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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
85/164

第85話「空想科学」

「今日も、新しい朝がやってまいりました。希望と喜びの一日を、送りましょう」

「中之島くん、お早う」

「お早う、部長さん」

「せ、中之島先輩」

「お早う、樟葉。――気ぃつけろや、ライ」

「お早うっす、先輩。――すんません」

「お早う、樟葉くん。それは何?」

「これっすか? 漫画っすよ。だいぶ前に、ドラマか映画になった奴っす」

「オーエルが、朝起きたら、上司と入れ替わってたって話やんね?」

「そうっすよ。中之島先輩が、おおっぴらに家で漫画が読めるようになってらしいんで、色々と貸してるんっす。はい、先輩」

「おおきに、樟葉。前の分を返すわ、ほら」

「面白かったっすか、こっち?」

「落ちが、今ひとつやな」

「これは、読んだことあらへんわ。どんな話なん?」

「読んでみるっすか? あ、でも、上巻がないっすね」

「無くても、ええんと違うかな。ざっと、説明するとやね、この、表紙に書かれてるのが、主人公。ほんで、このサラリーマンが、ある日に街中で、自分とそっくりな人間を見かけるねん」

「ドッペルゲンガーやね」

「そうっす。主人公は、こっそり、そいつの後を追うんすけど、そこで、自分が住んでるのんと、ほとんど同じようなマンションに、そいつが入っていくのを突き止めるんっす」

「そのあと、何やかんやで、何とか、そいつのマンションに侵入することに成功するんやけど、おっと。これ以上は、言われへんわ」

「主人公のドッペルゲンガーの正体が、そこで明らかになるんやね?」

「そうなんっすよ。あとは、読んでみてのお楽しみっす」

「でも、あの落ちはなぁ」

「腑に落ちへんのん?」

「俺は、あれでええんと違うかって、思うんすけどね」

「よぅ、考えてみぃ。もしも、自分が主人公と同じ立場やったら、納得するか?」

「まぁ、納得しないっすね」

「不条理ものなの?」

「そんなところや」

「時に理不尽なのも、リアリティがあってええんっすけどね」

「その辺も、読んでみて判断させてもらうわ。じゃあ、借りるわね」

「どうぞ、どうぞ」

「これの前に、樟葉に借りた漫画のほうが、面白かったんやけどなぁ」

「何て漫画なん?」

「マイナーなんで、タイトルを言うても、ピンと来ないと思うっす」

「内容は、大きく、二本立てになっとって、一つは、過去の自分と入れ替わる話で」

「もう一つが、未来の自分と入れ替わる話っす。二つが、お互いに連関し合うて、複雑になっていくんっす」

「へぇ」

「口で説明するより、実際に読んだほうが早いやろうって。百聞は、一見にしかずや」

「そうっすね。明日にでも、持って来るっす」

「急がなくても、ええのに」

「早いうちに、約束しといたほうがええんやで、部長さん。樟葉は、三歩も歩いたら、歩く前のことを覚えてへんのやから」

「いくらなんでも、それは無いっすよ、先輩」

「どうやろうな。今日、会うてすぐかって、前の約束を忘れかけとったやないか」

「約束って、何なん、樟葉くん?」

「それは、言えないんっす。とにかく、明日、持って来るっす」

「それじゃあ、明日、お願いね」

「忘れるなや」

「了解っす。任せてください」


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