第68話「旗振り」
「選挙権が、十八歳に引き下げになったね、東野くん」
「あぁ。一ヶ月もしたら、俺宛てにハガキが来てもおかしくない訳か」
「五月生まれやもんね、春樹くん」
「僕は、まだ来年だけど、高校生のうちから、政治に興味関心を持つように、って杭瀬先生も言ってたよね」
「古狸は、社会の教員やからな。自分の授業に、意欲を出して欲しいんやろう」
「それもあるやろうけど、自分の頭で考える力が大事なのは、確かなんと違うかな」
「ある意味、今の日本の国会の様子は、反面教師になるよね」
「その場しのぎの、姑息な言い逃れやら、他人の話を平気で遮って、野次を飛ばす議員やら。幼児以下のマナーで運営されるような、内閣ではなぁ」
「小手先のテクニックを弄したって、最後には、馬脚を現す結果になるもんね」
「正々堂々、フェアに行うことが、長い目で見たときに大事になってくるよね」
「本質に迫らず、枝葉末節に拘泥し、多岐亡羊」
「ほんまにね。でも、何で、あんなに退屈な議論になるんやろうね?」
「机を前にして座るから、すぐに立ち上がれないんだよね」
「分厚い書類を用意するから、話し手に集中せぇへんし」
「会話をするんやったら、ホームルームの時みたいに、黒板を前にして、椅子だけをコの字型に並べたらええんよ」
「自然と黒板に集中するし、みんなの顔が見えるし」
「すぐに立ち歩けるから、意見を書きやすいしな」
「それから、一から十まで準備してから始めようと考えとったら、いつまで経っても、本番に移行できへんよね」
「大枠を決めたら、すぐに行動しないとね」
「ほんで、あかんと分かったら、すぐに引き上げへんとな」
「簡単なことやのに、どうして誰も気が付かへんのやろう?」
「きっと、このままではいけないって、誰も本気で考えていないから、変わらないんじゃないかな?」
「何か問題があるんやないか、と考えへん上に」
「自分には、何も問題がなくて、全部相手が悪い、としか考えられへんのやったら」
「手遅れだね」
「処置無しやな」
「そうでないことを、祈りたいわぁ」
「対象年齢は、下がっても」
「マナーは、向上して欲しいところやな」
「赤、上げて」
「白、下げて」
「白、上げないで、赤、下げない」




