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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
56/164

第56話「台風」

「隊長。勘弁したってください」

「あ、副長くんだよ、西園寺さん」

「ほんまやね、北条くん。裸足で走ってるけど、どうしたんやろう?」

「逃がさへんで。まだ、左足が残ってるんやからな」

「あぁ、副長くんも、あれをやられた訳か」

「北条くんも?」

「うん。中学の時に、一度。西園寺さんも?」

「うちは、修学旅行の時に、部屋で」

「あれは、痛いよね」

「中之島くんが、裸足で逃げ出したくなるのんも、頷けるわぁ」


「会長、助けてください」

「どないしたんや、中之島」

「春樹。副長を、捕まえとって」

「今、隊長に捕まるわけにはいきませんって」

「おい。俺を盾にするな」

「追いついたで、副長。観念しぃや」

「何をしてるんや、南方。中之島が、何かやらかしたんか?」

「説明は、捕まえたあとや」

「窮鼠、猫を噛む、中之島正です」

「また、訳の分からんことを。こら、お前ら。俺の周りを、ぐるぐると回るな。バターになるぞ」

「よし、捕まえた」

「うぅむ。残念、無念」

「春樹。悪いんやけど、暴れへんように、こうやって、しっかり抑えといてくれへん?」

「何をする気や?」

「台湾式の足つぼマッサージ。この本に載ってるねん」

「何や、そういうことか」

「納得するのは、まだ早いですよ、会長」

「いくで。えいやっ」

「いったったった。たぁ」

「おい、南方。やり過ぎと違うか?」

「痛いぐらいで、ちょうどええ、って書いてあるから大丈夫やって」

「それっ」

「あだだ、あだだだ」

「ほんまに大丈夫か? 尋常やない、痛がりかたやで」

「普段から、オーバーリアクションやないの。平気やって」

「……これは、素の反応ですよ、会長。ここは、逃げはったほうがええ」

「……そうするわ」

「何を、こそこそ話してるんよ?」

「マッサージは、その辺で。そろそろ、生徒会室に戻らなあかんからな」

「それは、早う戻らなあきませんな、会長」

「最近、目が霞むって言うてたやん、春樹。治したるから、校内履きと靴下脱いで」

「気持ちだけ、ありがたく受け取っておくわ」

「遠慮せんでも、ええのに」

「夏海ちゃん、野田先生が呼んでるわよ」

「あ、秋ちゃん、おおきに。イノシシが、あたしに何の用やろう?」

「東野くん」

「あぁ、冬彦」

「はい、これ。校内履きと、靴下。階段に、脱ぎっぱなしになってたよ」

「会計さん、おおきに」

「あとで、西園寺さんに感謝しておきなよ、東野くん」

「そうやな、言うとくわ。貸しが一つ、できてもうたなぁ」


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