表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
82/164

第82話「思考停止」

「あらかじめ、雛形が用意されとったら」

「何も考えんでも、それなりに済ませることが出来るんよね」

「でも、あんまり楽なほうに流れ過ぎると」

「形だけの無駄が、量産されるんよね」

「決まり文句が、それに相当するんやろうな、南方」

「そうやね、春樹。予定調和やね」

「無難といえば、無難だけど。どこか物足りないよね、西園寺さん」

「ほんまにね。春樹くんは、あんまり、そういうフレーズを使わへんよね?」

「聞くほうに、退屈させてしまうからな」

「会長が春樹になってから、集会が短くなったんよね」

「省略できることは、省略したもんね」

「午後から集会の日は、いつもより一本早いバスで帰れるようにって、頑張ったんよね」

「西園寺と冬彦にも、迷惑を掛けてしもうたけどな」

「結果オーライってことで、ええんと違う? ね、冬彦くん」

「大変だったけど、言いたいことを言ってくれたからね」

「もし、そのままやったら、どうなってたんやろうね?」

「赤組、優勝おめでとう。白組も、よく頑張りました」

「体育祭の表彰式で、お馴染みやね」

「毎年、校長先生が言うんだよね。じゃあ、これは? 本日は、晴天に恵まれ、多くの皆さまにお集まりいただけましたことを、心より、厚く御礼申し上げます」

「式典の始めやね。もし、雨が降ったら、お足元の悪い中、となるんよね」

「これは、どうやろう? 拝啓、風薫る季節となりました。いかがお過ごしでしょうか」

「古風な手紙とか、パンフレットに載ってる、冒頭挨拶やね」

「こういうのも、あるよ。平素は、本校の活動にご協力賜り、誠にありがとうございます」

「教職員から、保護者へ宛てての連絡に書かれてる文章やね」

「比喩表現にも、使い古されたものが多いな。抜けるような青い空」

「チョコレートのような光沢」

「カモシカのようにすらりとした足」

「走馬灯のように駆け巡る」

「さんざん聞かされて、耳に胼胝ができるわ」

「それも、ステレオタイプやね」

「あちこちで目にして、聞かされて、言わされて」

「その時に、退屈した記憶を忘れて」

「紋切り型に安住してしまう」

「そんな大人には、なりたくないもんやね」

「自力でよく考えろって、大人はよく言うけどさぁ」

「言うてるほうが、自分の頭で考えてへんよね」

「されて良かったことをしてあげて」

「やられて嫌やったことはせぇへん」

「本来の伝統は、そうやって好転させるべきだよね」

「分かっとっても、なかなか出来へんものやけどね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ