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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
55/164

第55話「短い平和」

「買い物が遅くなったわ。早いところ、バーの準備しなくちゃ。あら、カウンターに忘れ物だわ。玄介さん、こっちに来てちょうだい」

「ブイエスオーピーを、カフェロワイヤルに使ったのは、間違いなく俺です。ごめんなさい」

「カフェでは、アルコール類は使わないでって言ったのに。でも、ひとまず、そのことは置いといて」

「あと、紺色の地に、金色で薔薇の線描画が描かれたソーサーを割りました」

「そのことでも無くて」

「もう、懺悔することはありません。せやから、許したって」

「一旦、その話は保留とします。違うのよ。カウンターに、これが置いてあったのよ」

「何だ、このタバコか」

「心当たりでも?」

「多分、火炎瓶のやと思うんや」

「火炎瓶って。空き瓶に、油を染み込ませた布を入れてたものを用意して、布の端に火を点けて、遠くに投げ付けるっていう、あれのこと?」

「そうや。詳しいな」

「一時、問題になったのよ。小さい頃の話だけど。それで、その火炎瓶が、そのタバコと、どう関係するのよ?」

「常連の爺さんのあだ名なんや。大学の入学式で、演説中の学長に火炎瓶を投げつけて、退学させられたことを、しきりに武勇伝として言い触らしてるもんやから」

「呆れたお爺さんね」

「寝不足自慢をする、子供みたいなもんやな」

「ただいま」

「おかえり、冬彦」

「おかえりなさい。今日は、遅かったのね」

「彼女とデートでもしてたんか?」

「違います、玄介さん。音楽室で、伴奏の練習をしてたんだ」

「そう。何の曲なの?」

「そういうのは、卒業生が弾くものやないんか?」

「校歌と、中学で弾いた、定番のあの合唱曲。本当は、卒業生に任せたいところなんだけど、ピアノが弾けて、なおかつ、受験が終わってるって人が居ないらしくて」

「そうなの」

「それやったら、二年連続で弾くことになるんか?」

「そうなるだろうね。まぁ、弾き慣れてるから、構わないんだけど。ところで、今日の夕飯は何? 何か手伝うことはある?」

「今日は、玄介さんが一人で作るみたいよ。上で、着替えて待ってなさい」

「はい」

「待って。今日の夕食作りは、俺の番やない」

「反省してるなら、形で表してもらわなくてはね」

「そんな、殺生な」

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