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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
74/164

第74話「山と谷」

「うぅむ」

「どないしたんや、冬彦。そないに、眉をひそめて。悩みごとか?」

「違うわよ、玄介さん。いつもの頭痛よ。ね?」

「うん」

「しんどいこと、あらへんか? 何やったら、学校を休んでもええんやで?」

「心配しすぎよ、玄介さん。まぁ、バスに乗るのがきつそうなら、送ってあげるけど、どうかしら?」

「お願いするよ、母さん」

「それじゃあ、車を出して来るわね」


「お早う、華梨那ちゃん」

「あぁ、秋さん。お早うございます」

「どうかしたのん? 元気があらへんやん」

「大したことと違うんですけど、聞いて貰うてもええですか?」

「ええわよ。何かあったんやね?」

「えぇ。職員室に、日誌を取りに行く途中に、冬彦さんを見かけたんで、声を掛けたんです。『冬彦さん、お早うございます』って。そしたら、冬彦さん、低い声で『あぁ』とだけ言わはってね。そのまま、教室に向かいはったんよ」

「急いでたのと違う?」

「何ぞ、用事でもあるのんやろうかって思うて、悪いなぁとは思いながらも、気になるから、あとをつけていったんやけど」

「これというて、理由になりそうなことが、全然あらへんかったんやね?」

「そうなんよ。そうやから、何か機嫌を損ねるようなことを、してしもうたんと違うかと思うて」


「今、言うたようなことがあったんよ、夏海ちゃん」

「そういうたら、今日は朝から、冬彦くんに会うてへんかったなぁ」

「何か、夏海ちゃんのほうで、心当たりはあらへん?」

「多分、この天気が、原因なんと違うかなぁ」

「今日は、曇り空やけど。それが、北条くんの不機嫌と、何の関係があるのんよ?」

「冬彦くんも、ナイーブで、デリケートやから」

「空模様で心理状況が変わるほど、感傷に浸るタイプとは違うと思うんやけど?」

「そんな、センチメートルとは違うんよ、秋ちゃん」

「センチメンタルよ、夏海ちゃん」

「そうやね。とにかく。冬彦くんは、気圧が急に変わると、ひどい頭痛になる体質なんや。きっと、帰る頃には、雨が降り出すんと違うかなぁ」

「困った体質やね」

「天気が分かるから、便利やけどね」


「肩とか、鞄とか、濡れそうになったら言ってね、華梨那さん」

「分かりました。でも、あんまりこっちに傘を向けると、冬彦さんのほうが濡れはるんと違いますか?」

「僕は、少しぐらい濡れても、気にしないから。それは、そうと。朝は、悪かったね」

「とんでもない。冬彦さんが頭痛持ちやって知らへんかった、こっちがあかんのです」

「ここのところ、大きな天気の崩れが無かったから、油断してた。事前に言っておくべきだったね」

「ひゅう、ひゅう。お熱いこってすなぁ、お二人さん」

「あら、この前の」

「知り合いかい?」

「一年一組の樟葉礼多っす、会計さん。以後、お見知りおきを。お噂は、かねがね、中之島先輩から」

「副長くんの後輩って、君のことだったんだね」

「そうっす。あっ、バスが来た」

「本当だ。急ごうか、華梨那さん」

「えぇ、急ぎましょう」

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