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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
61/164

第61話「市営総合運動場にて」

「ぼ、ん、さ、ん、が、へ、を、こ、い、た」

「それにしても、冬彦と鳳が付き合うことになるとはな。――もっと、声を張らんと、向こうまで聞こえへんで、青衣」

「ほんま、意外やわぁ。ねぇ、秋ちゃん」

「うちは、うすうす、二人の恋心には勘付いとったよ、夏海ちゃん」

「ぼん、さん、が、へを、こい、た」

「冬彦くんにしても、鳳さんにしても、変わった様子は無かったと思うんやけど? ――朱雀。何を奇妙なポーズを決めてるねん」

「俺も、そんな素振りに気が付かへんかったけどな」

「鈍感さんやね、二人とも」

「ぼんさんが、へをこいた」

「なかなか、確信できへんかってんけど、決定打があったんよ。――中之島くん。匍匐前進では、日が暮れると思うんやけど?」

「何が、決め手になったんや、西園寺?」

「わからへんなぁ」

「ぼんさんがへを。いーちー、にーいー、さんまの、しっぽ、ゴリラの、息子、菜っ葉、葉っぱ、腐った、豆腐。そこまで」

「ほら、前に華梨那ちゃんが、ジャージを忘れた時があったやん」

「体操服だけ来て、あたしらの教室まで来た時やね?」

「そう言えば、そんなことがあったな」

「は、じ、め、の、第、一、歩。大股、何歩?」

「三歩」

「あの時の、二人の反応を見てたら、思うたんよ。これは間違い無いやろうなぁって」

「そんなに、変わったリアクションやったんか、南方?」

「うぅん。普通の受け答えやった、と思う」

「小股、何歩?」

「七歩」

「北条くんの目に、戸惑いの色が見えたんよ。ほんで、どうしたんやろうなって思うて、あとで、鎌を掛けてみたんよ」

「そうしたら、白状した訳か。冬彦も、災難やったな」

「秋ちゃんも、いちびりやねぇ」

「ごー、ろく、しち。はい、タッチ」

「フッ。一度は、鬼の立場に置かれるのも、また、一興かな」

「それは、おおきに。今度は、朱雀くんが鬼なんやね」

「よぅ、飽きもせんと、続けられるもんやなぁ」

「精神年齢が、近いんと違う?」

「そうかもしれへんね。でも、そろそろ休ませへんと。熱中症になっても、あかんし」

「そうやな。――おぉい。この辺で、一旦、休憩や」

「あたしは、スポーツドリンクを持ってきたんやけど、二人は?」

「俺は、お茶だけやな。あとは、タオルとか、着替えとか」

「うちは、イースターに因んで、卵型のクッキーを焼いてきたんよ。彪子伯母さんと一緒に、ぎょうさん焼いてきたから、遠慮せんと食べてね」

「わぁ。美味しそうですね、書記さん」

「わーい。クッキーだ」

「先に、手を洗わんか、青衣」

「卵が先か、イースターが先か。それが、問題だ」

「何を、訳の分からんことを言うてるんよ、朱雀」

「いつものことやないか、南方」

「そうか。そう言うたら、そうやね、春樹」

「……いつになったら、二人の鉛の矢は抜けるんやろうなぁ」


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