第63話「ニューフェイス」
「お早う、冬彦」
「お早う、東野くん。いよいよ、三年生が始まったね」
「そうやな。冬彦とは、クラスが別になってしもうたな」
「理系と文系で、再編されたからね。南方さんも、二組なんでしょう?」
「そうなんや。今から、家庭科が恐ろしい」
「僕や、西園寺さんの苦労が、分かるんじゃないかな。西園寺さんは、三組なんだよね」
「文系の、もう一つのほうのクラスやな。ところで、冬彦」
「何だい?」
「新しく来た、あの雌狐、どう思う、冬彦?」
「あぁ、体育の魚崎先生か。明るくて、面白い人だよね。授業も、楽しいし」
「俺は、あのニューヨーク仕込みのポップなノリには、どうも、付いて行かれへん」
「ダンスの授業は、気に入らないのかい、東野くん?」
「前の、熾熱燈の授業形態に慣れてしもうてるからなぁ。中学も、同じような感じやったし」
「きっと、そのうちに、違和感が無くなるよ」
「お早う、夏海ちゃん」
「お早う、秋ちゃん」
「いよいよ、うちらが最上級生やね」
「ほんまやね。昨日、入学したばっかりやのに、もう、二年も経ってる」
「住吉先生みたいなことを言うんやね、夏海ちゃん」
「やめてよ、秋ちゃん。もう、あの鉄の女は、ここには居らへんのやから」
「そうやった、離任されたんやったね。新しく着任しはった、社会の杭瀬先生は、博識な人やね」
「あの古狸か。たしかに、よぅけ色んなことを知ってはるけど、あたしは、あの先生は好きやないわぁ」
「あら、何で?」
「話しかたが、お経を唱えてるみたいな感じやから、眠たなってかなわへん」
「ちゃんと、起きてノートを取らなあかんよ、夏海ちゃん。北条くんは、一組なんやから」
「今年度から、理系とは、授業内容が違うてるんやっけ? 春樹のノートだけでは、心許ないもんなぁ。秋ちゃんが、あたしにノートを写させてくれたら、万事、解決やのに」
「自分でやらな、勉強にならへんよ、夏海ちゃん」
「頑張って、睡魔と戦わんとな」