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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
79/164

第79話「春を思う期間」

「切れ」

「嫌や。まだ、切りたくない」

「前髪が、目に掛かってるやないか。不衛生やから、切りに行けって」

「こうやって、留めといたら、問題ないもん」

「そんな雑な留め方で、ええ訳ないやろうが」

「ええのんよ。こういうのが、はやってるんやから」

「流行かどうか知らんけど、見てて鬱陶しいって言うてるんや。切れ」


「なぁ、西園寺。女子は、どれくらいで、髪を切るんや?」

「そうやねぇ。人それぞれやろうけど、うちは、三ヵ月にいっぺんぐらいやね」

「あ、いや。頻度やなくて、長さの話なんや」

「そっち? それこそ、人によるわ。青衣ちゃんに聞かれたん?」

「青衣が、いつまで経っても、髪を切りに行かへんもんやからな」

「伸ばしてみたいんやろうか? 同級生に、長い髪の居るのんかもしれへんなぁ」

「せやけど、そんな、顰に倣うようなこと、止めさせへんと」

「あんまり、こういうこと言うたら何やけど、青衣ちゃんに、ロングヘアは似合わへんからね」

「第一、不潔やからな」

「それは、言うたらあかんよ」

「えっ。不衛生やから切れって、言うたんやけど」

「あらら。そら、言うこと聞かへん訳やわ。ここは、うちが執り成してあげても、ええんやけど?」

「おおきに。ん? その手は何や?」

「朝のバスで、アルバイト代が入ったって、言うてたやん。千円で、手を打つわ」

「他人の足元を見よって」


「声変わりって、いつぐらいなんやろう?」

「朱雀くんの話?」

「そうなんよ、秋ちゃん。もう、高い声は出ぇへんらしいねん」

「そうやね。春樹くんも、中学のあいだに、すっかり声が低うなったもんね」

「冬彦くんは、あんまり変わったような印象がないんよね」

「元が、低いめの声やったんと違う? 春樹くんは、元が高いめの声やったから」

「あの、春樹が?」

「そうよ。あぁ、そうや。五年生の時の、学芸会の映像があるねん。彪子伯母さんが撮ったものやねんけどね。帰りに、観て帰りよ」

「小学生の春樹か」

「フフフ。くれぐれも、春樹くんには内緒よ」


『もう、おかあちゃん、パートに行かなあかんのに、あんたって子は』

「おかん役やね、春樹。エプロンして、パーマの鬘まで被って」

「まだ、背が伸びる前やから、ちょうどええんよ」

『そんな、テレビばっかり見て、マンガばっかり読んどったら、頭、パーになるよ。それより、早う支度して、散髪に行っておいで。そんな、ざんばらざんな髪型してからに』

「声質は、春樹くんのお母さんに、よぅ似てるよ」

「そうなんや。あたしは、会うたことないから」

『ええから、こっちおいでって。もう、この子は、どうして、こうなんやろう。ちょいと、お父ちゃん。まぁ、お父ちゃん、何してるんよ?』

「ははは。お父ちゃん、お母ちゃんが子供に言うたこと、自分に言われたと勘違いしてたんや」

「これが、落ちなんよ。あとは、全員出てきて、お辞儀するだけやから、止めるよ。参考になった?」

「なった、なった。なったけど、明日、春樹に会うた時に、思い出し笑いしてしまうかもしれへんわ」

「フフフ」

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