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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
78/164

第78話「水面下で」

「だんだん、暑うなってきたね、冬彦さん」

「そうだね、華梨那さん」

「ポロシャツを着てる子も、ちらほらと居るね」

「本当。気が早いね」

「でも、行きしなと帰りしなは、まだ肌寒いから、上着は手放されへん」

「そうだね。日中は、晴れると暑いけどね」

「ねぇ。この夏、一緒に海に行かへん?」

「海かぁ」

「乗り気やないねぇ」

「そんなことないよ。良いよ。行こう」

「やった。じゃあ、決まりやね」


「泳げへんくせに、海に行くって言うたんか。何でまた、そんな安請け合いを」

「だって、落ち込ませたくないじゃないか」

「合理性を重視する、いつもの冬彦らしくないセリフやな。まぁ、ええわ。それで、俺は何をすればええんや?」

「水泳を習ってたんでしょう? 泳ぎを教えてよ」

「小学生の時の話やぞ、それ。西園寺に聞いたんやな?」

「誰から聞いたか、なんて、今はそんなこと、関係ないじゃないか」

「教えてもええけどな。冬彦にとっては、しんどい思いをするやろうなってことが、目に見えてるからなぁ」

「そこを、何とか。経験者は、東野くんだけなんだ」

「大した経験やないけどな。まぁ、泳がれへんまま大人になるよりは、ここで、克服したほうが、ええのんかもしれんな」

「引き受けてくれるんだね?」

「あぁ。そのかわり、それなりに覚悟をしとけよ」

「もちろんだよ」


「連休で、子供連れのファミリー層で混雑する、市営総合運動場のプールに、やって参りました」

「何で、副長くんまで?」

「一人では、手に負えへんかもしれへんなぁと思うてな。応援を要請したんや」

「さぁ、泳いで、泳いで、泳ぎまくりましょう」

「人選ミスじゃないかい?」

「そんなことは、あらへん。まずは、水に身体を慣らすところからや。一メートルぐらいの深さまで、歩いて行こう。俺が、右腕を持っておくから、中之島は、左腕を持ってな」

「了解ですよ、会長。さぁさぁ、ずんずんと行きましょう」

「待って。いきなりだよ」

「ええから、俺たち二人を信頼して、歩いてみぃ?」

「そうですよ、会計さん。ここは、海のない埼玉やないんですよ? 泳げなくて、どうします」

「埼玉県民を、何だと思ってるのさ」

「金槌の集まりと違うんか? いやなら、ここで止めてもええんやで?」

「ここで止めたら、格好悪いですよ、会計さん」

「僕個人としての問題を、埼玉県民としての問題にされては、たまらないからね。誤解を解かないと」

「よし。その調子で行こう」


「大丈夫か、冬彦?」

「しっかりしてくださいよ、会計さん」

「けほっ、ごほっ。何とか」

「問題は、息継ぎやな」

「会計さん、沈みやすい体型ですからね」

「まだ、一人で泳ぐのは、無理だよ」

「休憩時間が終わったら、一段階前に戻って、やり直そうか」

「諦めずに、再チャレンジですよ、会計さん」

「そうだね。頑張ろう」

「よし。鐘が鳴ったから、再開するで。ここで逃げたら、一生、逃げ続けなあかんからな」

「心配しなくても、今度は、うまくいきますよ、会計さん」

「ここまで来たからには、クリアしないとね」


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