘルメットやベルトに、アールとでも書いてあるのかな?」

「今回のは、ファースト・インプレッションをテーマに、独自に取材をしているのですよ。さぁ、初対面での第一印象を、包み隠さず、お聞かせください」

「分かったから、マイクもどきのバトンを、こっちに押し付けんといて」

「バトンなんて、どこで手に入れたのさ?」

「さぁ、さぁ。いつ、どこで、どうして出会ったんですか?」

「最初に会うたんは、小学校の時やね。四年生の始めに、あたしのクラスに、冬彦くんが転入してきたんよ。シャツに、ネクタイまでしとったから、印象に残ってるわ」

「前の学校は、公立でも制服だったんだ。それに、初めて会う訳だから、失礼の無いようにって考えもあってね」

「会計さんは、たとえ私服でも、ティーシャツみたいに、襟のない服は着ませんよね?」

「あと、デニムも、あんまり穿かへんよね。小学校の時から、そうやってんけど、何で?」

「襟がないと、どこか落ち着かないし、ボトムスには、折り目が無いとね」

「なるほどですね。それでは、お互いに、好印象やったんですか?」

「それが、そうでもないのんよ。会うてから、しばらくは、他人の顔色を気にしてばっかりで、ナヨナヨしとって、どこか、いけ好かへんなぁって思うてたんよ」

「今だから言うけどさ。南方さんは、ガサツな乱暴者だと思ってたんだ」

「……強ち、会計さんの見立ては、今も外れてへんような」

「何やって、副長?」

「何でもないですよ、隊長。ゴッホン。それで、いつ、どないして仲良うなったんですか?」

「多分、きっかけは、その年の秋にあった、地域学習やね」

「二人一組でフィールド・ワークをすることになったんだけど、帰りに迷子になったんだ」

「それから、それから?」

「日も暮れるなかで、途方にくれかけてんけど、冬彦くんが、カフェで培ったコミュニケーション力で、近くの大人の人に聞き込んでくれたおかげで、無事に集合場所に辿り着いたんよ」

「そこで、僕までパニックになったら、事態が悪化すると思ったからね」

「お二人に、そんな出来事があったとは、驚きですね。以上、隊長と会計さんのファースト・インプレッションでした。それでは、一旦、カメラをスタジオにお返しします」

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