表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
60/164

第60話「月下氷人」

「坂道、きつくないかい、鳳さん」

「これくらいは平気ですよ、北条さん。この一年、バスのロータリーから赤レンガまでの急坂を、歩いて上ってたんですから」

「そう。でも、無理だったら、いつでも言ってね」

「都心から、ずいぶん遠くまで来ましたね」

「埼玉だからね」

「この黄色いお花、何て名前でしたっけ?」

「フリージアだよ。花言葉は、あどけなさ、純潔、慈愛、親愛の情だよ。菊や樒だと、お盆に来る親戚と被るから、春と秋の彼岸は、季節の花を持っていくことにしてるんだ。あ、ここだよ」


「西園寺いわく、冬彦は、墓参りに行ったそうや」

「春休みやから、居ると思うたんやけどなぁ」

「アポイントメントを取るべきでしたね、隊長」

「冬彦が、こっちに来る前に住んでたところって、埼玉やったよな、南方」

「そうそう。どのへんやったかなぁ。初めて聞いた時、お餅を連想したんやけど」

「中之島ヒント。オーストラリア」

「さっぱり、手掛かりが掴めへんなぁ。たしか、山菜の名前にあったんやけど」


「さっきの話ですけど、北条さんは、好きな人は居らんのですか?」

「気になる人は居るよ」

「誰ですか?」

「機が熟したら、告白するつもりだよ。それまでは、内緒」

「二年生ですか?」

「それは、どうかな」

「機が熟したらって、いつになるか、分かりませんよ? 早いこと、言うてしまったほうが、ええんと違いますか?」

「大学に合格したら、ずっと前から好きだったって言うよ。それで、良いんだ」

「北条さんの、臆病者。卑怯ですよ。目の前のことから、逃げてるだけやないですか」

「そこまで言われると、心外だな」

「結果がどうなるか、なんて気にせんと、素直になればええのんや。あっ、その、わたし」

「君の気持ちは、よく分かったよ」

「待って、北条さん」

「何も言わないで、じっとして。一度しか言わないから、よく聞いてね。……入学式の受付で、一目見た時から、ずっと気になっていました。付き合ってください」


「華梨那ちゃんと、北条くん。うまくいってたら、ええんやけど」

「秋。ちょっと、こっちに来て。手伝ってちょうだい」

「はい、彪子伯母さん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ