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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
73/164

第73話「類似」

「パティシエこだわりの、滑らかで、しっとりした味わい」

「ビロードのような、しなやかさと、上質なコク」

「職人仕込みの、蕩けるような、やわらかさ」

「新鮮で、濃厚な口解け」

「飲み物、買うてきたで。ほら、冬彦」

「ありがとう、東野くん」

「春樹くん、おおきに」

「何の話をしてはったんですか、皆さん? はい、部長さん」

「おおきに。プリンの話なんよ、中之島くん」

「副長、おおきに」

「同じ、プリンと銘打っていても、ピンからキリまであるからね」

「それぞれに、定番のキャッチコピーを考えてたんよ、春樹くん」

「何とか限定、とかか?」

「食感や、味ではないんですね」

「季節、先着人数、地域。色々と、応用が利きそうやね、春樹」

「でも、それは、実質の商品特性とは、違うことあらへん?」

「付加価値ではあるけど、残念ながら、実際にプリンを食べて味わう上での違いには、該当しないね」

「たまに、メーカー名と入れ物だけが違うだけなんと違うかなぁ、と思う商品がありますよね」

「原材料が違う、製法が違う、内容量が違う。作ってるほうは、はっきりした違いがあるんや、と思うてるかも知れへんけど」

「買う側は、同じようなもんやと思うてることが、多いんよね」

「リクルートスーツを着た、新社会人みたいなものですなぁ」

「本人たちは、自分は他の人たちとは違うてると思うてるやろうけど」

「傍で見てる分には、クローン人間みたいに見えるんだよね」


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