第81話「意趣返し」
「お早うございます。やる気、元気、本気、でお馴染みの中之島正です」
「お早う。ピンクのスーツの議員か、中之島?」
「先輩」
「よぅ、樟葉」
「お早うっす。あ、話し中やったっすか、会長?」
「構わへん。大した話は、してへんからな」
「珍しいな、樟葉。この辺には、三年生の教室しかないんやで?」
「三年生に用があるからっすよ、中之島先輩。会長に、質問があるんっす」
「俺に、質問?」
「直球で聞くっすよ。会長さんは、記者倶楽部の部長さんと、付き合ってるんっすか?」
「俺が、南方と付き合ってる、だと?」
「あれ、会長? 違うてるんですか? よく、一緒に居はるから、てっきり」
「俺も、そう思って聞いたんっすけど?」
「別に、南方とは、そういう関係では」
「じゃあ、良いっすね。俺、部長さんに告白するっすよ?」
「おぉ。樟葉は、年上がタイプやったんか。止めなくて、ええんですか、会長?」
「あぁ。俺に聞かんでも、好きにすれば、ええやないか」
「そうなんよ、鳳さん」
「それは、面白そうですね、夏海さん。あっ、瑠璃ちゃんや」
「お早う、華梨那」
「お早う、千林さん」
「お早うございます、南方先輩。ちょうど良かった。先輩に、聞きておきたいことがあるんです」
「何、何。何でも聞いてよ」
「単刀直入に言いますね。先輩は、東野会長と付き合うてますか?」
「えっ。あたしが、春樹と?」
「違うんですか、夏海さん?」
「一緒に居はることが多いから、付き合うてるんやとばかり」
「ちゃうちゃう。春樹は、そういうのんと違う」
「それなら、あたし、会長に告白しても、構いませんよね?」
「瑠璃ちゃん。ああいう人がタイプやもんね。ええんですよね、夏海さん?」
「ええも、何も。勝手にしたら、ええ話やん」
「この式とこの式で、エックスの範囲が決まる訳や。ここまでは、ええか、南方?」
「何とか、理解できるわ、春樹」
「それで、と。ん? ちょっと、静かに。……何か、物音がせぇへんか?」
「気のせいと違う? もしくは、ネズミでも居るんやろうって」
「物音は、止んだな。続けるで。ほんで、グラフに書くと、両端は含まへんから、白丸で書く訳や」
「これは、そういう意味やったんか」
「記号の意味は、中学で習うてるはずなんやけどな」
「覚えてへんわ」
「ほんなら、今、覚えや。それにしても。戻って来ぇへんな、西園寺」
「冬彦くんも、玄介さんに呼ばれて、お店のほうに行ったきりやね」
「どないしたんやろうな?」
「まぁ、そのうち戻るんと違うかな」
「……南方」「……春樹」
「春樹から、先にどうぞ」
「あ、いや。南方から、言え」
「もう。こういう時だけ、レディーファーストやねんから。ねぇ、春樹。えぇっと、千林さんから、その、何か言われた?」
「いや、何も聞いてへん。そういう南方は、あぁ、樟葉くんから、何か言われたか?」
「樟葉くんって?」
「ほら、中之島の、中学時代の後輩で」
「あぁ、あの子か。こっちも、何も」
「そうか」
「そうよ。でも、何で、そんなこと聞くのんよ?」
「南方かって、聞いたやん」
「あたしは、その。春樹が、他の人に夢中になったら、それは、嫌やなって思うし。せやから、あたし」
「もう、それ以上、何も言わんでええ。俺も、南方と一緒や」
「春樹」
「南方」
「はい。お二人さん、そこまでや」
「もう少し、続きを見たいところだけど、場所を移してね」
「うまくいって良かった。ね、西園寺さん」
「作戦成功やね、北条くん。お互いの気持ちに、やっと気ぃついたみたいで、ほっとしたわぁ」
「げっ。西園寺」
「冬彦くんも。ご両親まで揃って」
「僕らだけじゃないよ」
「もう、えぇよ」
「クローゼットに四人は、きついわ。な、華梨那」
「ほんまに、息苦しかったわぁ」
「樟葉。足、踏んでへんか?」
「俺やないっすよ。それ、千林先輩っす」
「中之島に、樟葉くん」
「鳳さんに、千林さんまで」
「西園寺。お前の作戦か?」
「えげつないわ、秋ちゃん」
「中之島くんを使うて、屋上に呼び出して、仲直りさせたのんは、誰やったっけ?」
「因果応報だよねぇ」